第5話 別れと歪

「.....」


「.....」


その日の夜の事だが。

全てを決意した俺は幼馴染を自宅に呼び寄せた。

それから俺は浮気確定後の幼馴染の時雨と対峙する。

そして俺は時雨をジッと見る。

時雨は何も感じない様なすっとぼけた顔をしている。


それから同じ様にジッと俺を見ている時雨。

その姿にイラッとした。

何でこんな平然で居られるのだコイツは?

浮気を平然としている癖に、だ。

思いながら時雨を溜息混じりに見る。


「えっと。仁?どうかしたのかな?」


「.....時雨。話があるんだが。.....お前は浮気したな?」


「.....!」


「.....隠すつもりならもう無駄だ。お前は.....俺以外の男とくっ付いたな?ラブホに行ったな?間違いないな?それから.....お前は俺以外の奴とキスまでしたな?それの証拠を収めたんだ」


「.....それは何処の情報かな?」


何処の情報か教えてやろう。

そういう現場を色々な奴が目撃したりしてな、と言葉を発する。

すると時雨は少しだけドキッとした様だが。


だが直ぐにそのまま平然となる。

それから予想外の言葉を口にした。

一言で.....この様に。


「.....で?」


「.....いやちょっと待て。.....で、って何だお前.....意味が分からないんだが.....?」


「私、今は怖いものがないんだもん」


「怖いものがない?.....それはどういう意味だ」


何だコイツは、と思いながら時雨を見る。

時雨は、私.....一宮くんを神様って思ってるの、と切り出してくる。

は?、と思いながら俺はドン引きで時雨を見る。


だが時雨は話を続ける。

私ね。.....一宮くんに成績の面で相談したら.....優しく相談に乗ってくれてしかも勉強に効果があるって飲み物までくれたの、と笑顔になりながら紅潮する。

いやちょっと待て。まさか、とは思うが。

俺は汗をかき始める。


「お前な。意味がまるで分からない。そんな開き直った様な態度だとこれから先.....お前の居場所無くなるぞ」


「私の居場所?まあ私、一宮くんに付いて行くつもりなの。だから全然大丈夫だよ」


「そうは言ってもな。ってか引っ越すのか?.....まあそうするのは勝手だが絶対に大丈夫とか無いからな。俺とかが今から言いまくったら終わりだぞ。何でそんなに外道になってしまったんだ.....?」


一体、何を飲んだんだ、と聞くと。

えっとね。それを飲んでから結構私、元気な日が続いてる。

この世界が変わった様に見えるの、と眼差しを天井に向ける。

嘘みたいな話でクソッタレだな。


俺は思いながら、お前の居場所はこの先も何処にも無いぞ、と言ってみる。

すると幼馴染は、あるよそんなの。この日本中に一宮くんと私の関係が伝わる訳じゃ無いし。それに人間はそんなやわなモノじゃないから。それから貴方は首相とか大統領とか国家権力者じゃ無いんだからそんな力は無いでしょ、と話してくる。


俺は汗をかく。

何かコイツ.....ハイになりまくってんな。

マジかコイツ、と思ってしまうし。


それから、お前.....変なもの飲まされたじゃないか、と尋ねる。

すると時雨は、そんな事無いよ、と言う。

彼は何も変な事してないし、とも。

それはどうかな.....、と思ったが。

なんか追求するのも億劫になってきた。


「.....まあ何というか。.....もう良いや。.....帰ってくれ。お前とは別れるつもりで呼んだが.....何かヤバいし」


「私はこれでも良い人なんだけどなぁ。.....でも貴方にとっては外道に見えるのかな」


「いやガチで外道だよお前は。.....親とか泣いてるだろ多分」


「そんな事無いと思うけど私の親は親だから。私をずっと大切にしてくれるの。まあ.....貴方にとっては外道かもしれないけど。まあこの先も彼と一緒だから無敵だよ」


「いや悍ましいなお前」


ハイになっているのは薬物だと思うんだが。

まあそれが事実かは分からないが。

でもコイツの殆どを何かが変えてしまったんだな.....。

そうなるともうどんだけ言ってもコイツの心に響かないと思うけど。


俺は考えてから吐き捨てる様に、消えてくれ、と呟く。

すると、うん。じゃあね、と気楽に帰って行く時雨。

こんな事になるとは、と思いながら玄関が閉まる音を聞く。


「.....」


何故こんな事に、と思ってしまう。

それから顔を覆ってから崩れ落ちた俺。

俺は、反省ばかりだな、と考えた。


自分自身の怒りのコントロールとかが出来てないな、と思える感じだ。

時雨の事が取り返しがつかない事になっていたのが残念だし。

もう何も.....。


「.....」


しかし本当に関係がすんなり終わってしまったな。

思いながら俺はリビングに戻る。

すると八鹿が俺を見ながら、お兄ちゃん、とかなり複雑に言ってくる。

その顔は全てを聞いていたよ、と言う感じの顔だった。

俺は、聞いての通りだ。.....アイツ毒されたんだな、と答える。


「.....酷いね.....」


「.....正直俺の言葉も、もう耳に届いてないな。.....引っ越すのも相まってやりたい放題だった、かもしれない。アイツは.....多分何かに汚染された」


「.....覚醒剤なのかな?」


「.....いや。それは.....どうかな。分からないが」


まあどっちにせよ。

もう時雨と俺は関係が無い。

思いながら俺は幼馴染と決別する事にした。

それから俺は眉を顰めてからトイレに行こうと思い廊下のドアを開けると窓の外から何か.....言い争う声がしてくる。


俺は、?、を浮かべながら外を見る。

何故か知らないが七瀬と時雨が言い争っていた。

俺はトイレに行くのを止めて慌てて外に出る。

するとこんな声がした。


「最低ですね。.....本当に何が貴方をそんなに変えたんですか」


「ちょうど持ってるしこの飲み物を飲んでみてよ。そうしたら分かるよ」


「は?飲みませんよそんな怪しいの。.....何でですか。.....先輩と今じゃない昔は上手くいっていたじゃないですか。何でこんな.....」


「頭おかしいとか言いたいの?.....私はあくまで正常だよ?あくまでこれはオススメだって言っているだけだよ」


「.....」


ちょっと待て。

俺の家の前で何やってんだコイツら。

近所迷惑だぞ!

思いながら、待て待て!、と言いながら近付くがその直前にパァンと平手打ちが飛んでいた。

まさかの事だ。


そして唇の端が切れて血を流す時雨。

だが時雨はそれに対して怒る事はなかった。

それどころか瞳孔が開いて話し始める。


「何するの?何で手を出したの?意味が分からない」


「私の先輩を何だと思っていますか。何でそんな最低になったんですか。何でそんな事になったんですか。意味が分からないです」


「.....」


「ちょ。ま!?落ち着けお前ら!」


俺はもう見てられないと割って入る。

すると、先輩.....、と切り出してから複雑な顔をする七瀬。

時雨は、面倒臭くなりそうだね、と切り上げてから逃げる様に帰って行く。

何事かと近所の人達が出て来た。

そんな野次馬を見ながら俺は慌てて七瀬を見る。


「な、七瀬。.....取り敢えず今は家に入ろう」


「.....ですね」


歪な顔をしてから唇を噛む七瀬。

俺はそんな七瀬を連れて近所の人に頭を下げてからそのまま家に連れて入る。

そして七瀬に、何しに来たんだ、と聞いてみると。

七瀬は、面白い漫画があったので持って来ました。そしたらこのざまです、と言う。

それから悩む。


「.....でも多少なりとも何であんなに歪んだか分かりました」


「.....お前と俺の考えが一致なら。.....多分アイツは薬物か何かを飲まされたんだな。多分。マジに歪んでいる」


「.....ですね。恐らくですが.....」


そして七瀬は、その。少しだけ家に上がっても良いですか、と尋ねてくる。

俺は、いや。上がるしか無いだろ今は、と答えて上げる。

それから俺は七瀬を見る。

七瀬は叩いた掌を見ていた。

そうしてから何かを考えていた.....。

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