第24話 常盤佳奈と長谷一家
何というかこの世界はクソッタレな部分もある。
反対にそれなりの部分もあったりする。
俺はパンケーキを食ってから親父と一緒に楽しげな感じの文化祭を巡る。
八鹿が横で、こっちはこうだね、と言いながら案内している。
手作りの案内図と共に。
そして校庭に出るとそれなりにいっぱいの出店があり。
それから.....、と思って見ていると。
常盤の母親が周りを見渡しながら居た。
俺達はビックリしながらその姿を見てみる。
「あ.....」
そんな常盤の母親はこっちに気が付いた様に反応する。
それから俺達に向いてきた。
そして頭を下げてくる。
スーツ姿で眉を顰めていた。
「どうしたんですか」
「娘が.....その。最後に通っていた場所を目に焼き付けておこうかと思いまして。ご迷惑ながらも今日なら良いかと思いまして.....許可を得てこの場に居ます」
「.....」
すると親父が常盤の母親に反応しながら、久々だな、と声を発する。
常盤の母親は、そうですね、とそのまま返答する。
そして常盤の母親は、元気ですか、と親父に繰り返す様に聞く。
親父は眉を顰めた。
「.....ああ。色々あった様だがな」
「ご迷惑をお掛けしました.....本当に」
「.....」
「.....その。娘さんと息子さん.....立派になられましたね」
「.....そうだな」
そう返事をしながら外を見つめる親父。
俺はその姿を見ながら常盤の母親を見る。
そして俺は、佳奈さん、とそのまま声を掛ける。
それから真っ直ぐに見据えた。
佳奈さんは顔を上げてから俺達を見てくる。
はい、と答えながら。
「佳奈さんはこの先.....どうしたいと思いますか」
「この先私は.....時雨に反省してもらって。.....そして私達は共に生きていきたいと思います。その罪を背負ってから」
「.....ですか」
「はい」
そして佳奈さんは俺達を見ながら、楽しんでますか、と聞いてくる。
こんな私が聞く様な事じゃ無いですけど、とも。
俺は、はい、と頷きながら見る。
すると佳奈さんは、そうですか、と少しだけ笑みを浮かべた。
「.....あの子も喜んでいると思います。そう言ってくれて」
「その。俺としては常盤と話をもう一度したいですが.....恐らくはまだ無理だと思うので。だからこそその。貴方に全てを託したいです」
「託したい、ですか.....?」
「はい。俺達の代わりにアイツに寄り添ってやって下さい」
「仁さん.....」
俺達は頭を下げる。
すると、佳奈、と話し出す親父。
それから、お前の事だ。きっと大丈夫だとは思う。お前の娘の事を私の子供はそう言っているから。だがもしも何かあったら言うんだ、と切り出す。
お前の娘は被害者だと思うからな、とも。
「.....仁。それから八鹿。それで良いか」
「親父がそれで良いならそれで良いと思える」
「そうだね。お父さんがそれで良いなら良いと思います」
「.....」
顔を覆う佳奈さん。
そして涙を浮かべながらそのまま、はい、と言葉が濁る。
そうしてからそのまま深々と頭を下げた。
俺はその姿を見ながら目線をずらす。
それから空を見上げた。
「私は娘は幸せ者です。.....こう言われて。こんな身分ですが、有難う、と言えます」
「お前も娘も大変だったな」
「.....はい.....」
親父が言う。
すると八鹿が顔を上げた。
それから、私も色々と酷い事をされましたけど.....でも今なら常盤さんを半分ぐらいは許せます、とそのまま柔和な表情をしながら、お兄ちゃんがこうやって何度も危険な目に遭ったのは許せないですけど、と真剣な顔をする。
俺はその姿を見ながら、だな、と答えた。
「はい。私はこれからそういうのも抱えて生きていきます」
「.....」
佳奈さんは八鹿の顔にそう答える。
それから、それでは失礼します、と答えながら頭を下げる佳奈さん。
そして俺を親父を八鹿をそれぞれ見ながら帰って行った。
俺はその背後を見ながら親父を見る。
八鹿も親父もその姿をジッと見ていた。
「.....親父。有難うな」
「私は何もしてない。ただ単にお前達の背負っている言葉では無いものを表現化しただけだ。それを手助けしただけだ」
「.....」
「全てはお前達の実力だ。.....それを具現化する手伝いをしただけだ」
「お父さん.....」
「.....辛気臭くなったな。.....それではまた巡ろうか」
親父を見ながら俺達は顔を見合わせる。
それから俺達はそのまま頷き合ってから歩き出す。
そして俺達はまた巡り始めた。
すると智和がやって来る。
クラスメイト達も、であるが。
「.....大丈夫か?.....お前、常盤の母親と話してなかったか」
「そうだな。.....2回目だけどな。話せて良かった」
「そうなんだな.....俺はイラッとしたけどな」
「イラッとするのは分かる。だけど話はそれなりに交渉ってか良かったから。落ち着け」
「そうなのか」
智和と椿と佐藤は、ふーむ、と悩む。
俺はその姿を見ながら、まあその。全般的に言うなら大丈夫だ、と答えた。
そして笑みを浮かべる。
そんな姿に俺達は、!、という感じで俺を見てくる。
「お前がそう言うなら良かった」
「だなぁ」
「.....」
智和達は頷きながら顔を見合わせる。
良いクラスメイトじゃないか、と言いながら親父は笑みを浮かべる。
恥ずかしいけどな。
思いながら親父を見ながら八鹿を見る。
八鹿も笑みを浮かべていた。
「.....取り敢えずはまだ文化祭は続く。.....だから楽しんできたらどうだ」
「お前らは何処に行くんだ」
「俺達か?俺達は色々と見て回るぞ露店とかな」
「そうか.....」
「だがお前らは回って来い。.....楽しんでこい」
「サンキューな。お前ら.....っていうかお前らの親は?」
俺らの親も来るぞ〜、と笑顔になる全員。
その姿を見ながら、そうか、と返事をした。
そしてクラスメイトは、んじゃまあ行って来るから、と返事をする。
それから手を挙げてから笑顔で去って行く。
「.....やれやれだな」
「良いクラスメイトさんだね」
「そうだな。まあな」
それから俺は八鹿を見る。
八鹿は俺を見ながら柔和になりながら前に出る。
そして手を握ってくる。
俺はその姿を見ながら苦笑した。
そうしてから、んじゃまあ巡るか、と親父を見る。
親父は頷きながら、そうだな、と答えてくれた。
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