第17話 猫と八鹿と仁と
常盤だがこうなってしまった以上はもうどうしようも無いと思える。
警察に捕まった以上、であるが。
そして大勢の奴らに見られてしまった以上.....もう取り返しはつかないと思う。
俺は考えながら翌日だが自宅に居た。
文化祭の計画も立てる感じで。
文化祭のメイド喫茶の監督の件はあと少しで全て終わる。
この常盤が腹を刺した事件で文化祭が中止にならなかったのが幸いだとは思える.....かもしれない。
また八鹿と俺は紅茶を飲みながら過ごしていた。
八鹿は紅茶を淹れるのが得意だな。
「ねえ。お兄ちゃん。大丈夫?」
「死んでないから大丈夫だ」
「.....うん」
「にしても.....」
何というか。
この全てのシナリオは恐らくだが一宮が全ての元凶、という事だな。
アイツは毒林檎でも食ったのかもな。
本当に一体何故.....こんなに堕ちてしまったんだアイツは。
意味が分からん。
何をどうしたらこんな事に。
思いながら紅茶の波面を見て考えていると八鹿が唇を噛んだ。
「常盤さんどうなるのかな」
「.....まあ使い捨ての駒みたいな感じだな正直。何の役にも立たなかった、という事で簡単に捨てられたんだと思う。最低だな一宮は」
「.....信じられないね」
「それは俺も思うぞ。鬼畜の所業だわ」
思いながら俺は顎に手を添える。
そして考えていると八鹿がゆっくり顔を上げて、ねえ。お兄ちゃん、と切り出してから俺を見てくる。
俺は顔を上げる。
それから八鹿を見てから、どうした?、と聞く。
「買い物に行きたいんだけど。.....一緒に行かない?」
「買い物?.....またいきなりだな?」
「.....うん。ここ最近は忙しかったからね」
「ああ。成程な」
「うん」
俺達は苦笑し合う。
それから立ち上がってから、んじゃまあ行きますか、と言いながら歩き出す。
そして玄関から表に出てから。
鍵を掛けて.....そして俺の元に寄って来る八鹿。
「お待たせ」
「.....ああ」
「.....近所のスーパーで安売りやってるから。そこに行こう」
「分かった。んじゃ動き出すか」
それから俺達は動き出す。
そして歩いていると.....八鹿が猫を見つけた。
猫を見ながら、可愛い、と言う。
俺はその言葉に、そうだな、と答えながら笑みを浮かべる。
「こういう動物を飼いたいけどなぁ。でもお金が掛かるから」
「そうだな。確かにお金が掛かるもんな。捨て猫に関してもな」
「.....うん。.....まあ生涯でうん百万ぐらい掛かると思うしね.....」
だとなるとウチの経済状況じゃ飼えない、と言う八鹿。
俺はあからさまに残念がるその姿に、なあ八鹿。帰りにペットショップに寄ってみないか、と聞く。
するとその言葉に八鹿は、え?良いの?、と目を輝かせた。
頷きながら俺は柔和になる。
「八鹿は好きだな。動物が」
「そうだね。でも犬が1番好きかな私」
「犬好きは変わらんなぁ」
「うん。犬の中で特に1番好きなのはミニピンだね」
そのミニピンとはミニチュアピンシャーの略称である。
ミニチュアピンシャーとは小型のドーベルマンの様な感じの犬種だ。
だけどまあ同じものではない。
犬種が違った筈だ。
思いながら八鹿を見てみる。
八鹿は柔和な顔で俺を見てくる。
そして帰りにペットショップに寄る事になった。
気持ちを切り替えれれば.....良いのだが。
思っていると八鹿が口を開く。
「正直言って常盤さんに対してはかなり怒りがあった」
「.....八鹿?」
「.....でもその。ごく微量でも状況を知って.....常盤さんに接触出来そうだから良かった感じはするよ」
「.....そうか」
「うん」
一緒に歩いていた感じの猫は何かを見つけたのか去って行く。
それから俺達はそれを見てから見合ってから笑みを浮かべてスーパーにやって来る。
そして俺達は店内で野菜を買ったり卵を買ったり肉を買ったりした。
最近は物価高の影響で少しだけ高い。
まあでも今日は特売だな確かに。
「.....あ。お兄ちゃん。ポテチ安いよ」
「.....ああ。んじゃ買うか」
「だねぇ。ポテチとかお菓子系も高いもんね」
そうなんだよな。
最近は本当に物価高だからこういうのはあまり買うの控えているのだ。
だから今日だけはプチ贅沢だな、と思う。
それから俺達はポテチを買ってから。
そのままお店を後にする。
「荷物重くないか?」
「大丈夫だよ。お兄ちゃん」
「.....そうか。なら良いけど。全部持つぞ」
3つぐらい荷物がある。
そのうち軽いのを八鹿が持っている。
だけど重いんじゃ無いかって思ってしまう。
俺は八鹿を心配げに見るが。
八鹿に、大丈夫だって。そういう配慮は彼女さんにしてあげて、と言われた。
「そ、そうだな」
「そうそう。.....あ。彼女さん作らないの?お兄ちゃん」
「そ、そういうお前は彼氏居ないのか!?」
「話を逸らさないで。お兄ちゃん。.....まあ.....その。.....私、告白はされたけど」
「何ぃ!!!!?」
俺は顎が落ちる。
何処の馬の骨だソイツは!
冗談で聞いたのに予想外の返答で俺は困惑に困惑する。
赤くなる八鹿。
それから、同級生.....だけど、と語った。
「どんな感じだ!?」
「お兄ちゃん。親父さんですか?」
「そんな事はどうでも良い!見定めないと駄目だ!俺がこんな目に遭っているからな!」
「え?.....いや。キモい.....」
「まあ多少過剰なブラコンと思われるかもしれないが!」
過小じゃ無いでしょお兄ちゃん、とジト目になる八鹿。
俺はその姿に、まあそうだが、と答えながら。
それから俺達はキャイキャイと帰る。
すると途中で近所のその。
おばちゃんに会った。
「あら。.....こんにちは」
「こんにちは」
「こんちは」
そんな感じで挨拶をしていると。
おばちゃんは俺を見ながら、大丈夫かしら?、と聞いてくる。
その言葉だけで何を想像しているか想定がついた。
俺は、はい、と答えながらおばちゃんを見る。
「常盤なら大丈夫です」
「あら。その事じゃないわ。貴方達の事よ」
「え?」
「何か最近、忙しそうだったから。色々あったんでしょう?」
「.....俺はまあ大丈夫です。忙しかったのは事実ですが.....もうご迷惑をお掛けする事もないと思います。申し訳なかったです」
「.....そう。.....なら良いんだけど.....」
休める時に休みなさいね、とおばちゃんは柔和になる。
俺はその姿に、はい、と返事をした。
それから、行こうか。八鹿、と挨拶して合図してからペットショップに向かう。
やっぱり広まっているんだな、と思う。
アイツらが起こした騒ぎがの分の代償が、であるが。
「何か近所中に広まってるね。やっぱり」
「取り敢えずは火消しはしないでも多分、大丈夫だとは思うけどな。.....それに取り敢えず俺と八鹿が変な目で見られなければ良い。だからまあ大丈夫だと思うけど」
そんな会話をしながら俺達は住宅街の中にあるペットショップに来た。
それから外からミニチュアピンシャーを眺める。
可愛い茶色で顔も細い。
でもやっぱり高い.....。
諸々込みで50万円か。
本当に高いもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます