第12話 時代を超えて繋がれるレティの優しさの連鎖
「魔獣王フェンリル様がお呼びになっている」
「行かなきゃ」
「みんな行こう」
「僕たちを必要としている」
「美味しく食べてもらえるかな?」
「全員で行くと迷惑?」
「よし、まずは様子見に少しだけ行こう」
「そうだ。必要ならまた呼んでもらえるはずだ」
そこはラッキーが閉じ込められていた魔法障壁の中。
ラッキーに育てられた牛や豚たちは、ラッキーの優しさに包まれ守られながら育った。
それはレティがラッキーにしたことをそのまま実践しただけだっが、レティの思いは世代を超えて受け継がれていた。
森の中には食事とは関係なく襲ってくるような怖い魔物が多い中、ラッキーは必要以上に彼ら食べることもなく、レティから教わった周りに優しくすることをひたすら実践して教えていった。
弱ければ何もすることもできず死ななければいけない。
だけど、強ければいいわけじゃない。
強くて尚且つ、心優しくならなければ生きてる意味はないと言い切った。
ラッキーはいくら心優しくても、それと同時に守れなかった辛さから、生き抜くための力をつけるようにも教えた。
ラッキーが住処にした場所には自然の回復の泉があったこともあり、多少の怪我なら治すことができたため、怪我を恐れずにお互いが切磋琢磨し戦い続けた。
いつしかラッキーの教えへ浸透し、全員の目的は一つだった。
『自分よりも弱い者がいたら守れるように』
相手が強いかどうかで戦うのを決めるのではなく、自分の中の正しいさを守るために力を使えるように、日々成長していった。
家畜たちはそれでいて、いつかラッキーに食べられることが喜びだと感じるようになっていた。
一種の矛盾。
食べられるために強くなる。
今まで死ぬことに理由がなかった家畜たちにとって、それは絶対逆らうことのできない神の声のようなものだった。
ラッキーはそこまで考えていなかったが、優しさだけを教えていった結果、弱い牛や豚を相手にしながら手加減の方法を学んでいった。
それは長い年月の中で徐々に独自の生態系へと変わっていった。
見た目は牛や豚と変わらないまでも、中身はラッキーから思いやりと優しさと武力を知った最強の家畜になっていた。
その数はおよそ10万。
今ではその森の中は家畜たちの勢力によって支配されていたが、そのことを外部の者で知る者は誰もいなかった。
元々、ラッキーを閉じ込める豊富な土地もベネディクト家の力を裂くために回復魔法協会が無理矢理奪い取ったものだったが、今回はそれがいい方向へと向かうことになった。
あくまでもそこの土地はベネディクト家の資産であり、その土地に放牧してきたのも長年ベネディクト家が育てた牛や豚だった。
結果だけ見ると自分の領地に放牧していた牛や豚が勝手に増えて、勝手に戻ってきたのだ。
家畜たちはラッキーの声を聞いてすぐに動き出した。
できるだけ強くて足の速い家畜5千匹が一斉に魔法障壁を破って、ベネディクト公爵家へと向かう。
「フェンリル様の元へ急げ」
「今までの恩を返すんだ」
「今度は僕たちは守るんだ」
レティの優しさはラッキーへと受け継がれ、その優しさが家畜たちへと繋がり、その結果、ベネディクト家を救うことへと繋がっていった。
家畜たちは急ぎながらも途中で人へ迷惑をかけることなく、整列するように進むその姿を見た人々は神の奇跡だと言った。
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