第2話 転移した?
終業式が終わり、いよいよ明日から春休みだ。
春休みが終わったら次は六年生になるんだな。
担任の先生のつまらない話を聞きながらそんなことを考えていた。
先生の話も終わり、あとは帰るだけだ。
いつものようにコウジに声をかけ一緒に帰る。
学校を出たところからどうもコウジの様子がおかしいことが気になった。
「なあコウジ。どうした?」
「ん? いや、なんでもないよ」
「何年付き合ってると思ってんだ? オレに嘘が通用すると思ってんのか?」
「ふっ、そうだよな。生まれてすぐからの付き合いらしいからな」
「ああ。父ちゃんも母ちゃんも、コウジの父ちゃんも母ちゃんも、みんな家族みたいなもんだ」
「家族かあ。そうだなあ」
「なんだよ! 気に入らないのか?」
「そうじゃないよ。嬉しくてさ」
「嬉しい? あったりまえのことじゃないか。なにを今さら嬉しがってんだ?」
いつもと同じ道を帰りながら、いつもとは少し違った話をしている。
いつもは<聖魔伝3>の話や給食の話、休みに一緒にどこに遊びに行くかなんて話してるのに。
家までの最後の信号に引っ掛かり立ち止まって青信号を待つ。
「あれ? なんでヨーコがあっち側で信号待ってんだ?」
信号が青に変わる。
「ん? こっちに向かってなんか手を振ってるけど?」
「どうしたんだろう? ヨーコ、なんかおかしくないか?」
「ああ、いってみよう」
オレたちはヨーコに向かって走り出す。
ちょうど横断歩道の真ん中まで来た時、オレは何かに突き飛ばされ転んだ。
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
「いってえ! なんなんだよコウジ! 急に突き飛ばすとかひどいじゃないか! ってなんだここ?」
ボクはたしかコウジと学校の帰りにケンカになって、とつぜんコウジにつき飛ばされたんだ。
まわりを見るといつもの学校帰りの道とはまったく違う景色が広がっていた。
「なんなんだこりゃ?」
まわりは木が生い茂り、ここが森の中だとわかる。
「どうなってんだこれ? コウジ! どこだ?! コウジ!!」
大声でさけぶが風になびく木々の音がザザっとするだけでどこからも返事はない。
急に不安におそわれる。
不安になるとまわりが暗く、あやしく見えてくる気がする。
「どうしよう……」
グルルルルルゥゥゥゥ!!
近くで犬の鳴き声のような音が聞こえてきた。
その鳴き声はどんどん近づいて、数も多くなってくる。
鳴き声の主はゲームで見る狼のような獣だった。
こんなの絶対日本にはいない。
グルルルルルゥゥゥゥ!!
グルルルゥゥ!!
そんなのが全部で五匹もいる。
その時、遠くの方から誰かの声が聞こえた。
「おーーーい! 大丈夫かーーーい?! 少しだけ待っておくれーー!」
「何をのんきなことを言ってんだろう? 待てって言われてもたぶんこいつらは待ってくれないと思うんだけど」
狼の獣の前で今にも食いつかれそうな場面でなぜか全く現実味がなくそんなことを考えていた。
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