第2話 心配する仲間

大地は歪んで見える感じだ。

そして晴れている筈の外は雨が降っている様に見える。

本当に全てが歪んで見える。


晴れている気はするんだが、と思うのだが。

明るさが暗く見える。

何も考えられない。


俺は一歩一歩重苦しい足を動かしながらそのまま教室に辿り着いた。

まだ何か強迫観念が酷い様だな。

思いながら教室の戸を開く。

すると友人が寄って来た。


「よお」


「.....おう。おはようさん」


「すまん。今朝は忙しくて一緒に登校出来なかった.....って何かお前、顔色が冴えないな。どうしたんだ」


同い年の立木智和(たちきともかず)が挨拶をしてくる。

昔からの友人だ。

そばかすのある四角いメガネを掛けている男。


俺の顔色と感情を読み取った様な心配げな言葉を発する。

その姿に俺は、ああ。まあちょっとな、と言いながら鞄を下ろして答える。

そして席に重苦しく腰掛ける。

それから盛大に溜息を吐く。


「.....もしかしてその。何かあったのか。常盤さんと」


「お前にも話しとこう。.....その」


「.....?」


「.....アイツが。.....時雨が浮気したんだ」


「.....何.....!?」


智和は、マジかお前、という感じの顔になる。

俺は、マジだな。本当にショックだ。胃に食べ物があまり入らない状態だわ。一日経ってからだけどな、と答える。

すると智和は、.....そうか、と複雑な顔で言いながら俺を見てくる。

そして、取り敢えず今から外に出ないか、と誘ってきた。

その言葉に目を丸くして、いや馬鹿か。時間が無いぞ、と言うが。


「.....ホームルームが終わってからだけどな。.....それに1時限目は緩い先生だろ。サボっても良いんじゃないかって思っているしな」


「.....お前という奴は最低だな。.....でも有難いけど良いや。感謝はしているけどな」


名前、常盤時雨(ときわしぐれ)、17歳。

俺と同年齢のクソッタレの幼馴染の名前。

思い出すだけでもゾッとする。


最低な気分になる。

それに吐き気がしてくるが。

考えながら.....俺は静かに智和を見る。

智和は心配げな顔だ。

俺は片方の手を挙げる。


「.....でもな。やっぱり授業をサボるのは良くないと思う。.....やはり.....親が金払っているしな」


「.....何というかお前はクソ真面目だな。本当に」


「クソ真面目じゃない。何というか義務だからただ動いているだけだしな」


「それをクソ真面目って言うんだぞ」


そして俺達は互いに苦笑い。

でも少しだけ気楽にはなった。

それから俺は智和を見ながら深く深呼吸してから鞄から教科書を出したりする。


多少はマシになった感じである。

思いながら居ると智和が横に腰掛けてきた。

と同時に言葉を発する。

クラスを見渡しながら、であるが。


「なあ。.....何で常盤さんは浮気したんだろうな」


「.....常盤さんが心の底からのどん底のアホって事だろ。分からないが」


「.....そうだな」


そして会話していると。

教室のドアが開いた。

それから.....時雨が顔を見せる。

俺達は、!、と思いながらその姿を見る。


「居た」


「.....」


「.....常盤さん.....!?」


何を平然と顔を見せているんだコイツは。

思いながら時雨を立ち上がって見る。

すると時雨は、えっとね。仁。教科書貸してよ、と言ってくる。

ああ。クラスで時間割違うしな。

でも今度から貸す気は無いんだが。

思いながら睨む。


「時雨。.....残念だがお前に貸す物は何もない」


「.....え?それってどういう意味?」


「お前に貸すものは無いって言っている」


「.....はい?」


しらばっくれるつもりかこのアホ。

思いながら、時雨。お前は隠れて何かしてないか、と問う。

すると一瞬だけ身体を固めてから。

時雨は、何それ?、とニコッとした。


「.....そう答えるか」


「.....私が隠れて?何をしているっていうの?」


「俺の感情を考えた事あるかお前」


「.....」


段々と目から時雨の正気が無くなったりした。

教室がザワザワし始める。

何事か、と。

するとその中でブランと腕を垂らした時雨。

そして突然と顔を上げて笑顔になる。


「.....じゃあ良いや。知り合いに教科書は借りる」


と言いながらニコニコしながら去って行く。

俺はその姿を見ながら智和を見た。

智和は溜息を吐きながら横に手を拡げる。

あれは確実だな、という感じだ。


「.....この先どうするんだお前」


「.....どうするか、だな」


そんな感じの一幕だったがクラスが変わらず動いてくれた。

俺はその光景に窓から外を見る。

やっぱり晴れているが鼠色に見えるな空が。

思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。

そして智和を見る。


「.....正直言って何も考えれないな。もう疲れた」


「.....また新しい彼女を探すのか?」


「.....そんな事すると思うか?.....もう懲り懲りだわ。浮気するしな女子は」


「.....そうか.....」


そしてそんな感じの事がありながらホームルームが始まる。

それから俺は背もたれに倒れていたのを戻してから。

そのまま入って来た担任によるホームルームを受けた。

そうしてから2時限目の中休みになる。



「.....先輩」


「.....?.....おう。七瀬。どうした」


「先輩の事が心配になって来たんです」


「.....ああ。成程な。ってかそんなに心配せんでも」


そんな感じで会話をする俺達。

すると七瀬は、このクラスもそうですが学校中に全ての事実をバラす方が良いと思います、と切り出した。

俺はその顔を複雑な感じで見る。

そうしていると智和が話し掛けてきた。


「.....まあ.....今は止めた方がいいと思う」


「.....?.....智和?」


「.....立木先輩.....?」


智和は、まだ確定した訳じゃない。取り敢えずはもうちょい探った方が良いと思う、と言い始める。

俺は、だが、と切り出す。

すると智和は、取り敢えずは俺が追跡で行くよ、と話した。

いや。冗談だろ。付き合ってもないお前にそんな仕事は押し付けられないぞ、と言うが。


「いや。これは逆に目立たない感じの俺が適正だ。あくまでバレたらヤバいし。俺なら通行人と同じ程度で済むかもだけど。だから一宮とかに顔をあまり知られてない俺が良いと思う。もしかしたら仁は既にラブホの前で気付かれているかもしれないしな」


「.....しかし.....」


「先輩。ここは任せましょう。.....取り敢えず立木先輩に」


「.....」


俺は俯いて考え込む。

そして智和を見てから七瀬を見る。

それから、分かった、と返事をしてみる。

智和は、有難うな。信頼してくれて、と笑みを浮かべる。


「.....ああ。.....智和。有難うな」


「.....任せとけ。.....バッチリ浮気の証拠は掴んでやるからな」


「.....取り敢えずは.....時雨にバレない様にな」


「.....そうだな。こう見えてもこういうのは得意分野だ」


「得意分野ってどういう事だ.....?」


そんな感じで笑い合う俺達。

それから真剣な顔になってから相談し合う。

結果として俺だとバレる可能性がある為、幼馴染は智和が追跡。

そして俺は情報を自宅で受け取る事にした。

もどかしいが仕方が無いとは思う。

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