第26話 一宮の父親との対決

醜いと思う。

俺は考えながら目の前をジッと見る。

インターフォンの一宮の親父は外で迎えた。

それから見てみると。

一宮の親父の達(とおる)は俺にお土産を渡してくる。


「君はさっき道を聞いた人だな。すまない。.....驚かせてしまったね。そんなに警戒しないでくれたまえ」


「.....正直、貴方に会うのは嫌なんですが。今もこうして仕方がなく出て来てます。.....追い返すのも如何なものかと思って会いましたが。直球で言ってしまって申し訳ないんですが」


「まあそう言わないでくれたまえ」


俺を見ながら笑みを浮かべる達。

その姿を見ながら俺は眉を顰める。

そして対応していると雷が.....鳴り始めた。

雨は降らないが最悪の状態だ。


「貴方の息子さんを説得して貴方自身で捕まえてくれませんか。それだったら丸く治りますよきっと。全ての元凶です」


「.....全ての元凶とは知っているが彼も彼なりの事情がある様でね」


「事情.....?」


「私は彼の行方を知らない。信じてほしいが」


「.....信じられませんよ。何を言っているんですか」


実の親父が息子の居場所を把握してない?

そんな訳あるか、と思いながら達を見る。

すると達は、まあ行方は探しているが.....妹が捕まったぐらいから行方が分からなくてね。お金は振り込んでいるのだが、と答える。

アホか?何で振り込むんだ。


「.....ちょっと待って下さい。一体何で生活費を振り込んでいるんですか?それだったら場所ぐらい知っているでしょう」


「私は親だからな。知らないが.....振り込んでやっている」


「.....」


話が通じない。

思いながら達に向く。

それから、すいません。俺としてはそれは異常だと思います、と切り出す。

アイツが何をしているか知らないんですか、とも。

すると、確かに人様に迷惑を掛けるのは良く無いと思う、と言い出す。


「だがアイツも反省している様だからな。賭けてみたいと思うのだ」


「いや今更.....信じられないんですが.....。賭けるって.....」


「大丈夫だ。彼は戻ってくるさ」


「.....」


彼は戻る.....か。

戻って来るもクソも無いと思う。

この.....親は。

人の子も親の子か。

思いながら俺は達を見る。


「私はまだ信じたい部分があってな。だからこそ私は眉を顰めるよりも笑顔で迎えたい」


「.....貴方の息子は薬物を使っている可能性もある。それを貴方は黙認するつもりですか。俺は絶対に許せない」


「私の息子がそんな物を使った根拠があるのかね」


「.....根拠は無いですが.....でも俺の知り合いが。貴方の妹が。みんなが被害を受けたんじゃ無いですか」


「根拠が無いなら意味は無いな」


それから達は俺を見てから、君は全く何も信じてない気がするのだが、と言いながら俺を見てくる。

俺は、それはどういう意味ですか、と聞いてみる。

すると達は、君は何も信じてないんじゃ無いのか、と聞いている。人を全てをな、と言ってきた。


「.....貴方は全てを誤解している。それは違う。俺は何も信じてないんじゃない。貴方が全てを歪ませている」


「.....」


達は俺を見ながらそのまま真顔になる。

それからサングラスを取りながら、やれやれだ、と言ってくる。

君とは何か関係性が上手くいきそうな気がしたんだがな、と話した。

俺はイラッとしながらも話を聞く。

すると達は、君は私の息子ばかりを恨んでいる様だがこの社会も悪いんだぞ。だからこそ私や勇人ばかりを恨むのは間違いだ、と言ってくる。


「俺としては悠人を恨まずにはいられません。貴方が代わってくれる事を願っています。.....一宮はもう地に堕ちた。手がつけられないですから」


「私としては地に堕ちたとは思ってない。.....その様な言い方は止めたまえ」


「それは貴方の誤算だ。.....ところで貴方は何を言いにきたんだ結局。何の用事だ」


「.....おっと。そうだったな」


何かを取り出す達。

それから、これを君渡しておこう、と渡されたのは名刺だった。

俺は真顔のままその名刺を見る。

そこには達の名前と会社の場所があった。

何のつもりだ。


「気が変わったら私の所に来てもらいたい。君を雇うつもりだ。.....君ほど有能な人材は無い」


「死んでもゴメンだな。アンタなんかに関わるのは」


「そう言うな。来てくれたら最大の祝福をしようではないか」


「.....」


俺はその名刺を破り捨てたい気分だったが。

それをしない様にしてから達を見る。

達は、君は思った以上に有能だ。.....だからこそ誇りに思いたまえ、と外車に向く。

それから去って行く。

そして達は俺に向いてくる。


「息子を探すのを手伝えるからな。今掴んでいる情報を聞かせてやろう」


「.....断る。.....すまないがアンタに関わる気は二度と無い」


「そうか。でも名刺は渡しておこう。それでは失礼するよ」


そして外車は去って行く。

俺はそれを見ながらガァンと壁を殴る。

血が噴き出た。

だがそれよりも、忌々しい、と思いながら。

何様かアイツ、と思ってしまう。


「.....お兄ちゃん。大丈夫」


「.....!.....ああ。まあ死んで無いからな。.....大丈夫だ」


「こんなのおかしいよね。親のする事かな。あんなの」


「親のする事というよりかは.....」


寧ろ愛情を入れてない。

金だけを入れれば何でも良いと思っている。

そういう事だからアイツは歪んだのか?、と思う。


そう考えながら俺は空を見る。

空は曇りになりつつあった。

土砂降りになりそうだ。


「.....さっきね。電話があった」


「誰からの電話だ」


「常盤さん」


「.....常盤.....ああ。佳奈さんか」


「うん。今日は有難う御座いました、だって」


「そうか.....」


俺は手に持っていたお土産とやらをゴミ箱に入れながら。

そのままリビングに戻る。

先程の.....一宮の会話を思い出す。

アイツは何処に居るのか、と思いながら。


「.....一宮は何処に居るんだろうね」


「さっぱりだな。.....正直本当に何処に居るかも分からない」


「一宮のお父さんの話は本当かな」


「.....さあな.....。.....取り敢えず何か飲もうか」


「そうだね.....」


そして俺達は心を落ち着かせる様に飲み物を飲む。

それから窓から外を見る。

天候は曇りだな、と思える感じだった。

まもなく大雨でも降りそうな。

そんな感じである。


「お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「この場から何処か行ったりしないよね。お兄ちゃんは」


「.....ああ。約束する。俺は何処にも行かない。くだらない事はうんざりだからな」


「うん。約束。私だけじゃ生きていけない気がするから」


クソッタレな世界だが。

それでもいつかは花が咲く。

そう信じて今は動こう。

そう思いながら俺は.....八鹿を見る。

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