第3話 傷心の癒し
そんなこんなで放課後になった。
智和は約束通り帰宅する際に幼馴染の時雨を追跡するという。
俺はその言葉を聞きながら、気を付けろよ、と言って智和を見送る。
智和は俺に手を振ってから行ってしまう。
と同時に良い友人だよな、と思ってしまう。
それから俺1人で帰宅しようとした際に七瀬が慌てながら昇降口で声を掛けてきた。
そうしてから七瀬は、一緒に帰りたいです、と申し出てくる。
うん?いつもの生徒会はどうしたのだ。
思いながら俺は七瀬を見てみる。
七瀬は俺が言いたい事が分かっているかの様な顔をした。
「えっと.....今日だけ代わりの子がやってくれて。生徒会を休ませてもらいました。だって傷心ですから先輩が.....」
「いやいや。そんなにしなくても良いんだぞお前。というか休んでしまったのか.....?」
「私は先輩が心から心配なんです」
「.....気持ちは有難いがそんなに心配しなくても死んでないぞ俺は。何でそこまで」
「2人として居る訳じゃないです。先輩は。.....貴方だから心配します」
何を言ってんだ。
そんなメチャクチャな.....。
思いながら俺は七瀬を見る。
七瀬は俺を見ながら笑みを浮かべる。
先輩。私の事は気になさらないで下さい、と。
「.....私がやりたいからやっているだけです」
「.....そうか。なら.....まあ良いんだが」
俺は額に手を添える。
全くコイツは、と思える感じだ。
良い奴らに恵まれている。
幼馴染に爪の垢を煎じて飲ませたい気分だ。
良い加減にしてほしい。
「.....立木先輩.....大丈夫ですかね?私が勧めておいてなんですが」
「.....アイツは自らを消すのが得意だしな。.....大丈夫だろ」
「そうですか?」
「.....ああ。俺よりかは少なくとも」
そうしていると七瀬は、本当に良いお友達ですね、と笑顔になる。
俺はその言葉に、そうだな。恵まれている、と柔和になる。
それから歩いているといきなり七瀬が駆け出して行った。
そして俺に腰に手を回して向いてくる。
「先輩」
「.....何だ?七瀬」
「もし良かったら寄り道しませんか。少し」
「.....え?何処にだ?」
「公園です。ブランコしましょう。遊びましょう」
いや何でいきなりそうなる。
思いながら七瀬に聞こうとしたが既に七瀬は俺の腕を引っ張っておりそしてそのまま駆け出して行った。
それから俺はいきなり立ち止まる七瀬につられて立ち止まる。
俺は躓きながらその腕を引っ張られるのに付いて行くのに必死だった。
いやちょ。
危ないんだが。
と思いながら七瀬を見る。
すると七瀬は笑顔になって言ってくる。
「先輩の心を癒す為ですから」
それは良いけど何で公園になるんだ?
俺は?を浮かべる。
訳が分からずだったがそのまま子供の大勢居る公園の中を突っ切ってからそれから空いているブランコにそのまま思いっきり飛び乗る七瀬。
それから思い切り動かし始めた。
「七瀬.....?」
ギーコギーコと音を鳴らしてブランコを動かす。
たのしー!、と言いながら、であるが。
俺はその中で苦笑い。
そして頭を掻いた。
そうして見ていると七瀬のスカートが捲れそうになる。
慌てて俺は目線を逸らした。
すると七瀬が俺に向いて大声を出す。
この様に。
「先輩!乗りましょうよ!」
と、である。
俺は盛大に溜息を吐いた。
それからジト目になる。
あのな、と言いながら、であるが。
「俺は子供じゃないんだから.....」
「子供でも大人でも普通、乗りますよブランコなら」
七瀬はニコニコしながらそれでも動かす。
物凄い勢いでブランコが激しく前後に揺れる。
子供達が、姉ちゃんすげぇ!、と言いながら目を輝かせていた。
見知らぬ姉ちゃんなのにな。
子供ってこんなだよなぁ。
俺はその姿を見ながら七瀬を見る。
そして渋々ブランコに乗る。
横のブランコに、であるが.....。
それから俺は、やれやれ、と思いながら漕ぎ始める。
すると更に追加で七瀬はこんな事を言い出した。
「先輩。どっちが一番漕げるか勝負ですね!」
「.....いや。あのな。そんな事はしないぞ。.....マジに子供じゃないから.....」
「あれあれ?もしかして負けるのが怖いんですかセンパーイ?」
「.....あ?.....お前と言うやつは.....」
何言ってやがる。
調子に乗るなこの野郎.....上等だ。
ったく、と思って言いながら俺は精一杯に漕ぎ始める。
すると七瀬は、アハハ!先輩勢い凄い〜、と言いながら笑顔になる。
それから俺達は暫く争ってから。
汗をダラダラとかきまくった。
流石は夏であるなぁ、と思える感じだ。
☆
「でも確かにな。.....良いかもしれない。こういうの。初心に帰る意味で」
「でしょ?先輩♪」
「.....でもメチャクチャ疲れたけどな。俺はヒキニートだから」
「だとしたら良い汗かきましたね」
「.....」
まあでも確かにな。
運動不足の俺には効いた。
思いながら目の前のブランコを見る。
2つともに先程の子供が遊んでいる。
そんな姿を見ながら俺は横に腰掛けてスポドレを飲んでいる七瀬を見る。
ごきゅっごきゅっと音が鳴りいやらしい感じの飲み方だった。
赤くなりながら俺はそっぽを見る。
自覚しているのかしてないのか.....。
「?.....先輩?どうしたんですか?」
「何でもないぞうん」
「あ。これ飲みたいんですか?もしかして」
「.....アホ。間接キスだっての」
「ですねぇ。冗談ですよ。私も恥ずかしいですよ流石に」
うん?.....コイツ、ビッチな感じなのに意外だな.....恥じらったりするのか。
考えながら俺が目を丸くする。
そして見ていると七瀬はゴミ箱にスポドレのペットボトルを勢い良く投げ捨てる様に捨ててから。
さて!次は何しましょう!、とニコニコしながら話してくる。
まだ遊ぶのかよ。
「.....とは言えマジに遊ぶ場所ないだろ。子供が多いし。ましてや滑り台とか雲梯とか使えんだろ。子供じゃないんだからよ」
「チッチッチ。まだ早いです。.....地面から吹き出す特殊な噴水がありますよね。公園に」
「.....そうだな。着替え持っている子供が遊んでいるな。ビッショビショの水浸しな感じでも激しく駆け回っているし」
「ですです!.....分かってるぅ!.....さあ行きましょう。先輩!」
「.....あのな.....割とマジに子供か?お前は。勘弁してくれ」
「先輩も遊びますよ?当然です」
良い加減にしろ。
ゴメン被りたいんだが。
俺は考えながら居たが、行きましょうよー、と激しくせがまれたので仕方がなく噴水に行く事になった。
子供かよ、と思うのだが.....。
それに不安だ。
何が不安かって?それはな、着替えがないのである。
「着替えなら今日使った体操服があります。それに軽い水掛けなら大丈夫でしょう!乾きますって。暑いですから」
「.....あのな.....。.....まあ確かに今は水ぶっ掛けられても大丈夫な夏が近い季節だけどな.....」
「そうですよ。.....先輩。青春は今だけですから。たのしーくゆーるくやりましょうぜ?」
「.....青春を建前に出すなっての」
俺は、ったく、と考えながらそのまま噴水まで行った。
それから鞄とか靴を濡れない様に置いていると先に裸足になった七瀬に水を勢い良くぶっ掛けられた。
あはははは!、と大笑いで笑う七瀬。
此奴という奴は.....。
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