第2話 冒険者登録

「ねえ」


 俺は何が起こったのかわからないまま、気づいた時には木でできた床の上に座っていた。その木の質感は、教室の床とは違う感じがした。


(あれ、俺……どうなっちゃったんだ?)


「そんなとこに座り込んでないで、さっさとして」


 その聞き覚えのある声に、俺は顔を上げる。そして思わず目を見開く。

「い……委員長!?」


 目の前には、クラスメイトで席が隣の……5年1組の学級委員長、倉本彩乃くらもとあやのがいた。

 それだけならそこまで驚かないけど、妙に変わった服装をしている。なんだろう、うまく言えないけど、RPGの、ゲームの世界の住人のような……。それでも眼鏡だけはいつもと同じのをつけていたけど。


「? イインチョって何よ。早くその手に持ってるものを見せなさい」


 そう言われた俺は自分の手に持っているものを見る。それは先程教室に取りに戻った通知表の紙で……なんてこと言いやがるんだと思った俺は、それを慌てて背中に隠す。

「み、見せるわけねーだろ! なんでお前なんかに……」

「何言ってんの。あーもう後ろのお客さん、代わりに取ってくれる?」


 委員長がそう言うと同時に、後ろにいた人が俺の通知表をひったくる。そしてそれは委員長の手に渡ってしまう。

「な、何しやがる……」

 俺は後ろにいる人物に文句を言おうとするも、その姿を見て固まってしまう。その人は長い金髪で、緑色の肌をしていて……そして、ひたいからは小さな角が生えていた。

「こ、こいつ、人間じゃねぇ……」

「何言ってんだいあんた。人間族じゃないのがそんなにおかしいかい? それよりさっさとしておくれよ。後ろ、並んでんだから」

 俺より背の少し高いその女は、後ろを親指で指す。後ろには、ずらりと列ができていて……そして、人間じゃない見た目のヤツもたくさんいた。


「……ここって……」

 俺の呟きに対し、しゃくさわることに俺の通知表を隅から隅まで眺めまわしている委員長が反応する。

「あなた、冒険者登録しに来たんでしょ。何しに来たのかも忘れたの? 全く……ぼんやりするにも程があるわよ」

「ぼ、ぼうけん……しゃ?」

「さっき、冒険者適性試験受けたんでしょ? これがその結果じゃない」

 委員長は先程ひったくられた俺の通知表を開き、指さして見せる。通知表と思っていたそれは……中身は別のことが書かれていた。


(体力、スピード、それに、魔力……だって?)


 とはいえ内容はパッと見「3」がずらりと並んでいて……そこは本来の通知表と変わりなかった。


「はい、職業ジョブは勇者で、等級は平均的なCランクね。じゃあCランク冒険者としてこれから頑張って下さい」

 俺の能力はそう査定されたようで、Cと書かれたバッジのようなものを渡される。

「ぼ、冒険者って……そんなもん別になりたくないんだけど」

「今更何言ってんの。それに歳が十を超えたらの義務として、何かしらジョブにつかなきゃならないんだからね?」

「お、大人……? 十歳……で?」

「はい、あなたの冒険者登録は終わり。さっさと次の人と変わって」


 そうして俺は、訳もわからないままその場から追い出され、冒険者とやらになる羽目になったのであった。


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