第4話 ショートケーキ

幼馴染が裏切ってからだったがまあ何というか。

俺は帰り道が一緒になった七瀬と公園にやって来てからブランコで遊んだり水遊びをしたりした。

とは言っても流石に制服が子供がよくやっている様なグッショグショのビッショビショになるぐらい大袈裟には流石に抵抗があり出来なかったので。


それなりの程度でやった。

俺達はその遊んだ後に濡れた制服から体操服に着替えてクソ暑い太陽で制服を乾かしてからそのまま七瀬を自宅に送り届ける。

そして七瀬の家の門の前で七瀬を見た。

苦笑いが出る。


「.....今日は楽しかったな。何というかお前のお陰だ」


「ですね。楽しかったですねぇ。アッハッハ」


「お前の誘いだったけど。.....本当に満足だわ」


「そうですか?.....それは良かったです。有難うございます♪」


七瀬は嬉しそうに笑顔のまま俺に向いてくる。

俺はその七瀬を見ながら笑みを浮かべた。

すると七瀬は途中までニコニコしていたがその顔の表情が途中で変わった。

それから俺をジッと見てくる。


「先輩.....私。もっと先輩に是非、笑顔になってほしいです。なので頑張りますね」


「.....い、いきなりどうしたんだ?」


「あの時。先輩に助けられた分を.....その分が恩返しがしたいです。.....それが今だと思いますから。期待していて下さいね。絶対に後悔はさせないです」


「.....な、成程な。うん」


「.....だから先輩。.....死なないで下さい」


その様に話してから真剣な顔で見てくる七瀬。

そうしてから、先輩。本当に何時も有難うございます、と頭を下げた。

それからゆっくり顔を上げて神妙な顔になる。

立木先輩から何か来ましたか?、と尋ねてきた。

俺はゆっくりと首を横に振る。


「.....取り敢えずは何も来てないな」


「.....そうなんですね.....」


そうしているといきなりだが写真とメッセージが送られてきた。

浮気していたな。確定だ、とも文章が添えられている。

青ざめる俺。

その言葉に複雑な思いで写真をダウンロードして開いて.....俺は絶句する。


マジかコイツら。

別れ際なのかキスまでしてやがった。

思いながら俺は盛大に溜息を吐く。


駄目だな.....確定か。

まさにビンゴ、だな。

すると七瀬が不安そうに見てきた。


「.....先輩.....?何かありました?」


「.....智和からな。.....浮気確定だ。.....予想通りと言えるけど」


「.....!」


七瀬の顔がキュッと唇が引き締まった。

それから、そうですか、とわなわなとしながら言い始める。

少しだけでも善の方に期待していたんですけどね、とも添えられる。

俺はその姿に、そうだな、と眉を顰める。

困ったもんだな.....。


「まあ。.....でも。七瀬」


「.....何でしょう」


「.....有難うな。色々と」


「私は何もしてないです。.....ただ.....絶望に感じているだけです。あり得ないって」


「多少なりとでもそう思ってくれるのは嬉しい」


「.....」


七瀬は本当に痛みのある複雑な顔をした。

本当に感謝だ、と言いながら俺はそんな七瀬に笑みを浮かべた。

もう何というか絶望的だが。


思いつつ俺は七瀬を見つめる。

でも七瀬と智和が居たから、と思えるしな。

腕に手を添えながら七瀬は唇を噛んでいる姿に言い聞かせる。


「.....七瀬。取り敢えずは今は.....落ち着いていこう.....うん」


「.....ですね。先輩は落ち着いていて凄いです。.....私は怒りしかないですから」


「ああ。まあそれは有難いけど.....そんなに怒ってももう仕方が無い。とりまゴミクズって判明したのは良かったけど」


「.....ですね」


七瀬は、ですね、としかさっきから言わない。

本当に怒っているんだと思う。

かなり静かに怒りを充ち満たせている感じに見える。

俺はその姿を見ながら、信じる心もあったんだけどな、と悲しげな声を発する。


それから盛大に溜息を吐く。

そしてハッとした。

周りが暗くなっている。


「.....すまん。七瀬。引き留めてしまって。楽しかったのにな。せっかく」


「.....全然構わないですよ。.....だって先輩と話すの楽しいですから。全然楽しいです」


「有難うな」


「楽しいことばっかりです。.....それに.....先輩の事.....」


そこまで言い掛けてハッとする七瀬。

それから赤くなったまま、だ、大丈夫です、と言いながら俺に笑みを浮かべた。

俺は、???、を浮かべながらその姿を見る。


ふむ?、と思いながら。

すると七瀬はまた眉を顰めて複雑な顔になってから、先輩。今度.....常盤さんと話しましょう。何考えているのか全くわかりませんけど.....もう許せないです。我慢の限界です、と言い始める。

ワナワナと震えている感じだ。


「.....そうだな」


俺はゆっくりとそんな事を言いながら七瀬を見送る。

それから俺は七瀬と別れてからそのまま直で帰宅した。

何考えているんだろうな.....時雨は。

訳が全く分からないが。



正直言ってこうなってしまってはどうしようも無いのだが。

なのでキレたところで意味が無いと思う。

だから俺は絶対にキレたりはしない。

それは.....負けを意味すると思うから、だ。

情けない姿は晒さないつもりだ。


「お兄ちゃん。大丈夫?」


「.....八鹿」


帰宅すると八鹿が直ぐに不安げに出て来た。

そして俺を真っ直ぐに見てくる。

俺はその姿を見ながら真剣な顔になる。

それから、八鹿。完全な浮気だわ、と言葉を発した。

キスまでしていた写真ならもうアウトだろうな、とも。


「.....そうなんだね」


「八鹿。お前も有難うな。何時も」


「私は何もしてないし.....お兄ちゃんより本当に頑丈だから」


俺にそう話しながら八鹿は少しだけ笑みを浮かべる。

それから俺に対して、お兄ちゃん。取り敢えず買ってきたんだけどおやつ食べない?、と言ってきた。

その言葉に、ああ.....有難うな。じゃあ食うか、と笑みを浮かべてから返事をする。

すると八鹿は、うん、と返事しながら笑顔で動き出した。

見守る形でそうしていると、お兄ちゃん。早く、と手を取られる。


「.....あ、ああ」


俺は慌てながら室内に入る。

それから俺はリビングに入ってからソファに座る前に制服を着替えて手を洗う。

取り合えずはこの制服は濡れてしまったから何とかしないと。

乾かさないと.....、と思う。


全くな、うちの後輩はどうしようも無い。

でもな.....俺としては俺に対して励ましをする為にやったんだ、だからこそ何とも言えないな。

その中で俺はその思いに応えなくては、と思う。


「とは言え.....な」


まあその。

やり過ぎとは言える部分もある。

何かとこの事は説得して制御はしなくてはなるまい。

そう考えながら俺はリビングに戻ると.....そこにケーキがあった。

ショートケーキが2つである。


「何だ八鹿。すまないな.....わざわざケーキを買って来てくれたのか?」


「うん。買ってきた。でも.....手間じゃないか、とか思わないでね。私がしたい事をしているだけだから。気にしないで」


「.....そうか。でもすまないな。買って来てもらって」


「全然大丈夫だよ」


それから八鹿は何か紅茶の様なモノを淹れた。

そして俺の前にゆっくり置く。

俺はその姿を見ながら、ふむ、と思う。

そうしてから頬を掻きながら椅子に腰掛ける。

すると待っていたかの様に八鹿が早速切り出してきた。


「お兄ちゃん」


「.....?.....どうした?」


「いや.....。.....その。.....手は洗った?」


「.....ああ。手は洗った。.....この後に直ぐに風呂にも入るしな」


「.....そっか。分かった」


「.....?.....何か言いたかったら言えよ?」


その言葉に複雑な顔をして、ううん。大丈夫、と笑顔になる。

俺は?を浮かべてその姿を見ていると八鹿は、それはそうとお兄ちゃんは大丈夫?、と聞いてくる。

何度もだけどかなり心配している目をしていた。

その姿に、ああ、と柔和になる。


「くたばってないしな」


「.....こんなにしつこくあれこれ聞いたらうるさく聞こえるんじゃ無いかって思って.....でも聞いておかないと絶対に私が後悔するからね」


「.....成程な」


「でも今は死んでないとかそれ名言だね」


「まあそうだな.....だってそうは思わないか?」


「.....確かにね。人生、生きているのが大切だしね」


それから俺に向いて笑みを浮かべる八鹿。

そして、食べようか、と言葉を発する。

俺は目の前の湯気の上がる紅茶を見ながら。

だな、と答える。


「.....それにしても本当に異常だよね。常盤さんの行動といい.....一宮さんといい.....メチャクチャだよ」


「.....時雨に関してはその兆候があったと思う。.....それを見抜けなかったのは俺の誤算だと思う」


「.....そうだったんだね.....」


「先ず別れを切り出してから徐々に時雨から離れていこうと思う。アイツに関わっていたら狂う。全てが」


俺の環境もそうだが。

みんなの全てを配慮しなくては。

思いながら俺は唇を噛む。

それから俺は八鹿を見てみる。

八鹿は何とも言えない複雑な顔をした。


「そうだね。こうなったら常盤さんを正しくするのはもう無理だと思うからね.....」


「.....そうだな」


「取り返しがつかない事になる前に何か対策を打つのは良いかもね」


「.....ああ」


そして俺はショートケーキを食べる。

それから額に手を添えて溜息を吐いた。

味がない。

当たり前だがストレスだな。

もう盛大にしか溜息が出ない。


やっぱり全部が歪んで見えるな。

何というか浮気野郎をどうにかするのは手間が掛かりそうだが.....どうにかしないといけないだろうな。

復讐って意味じゃないが.....。

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