幼馴染と可愛がっていた後輩男子。この2人は俺を裏切って堕ちた様だ。どうやらNTRの様であるが.....?
アキノリ@pokkey11.1
第一章 絶望の果て
悪の気配
第1話 堕ちた両翼
この世界をまるまるぶっ壊したい気分になった。
何故.....こんな思いを抱かなくてはならないのか、だが。
俺、長谷仁(ながたにじん)、17歳は.....愕然としながら持っていた荷物と傘を雨に濡れた歩道に落としてしまった。
それから強い燻りのある思いを抱きながら目の前を見る。
幼馴染と一宮勇人(いちみやゆうと)。
ラブホから出て来た幼馴染と。
俺の弟分で.....とても可愛がっていた後輩男子を見る。
ラブラブの愛愛傘のせいで俺に気付いてない様に見えるが。
何かがハイになっている様にも見える。
完全な浮気に近い形であるなこれ。
今この場でラブホから出て来たのは偶然か?
俺を裏切った、という事は確かだろうけど。
何れにせよ本当に最悪の気分だった。
最悪過ぎて雨に濡れたい気分だ。
「.....いやはや。何していたんだかなぁ俺は」
でも丁度良かったかもな。
余計な夢から醒めれた。
違和感を最近感じていたし。
俺は考えながらハッとしながら幼馴染の誕生日が近いので渡そうと思っていたプレゼントを思いっきり踏み潰した。
それから雨の中、俺は帰る事にする。
どっちみちにせよ涙が頬を伝う。
とは言っても.....まあそれは涙なのか涙じゃないのか分からないが。
俺にとっては泣いている様な感じはするが本当にどっちか分からない。
偶然とはいえ最悪のモノを見てしまった。
穢らわしい。
「.....」
そんな俺に次に沸いた感情は。
幼馴染を心から、ぶちのめしたい、という感情だった。
しかしまあそんな事を実際にすれば犯罪だからまあしない。
だけど怒りが沸々と湧いてくる。
別れてからすりゃ良いものを.....後味の悪い事をしやがって畜生めが。
「.....はぁ.....」
もう二度と恋はしない事にするつもりで覚悟を決める。
全てにおいて絶望しかない気分である。
恋がこれほど苦痛だとは思わなかったな。
そしてこんな儚いものだとは。
「くそ.....無駄足だったな。本当に」
天候は土砂降りになってきた。
つまり大雨である。
幼馴染達は何処に行くつもりか。
まあ知った事ではないが。
何というか傘を衝撃で置いてきてしまったな。
だけど今の俺はそんな事を.....深く考えれなかった。
高いんだけどなあの傘。
とか思ったが。
どうしたものかな。
このボロクソの感情は本当に。
☆
「.....そんな.....」
「もう二度とアイツに会わない様にしたいもんだな。最悪だわ」
「.....」
当初妹は柔和だった。
だけど目が死んだ感じで帰って来てビショビショの俺を見てから異変に気付いた妹に全て話した。
高一の俺の妹。
美少女、成績優秀の妹。
取り敢えず頭の回転だけは良い律儀な妹だ。
とにかく可愛い自慢の妹。
そんな妹の八鹿(ようか)は俺を見ながら唖然としながら。
そして酷く愕然としながら涙を浮かべる。
その涙を見てから俺は俯いたまま玄関に腰掛けた。
頭を振るって水滴を落とす。
何を考えているんだ幼馴染.....アイツは一体。
それから俺は何をしてきたんだ?
何で見抜けなかったんだ。
頭にくる。
「お兄ちゃん.....」
「これNTRだな。ラノベで言えば。.....まさかリアルで本当に起こるとは思わなかったが」
「.....お兄ちゃん」
酷いよね.....そんなの。
八鹿は言いながらギリッと歯を食いしばる。
俺は溜息を盛大に吐き出してから足の部分のズボンとか見る。
全てが泥と雨まみれだわ。
本当に憎いわ。
最悪だわ。
夏なのに雨が冷たく感じるし。
どうせこのまま洗濯するなら俺の感情も洗濯出来ないだろうか。
思いながら俺は顔を覆って絶望した。
顔を叩いてもやっぱり現実だな、と考えながら。
そして呟いた。
「いや。本当に何をしてきたんだろうな」
そんなつぶやきが自動的に出た.....というかガチャみたいに排出される。
そして俺は涙を浮かべて静かに泣き始める。
心底、心に傷が付いた。
せめてもの救いは一緒のクラスとかじゃなかった点か。
それ以外は.....何があるかな。
考えれない。
「.....お兄ちゃん。.....取り敢えず.....落ち着こう。.....何か作るよ」
俺は壁を殴った。
そんなに力が有る訳ではないので当然傷も入らない。
その代わりに残された血に滲む拳を見る。
死ねよ幼馴染。
マジに愕然としか言いようがないわ。
そう思っていると。
目の前でバチンと手を鳴らされた。
それからゆっくりと顔を上げる俺。
「お兄ちゃん。落ち着いて」
少しだが現実に戻った。
そして妹を見る。
妹は俺を静かに見てくる。
見据える様にジッと。
俺はその姿に、すまない、と答えた。
「お兄ちゃん。今はご飯食べよう」
「.....八鹿.....?」
「私は怒りしかないけど。.....でも怒ってもどうしようもないし」
「.....八鹿」
因みに長谷八鹿。
この名前の意味はその名の通り、8つの鹿、という意味がある。
これはどういう意味なのかというと。
神様の使いが8つ。
中国では八は縁起が良い。
だから組み合わされているのだ。
八鹿は律儀だが.....その中でも本当に心優しい。
こんな感じで、だ。
俺はその姿を見ながら膝を叩いた。
それから立ち上がる。
そして、有難うな八鹿、と言った。
ゆっくり玄関を上がって着替える事にする。
八鹿もゆっくり玄関を登る。
「少し落ち着いた?」
「.....まあ.....うん。有難うな」
「取り敢えずは.....今は来る明日を考えよう。.....明るくいこう」
「そうだな」
そして俺は夕食(オムライス)をめいいっぱい作ってもらい。
そのまま夜、寝た。
それから起きて登校する。
幼馴染に会わない様にする為に時間をずらして、だ。
彼氏なのに何でこんな事をしなくてはならない。
最悪×最悪の方程式でも生み出せそうだな。
☆
「先輩!おはようございます!」
「.....?.....ああ。七瀬。おはよう.....」
金髪に髪の毛を染めたギャル。
少しだけ緩めた首元に空いている谷間。
リボンが小さく髪の毛にくっ付いている美少女。
俺の2人目の後輩の、七瀬奏(ななせかなで)、という。
16歳、女子の後輩だ。
「何か.....先輩?元気が無いですね.....?」
「ああ。昨日ちょっとな」
「.....昨日何かあったんですか」
「.....!」
七瀬は真剣な顔になった。
そして静かに聞いてくる。
感情が堪えられない。
隠せない。
今日休めば良かったかなマジに。
「.....」
「.....先輩」
「.....幼馴染が浮気してな。.....俺の彼女が俺の後輩と」
まさかの言葉に唖然とする七瀬。
俺はその姿に、それで落ち込んでいるんだ、と言葉を発した。
それから複雑な顔で七瀬の頭を撫でる。
七瀬は、何ですかそれ、とワナワナと震え始める。
「.....ガチですか?許せないんですけど」
「....ガチもガチだな。.....一応.....ラブホから出て来てな」
「.....信じられない.....」
「.....穢らわしいよな」
「.....はい。最低です」
七瀬は心から怒っている様だった。
そして歯を食いしばる。
俺はその姿を見ながら、取り敢えずは成り行きを見守る。そんな感じになった、と答える。
すると七瀬は、一発殴りたい気分です、と言い始める。
「.....七瀬。気持ちは分かる。だがそれをやったら駄目だ。俺達の負けだよそれやったら」
「何で貴方の様な良い先輩を裏切るんですか!?めっちゃ穢らわしい.....!別れてからやれば良いものを!」
「正直アイツが俺に別れを切り出さなかったのは謎だが。よく分からん」
「.....そういう浮気で成り上がっていて調子こいている奴って結構.....自らが破滅した後の用に駒の様な予備を置きたがる感じですから。そういう事でしょう」
「.....そうなんだな.....よく分からん」
どっちみちにせよ私は許せないです、と言いながらガァンと乱暴に廊下に地団駄の様に置く。
俺はその姿に、だな、と答えながら顎に手を添える。
そして考えてみる。
そういうもんなんだな女子ってのは多分。
みんながみんなそうじゃ無いと思うけど.....。
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