第17話 仁那の改革。(付け足し分です)

 仁那はアニーの元に来てから少しづつ家の中の整理をすすめていた。


 仁那は初めにひたすら家の掃除にかかりっきりだった。レクターの姉という事もあり、アニーも学者肌の人間なのだろう。色々な書籍や標本などもがあるが、どれもめちゃくちゃに置いてある。


 二階には三部屋あるが、元々はそのうちの一部屋にアニーの寝室があったようだ。

 だんだんと増える荷物で、他の二部屋は今では完全に倉庫となり、1階のソファーでそのまま寝ていた。


 まず仁那は、ゴミなのか大事な物なのかの判断が出来ない。こまめに聞くが、アニーもそれが何なのかもわからないような物まである。


 この世界ではごみ処理業者の様な物は無い。生ごみは土に埋め、燃やせるものは燃やす。

 プラスティックの様な物が無いため、それである程度成り立ってしまう。金属などの再利用できるごみは冒険者ギルドで買い取ってくれる。


 この村の冒険者ギルドは田舎の村などでは良くあるタイプらしいが、商業ギルドとの提携を行っていた。その為ギルドに勤めている人間は二人いるのだが、片方は商業ギルドの所属の職員という話だった。



 物を一つづつアニーに尋ねながら捨てるものを出していく。燃えるものは近所の人達と共同で作ったという焼却炉を借りて、そこに次々に放り込んでいく。

 通常は皆がゴミをそこに放り込み、ある程度貯まると火を付ける感じらしいのだが、いきなり焼却炉が満杯になる。

 たまたまゴミを捨てにやってきた近所のおばさんがそれを見て目を丸くする。


「なんじゃ、そのゴミの量……」

「アニーが、古いものは捨ててしまおうって話になって……」

「はあ。ニナが来てくれてよかったよ。店の中も物だらけだものねえ」

「ははは……」


 仁那が火付け石をすろうと腰を下ろすと、おばちゃんが「こっちのが楽だよ」と魔法でに火を付けてくれる。生活魔法として着火位は出来る人は多いが、生活魔法でも得意な属性などがあるため特に気にせずやってくれる。


「まだあるのかい?」

「そう、ですね。もう少し出そうかと」

「これだけの量だと、灰も貯まるからね、こうやって……空気の通り道を作ってあげな」


 焼却炉の下には穴が空いており、そこにフックの付いた金属の棒を突っ込むようだ。燃えてたまった灰が空気の通り道を塞ぐと不完全燃焼をしてしまったりするようだ。


「ありがとうございます」

「あんたもがんばんな」


 おばさんは家に戻っていく。

 仁那は、たまに棒を突っ込みながら、のんびりと焼却炉の番をしていた。


 ……


「アニー。棚を作りたいのだけど」

「棚? なんでまた」

「荷物が全部床に置いてあるから。棚があれば縦に荷物を置けて、床が広く使えると思って」

「ふうむ……」

「カークさんが、作ってくれるっていうの。明日から来てもらっていい?」

「カークが? 話が早いね」


 カークは近所に住む大工の男だった。大工と言ってもこの村で新築の家なんてめったに建つことは無いため、普段は建物の修繕などを請け負っていた。当然棚を作ってくれと頼まれれば喜んで引き受ける。


 荷物を捨てたり、整理したりと、ようやく棚を設置する場所が出来始めたので、先日仁那が打診をしてあった。


「お金は、レクターさんのお金で十分足りそうだから、アニーは心配しないで良いですよ」

「心配って……。そのくらいアタシが出すよ」

「だけど、他に使いみちもないし。私が気持ちよく暮らすために勝手にやっていることだから……」

「ううむ……まあ、好きにするがいいさ」



 翌日から、早速カークがやってきて棚を作っていく。最初に二階の一部屋の周囲の壁を備え付けの棚を作ってもらい、そこを完全に倉庫として使う事にした。ちゃんとアニーの了承は取れている。

 だいぶ物も減っていたので、十分にその部屋に収まる。


 もう一つの部屋は、本棚を作り書籍などの資料を仕舞えるようにし、更にベッドを使えるようにした。毎日ソファーで寝ているアニーをベッドで眠る生活にさせたい。そう仁那は考えたのだ。


 どんどんと片付けられていく荷物。アニーの家はみるみるうちに居住空間が広くなっていく。最初は様子見をしていたアニーも家が綺麗になっていくのが嬉しいようで仁那の手伝いもするようになっていった。


 こうして一ヶ月ほどで、見違えるほど家はスッキリとする。


 食事の用意や洗濯など家事全般もこなしていたため、仁那は忙しい日々を送っていたが、それも落ち着き始めるとアニーは仁那に薬の作り方についての指導も始めていた。


「なるほど。出汁か」

「はい、色々試してみて、なんとなくこの世界の食材も分かってきました」

「本当になんでも出来る子だね」

「そんな事ないですよ。薬の作り方なんてまだ全然わからないですし」

「そんなもん、やっていけば直ぐに覚えるよ」


 食事もアニーは十分に満足していた。

 元々食にはそこまで興味のなかったアニーだが、仁那の作る様々な料理に舌鼓をうち、少しづつ食事を楽しむようになってきた。

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