第16話 思い出す過去
最早ここまでくると正気の沙汰では無い気がするのだが。
思いながら俺は自室に眉を顰めて篭っていた。
それからスマホに仕舞っていた常盤と一緒に撮った写真を見る。
ピースサインをしている常盤。
そして俺。
彼氏彼女だった時代に撮ったものが3枚残っていた。
その写真をスワイプしてスマホのゴミ箱にぶち込んだ。
それを見てから俺は決断する。
椅子から立ち上がりながら、であるが。
「.....周りに迷惑は掛けれないな。俺が彼氏だった以上は」
そんな言葉を呟きながら俺は窓から外の景色を見る。
ドス黒い感じの雨が降っていた。
その雨を見ながら考える。
何故.....常盤はここまで落ちなければならなかったのか、を。
それにこんな真似をして誰の為になるんだ?
自身の為?そんな訳無いよな。
何かもうヤケクソの様に見えるし.....どうなんだろうか。
「.....やれやれだな。全く」
そんな事を呟きながら俺はスマホを弄る。
それから睡眠を取ってそのまま翌日になった。
翌日はカラカラな天気になっている感じだ。
流石は夏だと思えるぐらいである。
こんな簡単に乾くとは。
☆
「先輩」
「.....お前また.....」
七瀬が当たり前の様に下に馴染む。
俺を見ながら幸せそうな笑顔を浮かべる。
その姿に俺は額に手を添える。
すると八鹿が、愛されているじゃん。お兄ちゃん、と脇腹を突いた。
俺は、揶揄うなよ、と八鹿を見る。
そんな中で七瀬が複雑な顔で話す。
「.....昨日は大変でしたね。常盤さん.....」
「恐らくだがあのアホは暫く付き纏うと思う。.....その。俺が分からせてやらないといけない感じがする」
「!.....でもそれって先輩だけで良いんですか?」
「俺じゃ無いと駄目だ。俺自身が決着をつけないと駄目だと思うしな」
「そうですか.....でも無理な時は無理って言って下さいね?私も協力します」
「.....そうだな.....まあ無理な時は無理って言うよ。それもギブアップってな。.....でも俺がやらないと駄目だ。無理してもな。俺が全ての始まりでありそして終わりでもある感じだしな」
こんなに迷惑が掛かっているしな。
この様な事は終わらせないと駄目だ。
絶対にこの先もあってはならない。
思いながら俺は考える。
すると七瀬がこっちに来ていた。
「.....先輩。なるだけ一人で背負い込まない様にして下さいね」
「ああ。.....有難うな」
「.....私は此処に居ますから」
「.....感謝しているよ。有難う」
すると八鹿が、時間無くなるよー、と苦笑いで声を掛けてきた。
俺はハッとしてから赤くなり、飯食うか、と七瀬に向く。
七瀬は、そ、そうですね、と笑顔を浮かべた。
それから俺達はご飯を食べる。
そして.....通学の為に外に出る。
☆
「それは何だ。まだ常盤は関わってきているのか?」
「.....そうだな。.....正直.....此処までなると恐怖を感じるし異常だわ」
「.....梅毒か.....何も言えないけど結構、最悪だな」
「.....アイツ自身が多分.....パパ活とかしていたんじゃないかな。多分」
そう言いながら俺は作業をしている智和を見る。
智和は俺を心配げな眼差しで見ていた。
俺はその顔に肩を竦める。
それから持っているゴミを運ぶ。
智和に、まあ大丈夫だ、と言いながらゴミ捨て場に運び出す。
「そういう事だからこれ以上は迷惑を掛けられない。お前らに」
「.....まあそうだが.....でもお前1人でどうにかなる問題か?」
「.....今回は俺が決着をつけないと駄目なんだわ」
「それはお前の事だからか?」
「そう。前の2人を撃破した時はクラスに協力してもらったけど。今回は仮にも俺の元彼女だ。それにもう迷惑は掛けられないからな」
「迷惑とかじゃない。あくまで周りに頼って良いと思うが」
智和に、まあな、と返事をした。
それから俺はゴミ捨て場にゴミを持って行く為に。
そのまま外に出てから.....門の近くのゴミ捨て場に持って行く。
すると目の前の門の近く。
そこに.....常盤が立っていた。
文化祭を観察する様に隠れながら。
「何やっているんだ」
「.....!?」
ビックリしながら顔を上げる常盤。
それから俺を睨んでくる。
顔はやつれている。
何というか慈悲を掛けたくなる顔だった。
信じられないぐらい面影が無い。
「何か」
「何、じゃないが。.....生徒でも無いし不審者だなお前」
「私はアンタを殺す」
「ああそう。何か本当に面倒臭いなお前。ガチで」
「.....私はどうしても許せないから。.....アンタが」
「許せないって何が許せないんだ?本当に意味が分からない.....。もうどっか行けよお前。今のうちならどうにかなるぞ」
そんな訳無いから、と言いながら常盤は俺を激しく睨む。
やれやれだな。
反省さえすれば見逃してやるつもりだった。
もう関わり合いの無い女だしな。
だけどこれはもう話し合いにならない。
思いながら俺は、常盤。お前のやっている事も奈々もそうだが。犯罪だからな、と語って戻る。
「アンタ.....刺されてもおかしくないから。アンタのやった事も許さないし」
「許さないってか全部お前のやった事なんですけど.....」
「私はアンタを未来永劫許さないから」
「.....未来永劫.....。いや。あの。本当に話が通じないな。お前。結論から言ってそればっか。.....頭おかしいだろ」
そして俺は去って行く。
何か救いようが無い、と思いながら。
それから文化祭の準備をしながら強迫観念を打ち消す。
面倒臭い本当にウザい強迫観念であるが。
そうしてからまた17時になったので帰る感じになった。
因みに今日は七瀬も智和も用事があるので俺一人で帰っていたのだが。
☆
「ねえ」
「いやまだ居たのかよお前」
「私はアンタを許さないから」
「.....だからさ。そればっかり?本当にしつこいなお前」
校門付近にずっと居たのか知らないが常盤が立っていた。
まあ丁度良いか。
俺は思いながら常盤を見る。
常盤は俺を睨んでいた。
ウザいとしか言い様が無いが.....これでも話をしないとな。
「決着つけるぞ。常盤」
「.....は?何に?」
「お前と俺との間の溝の決着」
「.....」
意味分からない。
そもそもアンタさえ殺せれば何でも良いし、と何を思ったか。
小さなバッグから小型ナイフを取り出した。
揺れている身体からドサッとバッグを落とす。
いやコイツ.....マジかよ!
思いながら俺は後退りする。
周りも流石に異変に気付いたのか。
先生呼べ!、とか。
110番しろ!、とか騒ぎ出して言い出す。
「.....これしか手段無いからもう」
「お前.....!何でそこまでイカれたんだよ!マジに!」
「.....」
思いながら見る。
よく目を見りゃ瞳孔が開いている。
何というか脱法ハーブとかでもやってんの?、的な感じだ。
すると常盤は話を始めた。
「今更だけど私、アンタに救って欲しかったのかもしれない」
「何.....?」
「一宮くんに愛されているのが全てだったけど。時折、アンタとの過去を思い出して涙した。途中で何もかもがおかしいって思い始めた。でもこうなった以上、戻れなかったから。こうするしかもう無いって思った。でもそうだね。どうにかしてアンタに私自身を救って欲しかったのかもしれない」
「.....何故.....」
「.....私は.....脳内がパニックになっているのかもね」
「本当に何を飲まされたんだ?.....薬物を飲まされたのは一宮が俺達の関係を崩す為だろ?戻って来い。今なら.....」
「こんな事をしたからもう戻れないよ」
多分だけど大麻とかアヘン?とかだとは思う。
覚醒剤ってヤツだろ!?
学校の教育で習ったけど、とそう思いながら俺は唇を噛んでから常盤を見る。
どうするんだこれ.....。
とち狂ったのはそれのせいか。
「.....常盤。もう止めろ無駄だ。そこまで行ったら泥沼だ。やり直しが効かなくなるぞ本当に!」
「.....」
号泣し始めた常盤。
俺に構えてナイフを突き立ててくる。
だがそれを避けてから俺はカバンを落としてよろける。
その中で俺は常盤と揉み合いになる。
コイツのナイフさえ今直ぐに叩き落とせれば勝ちだ!、と思ったのだが。
途中で常盤は何を思ったかナイフを自らの腹に刺した。
衝撃である。
「.....ぐ.....」
「!!!!?」
俺は直ぐに常盤を急いで抱える。
そしてナイフを見る。
完璧に刺さっている為に出血が止まらない。
こんちくしょうめ!胸糞が悪いな!こんなメチャクチャな展開で死ぬな!
「.....ごめん」
そんな事を呟きながらガクッとそのまま意識が無くなる常盤。
何というかコイツはヒステリーでゴミクズだがこんな事で死んでもらっては困る。
思いながら俺は必死にお腹に手を添える。
簡単に言えばやり直す事が出来ると思ったんだが。
何か今までのシナリオで一宮が悪いって思ったんだぞ。
死ぬな。
それから救急車が到着し.....常盤は病院に運ばれた。
急所は避けられていた.....のだが。
回復してからだけど主に銃刀法違反、覚醒剤取締法違反、殺人未遂罪の容疑などで取り調べが行われる事になった。
こうなった以上、もう2度と常盤とは関わり合いは持たないだろうと.....は思うが。
だけど.....ああもう。
とにかく胸糞が悪いなクソッタレが.....一宮の野郎め!
本当にクソッタレ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます