尋問
襲撃者と捉えた私達は次の日に王都に戻り、尋問の結果を待つことにした。尋問に関しては私とルナは素人だったのでその結果を待つことにした。
尋問を開始して数日した後、私とルナはウィリアム様に呼び出され、彼の部屋に来ていた。
「二人共来てくれてありがとう。さっそくだが尋問の結果について話そうか」
「あの者達は自分達に命じたものの名前を言いましたか?」
「ああ。少しきつめに尋問したらすぐに依頼主を吐いたよ」
「それで彼らにお兄様の暗殺を命じたのは誰だったのですか?」
ルナのその質問にウィリアム様は頭を抱えて、溜息を付いた。
「予想通りだった。やはりオスカーが依頼をしたようだ」
「……聞きたくはない名前でしたが」
「ああ。だが彼らから名前が出た以上、無視をする訳にもいかない」
「その……オスカー様を捕まえたりはしないのですか? 暗殺の実行犯から名前が
はっきりと出た以上はそういった手段もとれると思うのですが」
「我々も彼らがオスカーから依頼を受けたと証言していることを伝えたさ。しかしオスカーはその繋がりをしめす物的証拠でもあるのかと開きなおった」
「相変わらず態度だけはふてぶてしいのですね、オスカーは」
吐き捨てるようにルナが弟への言葉を口にする。王族の中でもオスカー様は特に評判が悪い。
他の兄弟達と違ってオスカー様は王族の権限を振りかざして好き勝手に振る舞うのだ。
ウィリアム様もルナもそういうことは王族として駄目だと何度も窘めたが、オスカー様は聞く耳を持たなかったそうだ。三人が大きくなるにつれて交流は減っていき、ルナとウィリアム様は一緒に王国の改革を、オスカー様は貴族層と結託して二人に対して反発するようになってしまった。
「しかしこのままでは証拠を挙げられずオスカー様を裁くことが難しくなってしまいますよね。ウィリアム様はどうなさるおつもりですか?」
私の質問にウィリアム様は顎に手を当てて思案する。
「そうだね。彼を逃がしてしまうのは私としても避けたいところだ。彼が言っているようになにかしらの物的証拠を押さえる必要があるだろうね」
「……それなら私に考えがあります」
「ほう」
ウィリアム様が私の提案に興味を示す。あまり褒められた方法ではないがあれを使ってみよう。
*
「こんにちは」
襲撃の実行犯達が投獄されている牢に私は案内されていた。
「この前の女か」
「あれ? 私のこと知って……ああ、交戦した人か」
どうやらこの前私と戦った人らしい。なんたる偶然。
「なんのようだ」
「今回の尋問は私が担当することになったからここにいるだけだよ」
「? お前はそういったことを担当する人間には見えないが」
「そのとおり。ただまああるものを持っているからね」
私はそう言ってポケットから小さな袋を取り出した。中には綺麗な色の粉が入っている。続いて回りにいた獄卒に水の入ったグラスを持ってこさせた。
そのグラスに粉を入れ、囚人の男の側に行く。
「今、入れたのはなんだ……?」
「簡単に言うと人に暗示をかける薬。どんな人間もこれを飲むと質問に簡単に答えてくれるようになる。あまり使いたくはなかったけどあなた達のやろうとしてたことがことだしね。これを飲んでおとなしく私の質問に答えてもらうよ」
私はそう言って彼の口にグラスを押し当て、無理矢理中の水を飲ませた。水を飲んだ彼の瞳はとろんとしてまるで意思を感じない人形のように全身からも力が抜けていた。
「さあ、私の知りたいことに素直に答えてもらおっか」
私はにこやかに笑って質問を始めた。
*
私は捕らえた刺客に質問を終えた後、ウィリアム様の部屋に来ていた。
「しかし君はこういうことも出来たのだね。少々驚いているよ」
「まあ、あの薬はいろいろ魔導器を研究していた時の偶然の副産物といいますか……。倫理に問題がありますので基本的に発表はしていません。知っているのはルナくらいです」
そうあの薬は偶然私が魔導器の研究をしていた時に生み出してしまったものなのだ。もちろん最初の被験者は私。効果が思った以上に絶大で使い方を間違うと非常に危険なものなため、二人だけの秘密にしていた。
「私も様子を見ていたがあれだけ強力な効果があるとまずいことにも使えそうだね」
「はい。だからルナと私はあの薬に関しては二人の間に留めておきました」
「二人がきちんとした倫理感の持ち主で助かったよ。これがそういったものに欠けた倫理感の持ち主が見いだしていたらよからぬことに使われていただろうからね。さてルナ君が薬を使った結果に関しては……私達が望む情報が手に入ったというところかな」
「そうですね。定期的に彼らのリーダーがある人物に会っていると。それが月に2回だそうです」
「ならその時を狙って証拠を押さえてしまえばいいということですね」
私とウィリアム様の会話を聞いていたルナが結論を述べる。
「そうだね。その現場を押さえれば証拠も出てくると私も思う」
「やることは決まりましたね。でも現場がどこかまでは彼も知ってはいなかったのですよね?」
「うん、それはね。末端の構成員だから流石にそこまでは把握していなかったみたい」
「その点に関しては心配ないさ。オスカーと捕らえた彼のリーダーの監視を私の部下に任せてある。後は彼らがいつの日に動くかを把握して取り押さえに動くだけだ。部下からの知らせを待とう」
ウィリアム様の発言にルナと私は頷き、彼の部下からの報告を待つことにした。
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