第15話 絶望で歩んで来る者

何というかその。

七瀬にキスされた挙句にクラスメイトにキスされた事実を見られた。

一体何故こうなってしまったのやら、と思ってしまう。


思いながら俺は赤くなったまま作業をしていると。

夕陽が登ってきた。

うむ、と思っていると智和が声を発する。


「うむ。17時になったなぁ.....」


「ああ.....まあそうだな。どうするよ?」


「取り敢えずはここまでにしてまた明日って事にするか」


「そうだな。まあ確かに」


俺達はそんな会話をしながら.....見合う。

んじゃまあここ迄で次は翌日で、という感じで手を叩く。

それから俺達は俺と横須賀の合図で帰る事になる。

そして帰ろうとした時に智和にこう言われた。

すまない、という感じで。


「今日、塾があるから先帰る。すまんわ」


「.....ああ。そうだっけ?お前」


しかし塾か。

俺も高校2年生後半だし塾に行った方が良いのかな、と感じられる一言だ。


思いながら慌てて去って行く智和を見送ってから俺はそのまま帰宅する。

その間、お疲れ恋愛監督とか言われた。

お前らな.....。


そう思いながら顔を引き攣らせて帰宅していると下駄箱に七瀬の姿があった。

七瀬は俺を赤くなりながら見上げてくる。

俺も赤くなる。


「.....七瀬。元気か」


「そ、そうですね。先輩.....」


「.....」


「.....」


何だこれは。

七瀬を直視出来ないんだが。

困ったもんだな、と思いながら俺は赤くなりながら七瀬を見る。

すると七瀬は、その、と切り出す。

それから俺を澄んだ瞳で見上げてくる。


「ここ最近、先輩も大変でしたね」


「.....ああ。奈々とかの事か。奈々だったらアイツはクソだわ」


「.....そうですね.....大変だったろうなって。でも何でこんなに先輩が恨まれなくちゃならないんでしょうね」


「まあ思い当たる節はあるがな」


「え?.....それは?」


「奈々を危険な目に俺が晒したんだ。大怪我をしたんだ」


危険な目、って何ですか?、と複雑な顔で聞いてくる七瀬。

俺は、そうだな。小学生の時に奈々と一宮と遊んでいたんだが奈々を滑り台から勢い良く押した時だが滑り切らずに落ちたんだよ。滑り台からな。そして頭に大怪我を負ったんだ、と答える。

それを愕然として見ているだけだったんだけどな、とも苦笑いを浮かべた。


すると七瀬は、いや。そんなの当たり前の事じゃ無いですか。咄嗟の時に何も出来ないのって!、と七瀬は言う。

まあそうだけどでも結果としてそれが引き金になったんだとは思う、と話す。

そしてそれがまあいざこざで親に洗脳されたか、だとは思うけど、とも。

それから盛大に溜息を吐いた。


「だから俺も非はあったんだろうけどな。だけどこれだけ逆恨みされるのもいかがなものかなって思うけどな」


「その時は何も思わなかったんですよね?一宮の奴。.....それなのに今になって言い出すのって卑怯ですよね」


「アイツの親も洗脳されているからな。かなり俺に噛みつく奴だった。.....だから多分.....かなり洗脳されたんだと思うけどな、とは思うが」


「.....それってマインドコントロールですかね.....?」


「.....そうだな。多分それだとは思うけど。分からん」


「先輩に非は無いですよ。それ。ただ一宮の親の頭がおかしいだけです」


まあそうだとは思うけど。

でもな。七瀬。子供の事になると親はとち狂うぞ、と説得する。

そして、それが親ってもんだとは思うしな、とも。

すると七瀬は、でも、と言うが。

俺は首を振る。


「改めて考えてみたけどそれしかないんだよな原因は。俺の母親とは別物だな.....」


「それだったら親も最低ですね。今更ですか?今、過去の事なんて.....!」


確かに今の話は先輩にも非はあります。

でもそれでも.....今持ってくるのは次元が違うでしょう、と俺に向く。

唇を噛みながら。

俺はその姿に、まあそうだな、と言いながら静かに外に見やる。

何というか17時だから外はもう暗くなりつつある。


「帰るぞ。七瀬。もう日が暮れるから」


「.....先輩」


「.....何だ?」


「一宮の事.....今はどう思いますか」


「.....今思う事は可哀想とかじゃ無いかもしれない。でもその。.....救いがなかったのか、とは思う。一宮も常盤にも、とふと思うけど」


「.....ですね」


何かそれで心まで全て荒れるのはもう説得力に欠けますね、と言いながら俺を眉を顰めて見てくる七瀬。

それから校舎を後にして帰って行く。


すると目の前の分かれ道に.....常盤が立っていた。

ちょっと待てコイツしつこいな。

何だ今度は.....。

思いながら眉をひそめていると真っ先に七瀬が切り出した。


「何でこの場所がわかったんですか常盤さん。.....本当にしつこいですね」


七瀬は噛み付く様にそう言う。

その肩を掴んでゆっくり下ろした俺。

常盤を威嚇して見る七瀬に代わり俺が前に出る。

そして聞いてみる。


何しに来たんだ?、と。

そして見ていると常盤は、ねえ。長谷くん、と言ってくる。

それから物凄い虚な目を向けてくる。

まるで生気が感じられない瞳を俺に向けてきた。

それから笑顔になる。


「別れを切り出されたんだ一宮くんに。私には学歴もそうだけど.....何一つ残ってないんだけど」


「それはおめでたいこったな。お前の身に何が起こったか知らんが自業自得だろそれは。お前は仮にも浮気もした。こっちに戻っても来なかったんだから」


「何か汚ない女は要らないって。親にも捨てられたしね。治療費が高いんだ。梅毒を移された。.....酷い様だよ」


い、いやそれは予想外だな。

それは性病だな。

本気で自業自得だな?、と思いながら見ていると。

常盤は、貴方が大々的に告発したりしたせいだ、と言い始めた。

嘘だろコイツ。


何か悔しそうな顔を浮かべている。

いや、ってか。

この末路は貴方のせいでこれだと思うんだが。

俺達が恨まれる必要があるか?

無いと思うんだが。


「今年のアンタの文化祭.....全部をメチャクチャにしたいから来た。何かそう考えが及んだからね」


「あのなぁ。逆恨みの言葉知ってるか?お前。それの次元を通り越しているぞ。馬鹿なのか?脳内大丈夫かお前」


「覚えてろ。全てアンタのせいだから」


「.....信じられないぐらいの逆恨みだな。幾ら何でもマジにしつこいぞお前.....」


序でに出された飲んだもの。

それが薬物だった、というのは情けに値する。

しかしそれとは違い梅毒になった事はやりまくった事による自業自得としか言いようが無いんだが。


そんな事による逆恨みは最早、俺にとっては関係無いに値する。

思いながら何とか俺達はその場を後にする。

常盤は俺達をずっと睨んでいたが追い掛けては来なかった。

にしても何でこんな訳分からん奴が増えているのか。

奈々もそうだが。


「.....梅毒って.....その。性病ですよね。無闇に色々とやるからですよね?」


「正直まさに予想外だな。.....これで恨まれてはたまったものではないと思う」


「.....そうですね。怖いです。まさか彼女、何時間も待っていたんですかね?」


「それも考えられなくもない.....が」


それだったらマジに頭おかしい。

思いながら俺は一宮の事を顎に手を添えて考える。

一宮がこんなにドクズになっているとは。


あれだけ甘やかしたのが悪かったのか、とは思う。

そう考えながら俺は七瀬をそのまま送り届ける。

そして七瀬を見る。


「.....でも今は忘れよう。.....アイツの事は取り敢えずは、な」


「.....そうですね.....」


「何というか考えても仕方がないものは考える事はしない方が良い。何というかアイツは奈々みたいな力は無いと思う。お花畑で簡単に言うと完全に頭がおかしいとは思うけど。人脈は無いから」


「それにしても一宮もそうですけど身体が汚いから捨てるって。もう悍ましさっていうか相当な次元を通り越してますよね」


「外道はまあ何処まで行っても外道って事だろ。.....それだけ一宮はゴミって事だな、とは思う。.....何というか一宮が来たらもう対処が難しい気がするがな。まあもう会わない、来ないとは思うけど.....」


俺達はそう話しながらそのまま挨拶して別れる。

まさかこんなに簡単に常盤が一宮に捨てられるとはな。

まあでも良いお灸になったのではなかろうか。

思いながら帰ったが。

逆恨みで家に放火とかされなければ良いがな.....。

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