第10話 愛しています
この学校では7月に文化祭が行われると同時に落差で小テストがありそれから夏休みになるのだが。
まあその、楽しみましょうかね、とは思うが小テストがそんな落差ではマジに要らないだろ、と思う。
小テストは一体何故あるのか分からん。
本当に要らないよ?
「それにしてもお前さんや。この1週間は本当に大変だったよなぁ」
「.....まあ何かと悪い噂もあったしな。かなり横暴な手段だったけど誤解が仮にも解けて良かったよ。全員とはいかないかもしれないけど」
「横暴な手段でもまあ良かったんじゃないの。これぐらい暴走してないともうマジに全てが無理だったんじゃないかと思うぐらいだったしな。全校生徒を敵に回してたしな」
「まあそれは確かにな.....」
帰宅の準備をしながら俺と智和はそう話す。
因みにだが文化祭のメイド喫茶の総監督に決まってから周りが、監督ぅ!お疲れぇ!、とか言ってくるんだが。
この野郎ども他人事だと思いやがって。
しかしまあ決まったからにはやるしかないな。
多数決で決まってしまったからには。
思いながら俺は欠伸を噛み殺しながら智和を見る。
智和は、あ、と声を出す。
「そういやお前、今から待ち合わせだったな?」
「ああ。そうだな。七瀬と一緒に白鳥ボートに乗ってくるつもり」
「しかしまあそれって本格的なデートだよな?完全に」
「まあ確かにな。本人もデートとは言っているが何処までがマジなのか」
「うーん。まあどうあれお前が本当に羨ましいけどな。仁さんや」
「そうか?うーん」
俺はそう回答しながらそのまま教室を智和と話しながら後にする。
それから昇降口で南門に俺、北門に智和。
何というかそんな感じで別れてから.....南門に向かうとそこに七瀬が立っていた。
此方に手を柔和に振っている感じだ。
そして何よりも笑顔である。
「.....よお。七瀬さん」
「先輩。お元気ですか?」
「.....ああ。まあな」
「そうですか。.....じゃあ行きましょうか.....その」
それから俺達は校門から出る。
そしてそのまま歩き出した。
そうして5分ぐらいが経った時。
七瀬が俺に向いてきた。
そうしてから、先輩、と言ってから俺を見る。
「大変でしたね。.....今回は」
「大変だったというかまあ何というか。.....アホどもにそれなりの制裁が出来たからまあ良かったんじゃ無いかなって思ったけど」
「でも正直.....学校の放送室を乗っ取るとは思いませんでしたよアハハ」
「まあこれが俺達だからな。まあ.....放送室を乗っ取らない限りは本当に無理と思ったしな」
「私は生徒会書記なので評価は何も言えないですが.....先輩達がやった事は本当に凄いと思います」
アハハ、とそのままクスクスと苦笑する七瀬。
そうだな。後悔が無い様にしたかったしな、と俺もそのまま苦笑する。
学校中で悪者扱いになっても良いので真実だけは話したかったからな。
思いながら俺は七瀬を見る。
「.....それはそうと。.....今日はいっぱい楽しみましょうね」
「そうだな」
「きっと素敵な景色が観れると思いますよ」
「そうだな。まあ実際.....夕方にボートに乗るのは初めてだ」
「え?そうなんですか?」
「夕方は.....基本的に家にラノベを読む為に引き篭もっているしな」
すると、そっか.....初めてなんですね、と七瀬が声を弾ませた。
俺は?を浮かべてその姿を見る。
その、何だか嬉しいです、と七瀬は言いながら目の前に飛び出す。
そして大袈裟に俺を上目遣いで見てくる。
そしてこう言ってきた。
「.....私、先輩の行動とか初めてを.....もっと知りたいと思います」
「何だよオイ。いきなり恥ずかしい事言うなよ」
「あ。恥ずかしいですか?.....先輩赤くなって可愛い♪」
「も、もう良いから!行くぞ!」
俺はそう言いながらポケットに手を突っ込んでそのまま照れ隠しをする感じで歩き出す。
すると、先輩。.....私は嬉しいですよ。.....先輩がそうやって反応してくれるのが、と笑顔になる。
その姿に、お前は。恥ずかしいセリフばっかり言うな、とお説教。
七瀬は、あはは、と笑みを浮かべる。
「.....あ。それはそうと池が見えてきましたね」
「ああ。そうだな。.....取り敢えずは白鳥ボート.....いや。一隻もないな」
「じゃ、じゃあ.....その。先輩。手漕ぎボートに乗りませんか?」
「.....あ、ああ。それでも良いが.....」
何というか。
手漕ぎボートも提案に出されていたしな。
思いながらそのまま俺達は手漕ぎボートの貸し場に向かう。
それからチケットを購入してから.....そのままボートに乗ってみる。
その乗る際に俺は手を差し出した。
危ないから捕まれ、と。
すると目を丸くした七瀬は俺を見ながら赤くなる。
先輩.....優しいですね、と言いつつ。
「お前はどうあれ女の子だからな。優しくしないと」
「.....」
七瀬は耳まで真っ赤にして俯いて無言になる。
俺まで恥ずかしいんだが。
それから俺はその姿を赤くなって見つつボートを漕ぎ出す。
そして池の中心まで来た。
ああ.....成程な。
これは池の木の狭間の夕日。
確かに眺めが良いな。
ここ最近、荒んでいたしな.....心が。
「.....先輩。.....よし」
「.....どうしたんだ?」
「.....先輩にずっと良いたかった事がありまして」
「.....?.....何を?」
すると俺を真っ直ぐに見てきた七瀬。
それから真っ直ぐな視線のまま、私、先輩が好きです、とそのまま笑顔で告げて.....くる.....え!!!!?
俺は驚愕しながら七瀬を見る。
そしてそのうち数秒経って赤くなる。
何!?
すると七瀬は、私は.....この気持ちだけは絶対に伝えたいって思っていました。ロマンチックなところで言いたかったです、と俺に向いてくる。
俺はまさかの衝撃の言葉に俯いて黙ってしまった。
そしてようやっとその言葉を絞り出す。
一言だが。
「.....そうか」
と、だ。
そして複雑な顔をする。
七瀬を.....見れない。
すると。
「.....でもですね」
「?」
「今直ぐに付き合ってほしいとかそういうのは言ってないです。返事も今は要らないです。先輩は先輩なりに考えて生きてほしいです。私は.....貴方が好きって事だけを今この場で伝えたかったんです」
「.....俺なんかに告白してもお前。一生涯付き合えるかも分からないぞ。.....俺は恋はしないって決めているんだぞ.....。死ぬまで恋をしないかもしれないぞ」
本当に生涯恋をしないと思っているしな。
そしてオールを持って漕ぐのを止めながら複雑な顔付きになる。
だがその言葉に、私はそれでも良いです。私は貴方に告白した事に意味があります、と強く俺を見てくる。
それから俺を真っ直ぐ見たまま、あー!でもとってもスッキリしました、とニコニコして伸びをしながら切り出す。
「私からの告白なんてやっぱり.....その。緊張しますね」
「.....いや何というか。正直。お前に告白されるとは思わなかったんだが」
「.....私は気付いてもらえるかな?と思い色々とサインを出していました。でも.....先輩に起こっている事は壮絶ですし.....忙しいですし。多少なりとでも気付いてもらえたらラッキー程度に思っていました。でも今、この場所で言うのに価値があるかなって思って」
「.....そうだったんだな.....」
それから俺達は暫く見つめ合いながら次に横に登っている夕陽を眺める。
良い感じの天気と良い感じの風と良い。
まあこの時間が永遠に続けば良いのだが。
そのぐらいに.....感じていた。
すると七瀬が話してくる。
「.....先輩。.....あの人達は引っ越した先で反省するでしょうか」
「.....分からん。正直本当に地に落としたのは一宮だと思う。.....まあ.....その。なので常盤に関しては反省の余地はあるかもしれないな。.....だけどあまり望みは無いだろう。こうなった以上な」
「.....何でこんな事になったんですかね」
「それは常盤に聞かないとな。.....俺に聞いても分からない事だらけだ」
「.....ですね。まあ聞けないですけどね」
そんな感じで俺達は暫く景色を眺める。
それから俺は盛大に溜息を吐いた。
七瀬も疲れた様な顔をする。
正直.....少しだけでも状況が何とかなればな。
そんな事を思いながら.....空を見た。
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