第4話 パーティー結成

「見てよこれ! すごいじゃない!」


 怪我を治すついでにミカミをギルドの冒険者登録に連れていった委員長……もといアヤノは、学校の通知表にそっくりな見た目の、ミカミの冒険者適性検査の結果表を俺に突きつける。


「回避能力も高いし、何より『技』のレベルがすごいわよ! この値じゃ、出す攻撃百発百中命中するんじゃない? 適性どおり、弓を使うアーチャーにピッタリね!」

「そ、そうかな……」

 ミカミはそう言って照れている。アヤノはにやにや笑ってミカミのステータス表を見ている。

「ふふ、こういう特化型タイプって夢があるわ~」

「ふん、いいよな特化型。どうせ俺は全部平凡なオール3だからな」

「あ、別にそれが悪いって意味で言ったわけじゃないんだけど……」


(……アヤノはそう言うけどよ、俺だってわかってるぜ。元の世界で俺のやってたゲームだって、能力はどこか強みを作って特化型にするのがいいんだ。オールAタイプならまだしも、俺みたいな半端な能力じゃ、この世界でもあんまり活躍できねーのかもな……)


「でも僕、冒険者になれるの? 奴隷の身分なのに……」

 おずおずと尋ねるミカミに、アヤノは満面の笑みで言ってのける。

「それなんだけど、あなた、どうも本当は奴隷じゃないみたいよ? 調べたけど国の戸籍データにはそんなこと書かれてないもの。あいつが嘘言ってたんじゃない?」

「ええっ!? でも僕、物心ついた時にはマトバの奴隷なんだと思ってたけどな……」

 俺はそれを聞いてふと考える。

(もしかして、元の世界の関係性が、こっちの世界まで影響してたりしてんのか……?)

「よくわかんねぇけど……ずっと奴隷だと吹き込まれて、そうだと思い込んじまったんじゃねぇの? ま、良かったじゃん。これであいつの言う事聞かなくてもいいってことなんだろ?」

「うん……」


「とはいっても、あいつ……マトバはこの辺りを牛耳ぎゅうじってるゴロツキ集団のリーダーだし、これ以上あいつの縄張りのこの近辺にはいない方がいいでしょうね。それもこれも……こうなったのはあんたのせいなんだから、責任取ってよね」

「せ、責任!?」

 俺は驚いたようにアヤノを見る。

「ミカミだけじゃなく、あの一件であたしも、この辺りを出歩けなくなったんだから。おかげでギルドの受付の仕事も辞めざるをえなくなるわ。マトバの一味があたしを狙ってるのに、か弱い乙女一人でこの辺りを出歩けるわけないでしょ?」

「か、か弱い? あんな、くっそデカい火の玉出してたヤツが?」

「そ、それはそれよ。あたしだって魔力の特化型で、体力とかスピードなんかは無いに等しいんだから!」

「た、確かに全部俺の思い付きで引き起こしたことだけど……で、でも責任ってどう取れば……」

「それを今から説明するわ。てなわけで、これ見て。とりあえずあたしたち三人で冒険者のパーティー登録しといたわ。あと、魔王討伐の王家のクエストにも志願しといたから」

 アヤノはそう言って今出来上がったばかりの二つの書類を見せる。俺は突然の展開に素っ頓狂とんきょうな声をあげる。

「はぁー!?」

「そうやって旅に出れば、この辺りであのマトバ一味に出くわすこともなくなるし。それに後々実力をつけたり活躍して名を上げれば、相手も簡単に手出しはできなくなるって寸法よ」

「でもいきなり魔王討伐って……正直無理じゃねーの?」

「志願したっていっても、いきなり魔王城に乗り込むわけじゃないから大丈夫よ。ただ、魔王討伐の王家のクエストは、行きますって表明すれば、前もって国王から資金をもらえるから志願するの。武器を揃えるのも当面の生活もお金がいるからね。奴隷だったミカミはもちろん……あんたも武器もなく手ぶらなとこ見るに、どうせ今、お金持ってないでしょ?」

「…………」

 図星の俺は思わず押し黙ってしまう。

「あたしも、ギルドの受付のお給金じゃそんなに貯金はないし。まあ三食住居付きなのは嬉しかったんだけど」

「でも、魔王ってのはどうせ強いんだろ? 討伐なんかできるのかよ、俺たちで……」

「あたしの魔力もあるし、ミカミくんの能力も見どころあるし、アンタもそこそこ何でもやれそうなステータスだから、旅の途中で能力を上げていけば大丈夫じゃない? 何事もやってみなきゃ」

「そっか、そうだよな……」

(せっかく新しい世界に来たんだしな。教室で聞いた謎の声も言ってた……どれだけ変われるか見せてみろって。実際俺は、前の世界とは違ってミカミのことは助けることができたわけだし。ちくしょう、来ちまったからにはもっと変われるところ、見せてやろうじゃねぇか……!)

「ぼ、僕も二人に助けてもらった恩を返せるように頑張るから……! やろうよ!」

 ミカミがそんな前向きなことを言うのを聞いた俺は目を丸くした後、にやりと笑いかける。

「ああ、頼りにしてるぜ。よーし、心機一転、やってやろうじゃんか!」


 そうして俺たちはパーティーを組んで早々に、魔王討伐に名乗りをあげることになった。

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