第2話
工藤さんの家で阿澄さんと合流したが子供達を見て電話先よりもほっこりしたようだったが相変わらずどうしましょう、と言う姿を見て加奈子は大丈夫ですよと声をかける。
阿澄さんは自分の母よりも上くらいの年齢の女性だ。今は離れて暮らす母は流石にここまで混乱することはないだろうが母が困ったことがあったら助けてあげたいと思う気持ちが加奈子にはあった。
阿澄さんに変わって工藤家のインターフォンを鳴らす。どんな人が住んでいたっけ、一年に数回の町内会の行事で数回顔を合わせた住人の中で誰が誰で、というのは共通点が無いと難しい。
「はーい」
これまた工藤家から出てきたのは阿澄と同じくらいの小太りな主婦。
「あら班長の阿澄さん。それに乾さんの奥さんとおぼっちゃん」
工藤は自分たちを知っていたようだ。
「あ、こんばんはですぅ」
気弱そうに挨拶するものだからと加奈子がかくかくしかじかと話しはじめる。阿澄にちょっかいを出す大我と相馬。そんな二人を見て注意しながらほぼ初対面な工藤さんと話すと
「べっつに飛ばしてくれても構わないわよ。また今度私をちゃんと入れてくれればいいことだし」
とあっさりと回答がでた。
「えっ」
阿澄さんら驚いていた。加奈子はほっとした。
「まぁ他の人に工藤さんとか飛ばされてる、ずるいとかいう奴もいても私に連絡すれば変わるけど? とか適当に言っといて」
「適当にって……それに多分思うに飛ばされていてもまた修正されて混乱するよりかはマシって思うかなと私は思って」
「そーよそーよ。みんな働いてたり忙しかったりするから。このままでいいけど。また文句言う奴いたら私の名前出すか直接連絡ちょうだい」
「は、はい……」
なんとも豪快な女性だと加奈子は呆気に取られた。
「それよしかそんなことで文句言う人はこのグループにはいないから、大丈夫」
ニカっと笑った。
阿澄さんもホッとしたようだ。
「うちも長いとここの辺に住んでるしね。他のグループだとうるさいクレーマーいるけど、阿澄さんもそこに当たらなくてよかったわよ」
「ありがとうございますぅ、それでは夜遅くに失礼いたしました。次回の当番表作成の時には気をつけます」
「あいよ、もともと自治会担当のミスだからそこまで気にしなくていいのよ」
「ありがとうございますぅ。乾さんもお子さん小さいのにありがどうございました……本当本当すいません」
何度も頭を阿澄を下げるもので加奈子は大したことをしてないのだが、ただ事実を話しただけ、工藤さんがただ良い人だったのもある。それに今回の大元は自治会のミスで阿澄を掻き回したのもある。
「阿澄さんも今日はゆっくり寝てくださいね」
「はいー、もう心労が重なって寝られなくて」
そこまでもか。加奈子は工藤さんのようにさっぱりした人と阿澄さんのように気にしぃ人を同時に見れたと。
結婚して子供ができてからコミュニティが狭くなっていた加奈子にとっては新鮮な出来事であった。
先に遠くに住む阿澄さんがトボトボと帰っていく姿を見てから子供たちと帰ろうとしたところだった。
「乾さん。おつかれ」
工藤さんがそう声を掛けた。
「いえ……阿澄さんがお困りのようで」
「普通だったらそんなことしないのにね。阿澄さんもちょっと輪に入らない人だからこのグループの人たちのこと知らず班長になったのよね」
自分も、だなんて言えない加奈子だが。
「乾さん、今子育て中で仕事は?」
「まだ下が幼稚園入ったばかりで……仕事見つけてますがなかなか」
「若いのにもったいない……て、保育園とか待機多いからしょうがないよね」
「あ、それは少し前のお話で。どちらかと言えば上の子を預かってもらうところがなくて」
「あー、学童のほうか。ご両親とか……」
「少し遠いところに」
「核家族が増えたわよね。うちの娘とか息子は子供が小さいうちはこっちにいたけど大きくなったら別のところにお家立てちゃって寄り付きもしない!」
あれ、と加奈子は思った。愚痴聞かされてる? と。
息子たちは近くで踊ってるがそろそろ何か起きて喧嘩が始まる。こんな夜に外で騒いでしまったら……。
「あ、悪かったね。にしても加奈子さんはお世話好きだしそれ活かして仕事できるといいわね」
「は、はい……」
工藤さんの家から去り子供たちと手を繋ぎながら家に着くと戸が開いていた。
「おい、何してたんだよー」
「謙太さん、おかえりなさい……ちょっと近所の方のところに用事が」
「子供ら連れてかよ。それよりもなんだこの部屋。お腹空いて疲れて帰ってきてるのによ」
しまった……阿澄さんの世話を焼いている場合ではなかったと。
でもそこでへこたれてはならぬ! どれだけ専業主婦やってると思ってるんだ! と加奈子はワーッと動き出した。
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