束の間の休息
それから数日が経過し、私とルナは再びウィリアム様に呼び出されていた。
「二人共遅くなってすまない。やっと私の部下が彼らのリーダーが動く日の情報を掴んだ」
「いつでしょうか?」
ルナが少し急かすようにウィリアム様に問いかける。ルナは早くこの件を解決したがっていたから無理もない。
「ルナ、そう焦らなくても今から話すよ。彼らが動くのは明後日。場所は王都で一番有名な酒場魔女の森で落ち合う予定らしい」
「そこで取り押さえるのは難しいのではないですか?」
「そこで重要な話はしないだろうね。人混みに紛れてどこか別の場所で話そのものを行うと思うよ。オスカーが指示を出しているなら彼が行動を支持するための何らかの文書みたいなものを使者に持たせると思うから」
「では明後日に行動をするのですね」
「そうだね、今回も二人には戦力として協力してもらいたい。明後日の作戦にも参加して欲しい」
「私は構わないです、アリアも構わないですよね?」
ルナが私を信頼した目で見てくる。かなりの厄介事に巻き込まれているがルナの頼みを断ることはできない。
「そりゃルナが参加するっていうなら私も参加するよ」
「アリアくん、ありがとう。本当は君をこんなことに巻き込むのは間違っているのだろうけど強力に感謝する」
私の返答を聞いたウィリアム様が私に謝罪をしてくる。なんと頭まで下げてきた。
「あ、頭をあげてください、ウィリアム様! 私に謝るようなことはしていないじゃないですか」
「いや、今回の騒動は元は私達兄弟の諍いが原因のものだ。本来君のような無関係な人間が関わる必要はないものだったのに巻き込んでしまった。本当に申し訳ない」
「お兄様の言う通りです。私のほうからも謝罪します」
ルナまで頭を下げてきた。こういう空気は苦手……!
「ふ、二人共頭を上げてください。二人のせいで今回のことが起きた訳ではないから……私は自分を助けてくれている二人のために協力しているだけですから」
「本当にすまないな。魔導器のことといい、君にはいつも助けられている」
「いえいえ。そうと決まれば明後日は頑張りましょう」
なんとか気まずい空気を振り払って話を終え、私達は明後日に備えることになった。
*
明後日まで待機のような状態の私は久しぶりに王立図書館に向かっていた。ちょっと一人で図書館に籠もってゆっくりしたくなったんだ。最近慌ただしかったからね!
ただの平民なのに王子の暗殺計画阻止に動いているなんて正直自分の手に余るんだけどな。
私は本来本を読んでいろいろなことを調べて生活に役立てたりするのが好きだ。魔導器もそういったところから生み出された。おかげで大変な目に遭ったが後悔はあまりない。ルナのような人達との出会いにも恵まれたしね。
ぼんやりしながら王立図書館へと歩いて行く。王立図書館は王都の中心にあり、アーカイム王国最大の規模を誇っている施設だ。所蔵している書物も神聖術に関わるものでは貴重なものが多い。
図書館がある場所では自由な商売が許されており様々な身分の人間が経済活動を行っているため、貴族と平民の階級差があるこの国でも比較的それを感じない場所である。
今日は息抜きのつもりだから適当に面白そうな本を読んで時間を潰すつもりだけどね。
「あ、アリア様だ!」
街中を歩いていると道行く人に声をかけられた。私と同年代くらいの女性だ。
「こんにちは」
「今日はまた何処かへ行かれるのですか?」
「うん、久しぶりにお休みをもらったから王立図書館で本でも読んでゆっくりすごしたいなあと思って」
「まあ。それはそれはいいことでございます。王都の皆もあなた様のことを心配しているのですよ」
辺りを見回すと人が集まってきている。いつのまに……。
「皆、あなた様のことを慕っているのですよ。あなた様はどんな方の意見でも聞き入れて王女様や王子様に進言してくださった。いろいろなところが改善されているのを見れば分かります」
「……私はやれることをやっただけだよ」
「なにをおっしゃいますか。あなたが王女様と共に王宮で活躍している姿に励まされている平民達は多いのです、もっとご自分に自信を持ってください。二人はこの国の革命」
「……ありがとう、そう言ってもらえるのは嬉しいわ」
「はっ!」
話かけてきた女性はなにかに気付いたのか一歩下がり頭を下げてきた。
「申し訳ありません、アリア様にお会い出来たことが嬉しくて長話をしてしてしまいまし……」
「ううん、気にしないで。じゃあ私はもう行くね」
「いろいろ教えて頂きありがとうございました!」
彼女はいろいろ聞けて満足したのか満足そうに去っていった。
(正直、魔導器は自分の趣味で作っただけのものだし、最初は酷い目にあったけど)
少し感慨に浸りながら王都の並みを見渡す。今は昼なのでついていないが最近整備された街灯が並んでいる。これも魔導器から生み出したエネルギーを明かりに変えて明かりを生み出しているものだ。ルナと一緒に構想を考えていた頃が懐かしい。
「ま、必死に考えて世に生み出したものが人の役に立っているのを見るのは悪くないかな」
人のためになんてことは考えてこなかったけど、こういうのは悪くないと思いながら私は王立図書館に向かって歩き出した。
その後は特に大きなこともなく、ゆっくり本を読んで過ごしたため、久しぶりに気を抜くことが出来た休日だった。
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