第27話 賊との対決……あれ? 意外と……。
「ハダス様! こちらへご避難ください」
「どうしたんだ? カルヴィ」
そこに現れたのは執事服を着こんだ初老の男性だった。
ハダスの護衛兼執事といった感じなのだろう、屋敷の中では護衛以外には剣の帯刀が認められていなかったけど、カルヴィは剣を所持していた。
「門の方に荒人が現れたようで、念のため警備が向かっています」
「それほど、心配することはないだろ」
「はっ。ですが、一応終わるまでお部屋の方へご避難頂けないでしょうか? もちろんご友人もご一緒に」
「それなら、みんな行くか」
カルヴィの後ろに続き、みんなでついて行く。
私はマッシュが抱っこしてくれている。
「だう」
ラッキーに不安を口にする。
なんだかわからないけど、胸騒ぎがするのだ。
アルフも私の周りを忙しく飛んでいる。私の不安が移ってしまっているのか、できるだけ平常心を保つようにする。できれば誰にも怪我をして欲しくない。
『ごしゅじん様大丈夫ですよ。賊はいつでも捕獲できます。ただ、どのような目的なのかだけ確認します』
ラッキーがアホじゃないということは、やっぱり事態はあまり良くないのかもしれない。
私たちが連れて来られたのは、来賓たちは普段立ち入らない予備の部屋だった。
「カルヴィ、もう少しまともな部屋はなかったのか? 僕はこれでも第三王子でギルバートはこの国の第二王子なんだぞ」
「だからなんなんだ? お前のわがままに付き合ってここまで来てやったが、お前はここでギルバートを殺して戦争の引き金を引くんだよ」
「カルヴィ、何を言っている?」
「まだ、わからないのか? 俺はカルヴィなんかじゃない」
カルヴィが自分の首の下へ手を入れると、自分の顔を剥がす。
その下に現れたのは、コウノトリのような顔をした亜人だった。
「私の名前はブルパス。子供たち初めまして。そして巻き添えになったあなたちは運がないお馬鹿さんたちはさよなら」
ブルパスは帯刀していた剣を抜くと、いきなりハダスへ斬りつけた。
その剣の速さは、人の目で追えるものではなかった。
そう、人の目では……。
『ごしゅじん様、狙いはこいつだけみたいなので、置いて逃げますか?』
狙われたハダスを咥えて放り投げ、助けてくれたラッキーだけど、私がどう答えるかわかっていて聞いている。じゃなきゃあんなに尻尾をバタバタと嬉しそうに振っているわけがない。
「だう」
もちろん答えは否だ。
『さすがごしゅじん様、可愛いだけじゃなくて優しさもあって最高です』
「ちょっと面倒だな。まさか狼犬にこれほどの忠義心を持った奴がいるとはな。だが、俺一人じゃないとしたらどうする?」
ブルパスがパチンと指を鳴らすと、ハルバスの影から骸骨騎士たちが召喚される。
「みんな、悪い。狙われているのは僕だけだから、僕を置いて誰か大人を呼んで来てくれ」
「だぅ」
まったく何を言っているのか。ここでの最年長は私だ。
私がここを抑えるからみんなに逃げてもらうしかない。
アルフ! みんなを守るのよ。
私たちを守るために光の盾が出現する。
他のみんなももちろん逃げる様子はなかった。
「はぁ、ハダスそんなことできるわけないだろ? 俺たちが逃げて、もし転んでサーシャが怪我したらどうするつもりなんだ」
「サーシャさんを怖がらせた罪は万死に当たりするね」
「今日はね、私の可愛い妹のお披露目会なのよ。それをこんな奴らに邪魔されたなんて許せない」
「何を言ってるんだ。いいからサーシャを連れて逃げろって!」
「この光の盾は……。さすが王室の関係者だな。魔道具で発生する盾持ちがいるってことか。だが、守るだけでは勝てないぞ。お前たち、子供たちを蹂躙しろ」
ギルバートもマッシュもマーガレットもやる気になっているが、さすがに誰か大人を呼びに行った方がいい気もする。
ラッキーは……あれ? 意外と大人しい。
「私は命ずる。炎の鳥よ。私の敵は汝の敵となり、その炎は骨すら残さない。焼き払へ」
「僕は命ずる。木人形よ。サーシャに危害を加える愚か者たちに制裁を」
「俺は命ずる。氷の獅子よ。今こそ我の守るべき人のためにその牙で裁きを与えよ」
マーガレット、マッシュ、ギルバートの魔法が部屋の中で大爆発する。
いや、ちょっと待って。アルフ部屋の中が破壊されないように守って。
お父さんとお母さんごめんなさい。窓ガラスは許してください。
爆発の力はどこかへ逃がさないと大変なことになる。
相手が召喚した骸骨剣士は骨も残らず消え去り、ブルパスは全身が傷だらけになった状態で外へと飛び出していった。
部屋の中は……良かった。あまり傷ついていない
「なんなんだお前らのその力は。子供が使う力ではないぞ。それにこの部屋。これだけの力が発動したのに……。そうか、もしかして嵌められたのは私のほうだったということか」
光の盾に守られた私たちは窓ガラス以外無傷だ。
別に深く考えたわけじゃないけど、結果オーライということだろう。
光の盾、持ってくれて良かったよ~。
ラッキーにいつもパリン、パリン割れるからもたないかと思ったけど、まだみんなの魔法が弱かったから威力を相殺してくれたみたいだ。
「多勢に無勢では不利か。ここは一度引かせてもらう」
「だう」
なんでこういう人たちは、なんでも自分たちがペースを仕切れると思っているのだろう。
これだけの破壊をしたら、普通は弁償をするとかって考えないのだろうか。
ラッキーがブルパスへと飛び掛かる。
「こざかしい犬だ」
『犬ではない。誇り高きフェンリルだ』
いや、いつも犬だったじゃん。ってツッコミはおいといて、ラッキーの動きにまったくついてこれないブルパスはそのまま地面へとねじ伏せられた。
ふぅこの割れた窓の言い訳をどうするかだね。
まぁ、そこはカッコイイお兄さんとお姉さんたちにお任せしよう。
「バブ~」
私、ほらまだ話せないし。
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