第4話 初戦闘
二人は再び道を歩き始め、周りを見回しながら、コウジとヨーコを探し続けた。
その後ろを遅れてきたおじさん二人がついてくる。
「ヒコ君。君は気がついたらこの森にいたって言ってたけど」
「はい、オレ、あ、僕たちは学校の帰りだったんです。そこで信号の向こうにヨーコが見えて、コウジと二人でヨーコのほうに走っていく途中で何かに後ろから押された感じがして。たぶんその時コウジも一緒に倒れたはずなんです」
「えっと、ヨーコさんは?」
「すみません、よくわからないんです。コウジも一緒に倒れたような気がするだけで」
「あ、ごめんごめん。辛いことを思い出させちゃったね。少しでもなにかわかればと思ったんだけど。ん? 魔物の気配だよ。もしかするとそこに友達がいるかもしれない」
「ほんと?!」
「ああ、行ってみよう!」
ヒコたちはミーノルの後についていった。
少し歩くと開けた場所があり、そこにはたくさんの狼が 一人の少年を取り囲んでいた。
「コウジー!!」
ヒコの声に反応して、狼たちの視線が一斉にこちらを向き、叫びながら狼たちがヒコ向かって駆け出してくる。
それを見たミーノルが
「ヒコ君、ちょっと無茶しすぎだねえ。とりあえず、これを腕につけてくれる?」
と言うとヒコの右腕にガントレットを装着する。
「え? なにこれ?」
ミーノルさんはヒコと一緒に走りながら軽くウインクして見せた。
ミーノルは箱から取り出した小さな玉を地面に向かって投げた。
ボンッ!
ボフン!
すると辺り一面煙に包まれてしまった。
キャン!
キャイン!
ギャン!
ギャフ!
「さあヒコ君。少し時間は稼いだから。今のうちにガントレットに左手を当てて君の知っているカッコいい騎士を思い浮かべてごらん」
「う、うん!」
「大丈夫! 君ならできるよ!」
そういわれ右手をガントレットに当て、かっこいい騎士を想像する。
騎士?
騎士、騎士!
今やってるゲームで強い騎士は?!
「えーっと、疾風の騎士!」
大好きなゲームに登場する一番のお気に入りキャラを思い浮かべた瞬間、ボクの右手が光り輝き、ガントレットから青い光が放たれ全身を包みこみ、鎧と剣や盾を形作った。
「うわああ! なんかでた! あ、でもこれ?」
「うわあ! いいねえ! 疾風の騎士だって?! すごい!! これで戦えるね! 僕も戦うから頑張ろう!」
そういうとミーノルさんは持っていた弓を空に向けて放った。
ヒュン!
バシュッ!!
「ガウッ!」
「え? わあっ!」
「ヒコ君! やっぱり急には難しいよねえ」
「そ、そんなことないよ! こんなの楽勝だし!」
そう言いながらもヒコの手は震えていた。
「まあまあ、まずは深呼吸をして落ち着こう。それから相手をよく見て」
「うん」
ヒコは深く息を吸い込み、吐きだすと同時に目を閉じ、そしてゆっくり目を開く。
その目にはもう恐怖の色はなかった。
ヒコは剣を構え、魔物たちに突進していく。
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