喜捨の彼女
ピチャ
喜捨の彼女
喜捨、寄進――進んで社寺に寄付を行うこと。
私の傍にいる友人の中に、人に進んで施しを行う人がいる。
寄付箱があれば小銭を入れ、困っている人がいれば手伝う。彼女は助けたがりだ。
私から見ると、それは彼女の自己肯定感の形成に役立っているのではないかと思う。
救ってあげている自分に満足しているのではないのか、と。
時にはその性格が災いして彼女自身がトラブルに巻き込まれ、私たちが助ける羽目になる。
まったく厄介な友人だ。決して悪くない意味で。
しかし彼女に聞くと、本人は少し違う感覚のようだ。
彼女は優しいと言われることに違和感をもつ。優しくしようと思ってしているわけでないようだ。また、必ずしも相手を弱者と思っているわけでもないという。
弱者救済が一般的に褒められるべきなのは知っているが、彼女自身はあくまで自然に動いているようだ。
それを裏付けるように、彼女は自分に余裕がないときは頼ってくる。
いつものことだからこちらは巻き込まれていくのだけど、とても彼女が背負えるようなものではないトラブルまで持ち込んでくるから厄介だ。
中には彼女の影響で肥大化していて、私たちだけではどうしようもないことがある。
それでも彼女は、いつも一番に巻き込まれに行ってしまうのだ。
本人は無自覚だけど。
彼女は自分の価値を知らない。
せっせと人に施してしまう。本来は仕事になるはずのものを、サービスしてしまうのだ。
すると困るのは社会である。彼女の近くにいると、サービスで何とかなる分、働き手が必要ないと錯覚してしまうのだ。
それは雇用を妨げる。すなわち、人員の不足に気づかないという過ちを犯すのである。
会社は生産によって地域のニーズを満たし、雇用によって労働者のニーズを満たす。これで、社会は健康的に保たれるのだ。
自分が労働条件以上に「やらなければならない」ことがあるとき、それは他の人の仕事である。内部の人員でカバーできないときは、外注するか、専門の人を雇用するかだ。内部人員の専門性を見極めて動かねばならない。
であるから、彼女の得意分野、自分が出せる価値を知らないというのは、厄介である。
正しい評価のために、彼女は自分を知らなければならない。
彼女の周囲は健康である。だからこそ彼女は、自分が倒れるまでしてしまう「普通」を修正しなければならない。
彼女は、サポートに長けた女性である。
喜捨の彼女 ピチャ @yuhanagiya
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