大切なものはいつも

氷点下近い夜の終わりに

僕は一人空を見上げていた


縋るもんはいくつもある方が良いって

その縋るもんがなかなか見つからないもんだから

その「縋るもん」に固執していた

だからかいつまで経っても見つからなかった


でもほら見てみろよ

あの星々だって色んな色を纏って

独つや集まってるもんが見えるだろう?

あの独つに見える星だって惑星を纏ってるのさ


いつか彼はそう言い笑った

底冷えるような寒さの中

彼のそんな笑顔はどこか温かく

そんなもんなのかもなと独りごちる


それも遠い話で、そんな彼ももう居ない

昨日彼から結婚披露宴の手紙が届いた

僕はそっと欠席に印をつけて出してきた

彼の旅立ちに僕の湿気た顔は似合わないから


だが彼の言葉はずっと僕の中に

探し物はいつだって予期しない場所にある

大切なものはいつも簡単には見えない場所に

光るあの惑星が見えないように


何度も失敗して泣く度に彼は居た

そんな彼はもうやっては来ないのだ

だから僕は今一度足元を見る

いつだって大切なものは見えにくいから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る