第160話 ひと段落
魔族の男に質問をする。
「それじゃあ最初の質問ね。お前はどうして王族を襲おうとしたんだ? 実は僕、前にも魔族と戦ったことがあってね。そいつもアウリエル……王女を殺そうとしたんだ。あるんだろ? 王族を殺したい理由がお前らには」
「……貴様に話すことなどない」
「お前に話すことがなくても、こっちは聞きたいことが山ほどあるんだ。嫌だろ? 魔族だって拷問されるのは」
じろりと縛られた状態の魔族を睨む。
しかし、魔族の男は表情を変えたりはしなかった。
たとえ拷問されても何も言わないという意思が見える。
「……やれやれ。ディランさん、どうやら彼の意思を挫くのは難しいかもしれません」
目を見ればわかる。
この手のタイプは絶対に情報を吐かない。恐らくね。
「そのようだな」
背後に立つディランが真面目に返答する。
ズカズカの魔族の前に立った。
「しょうがねぇ。時間ももったいねぇし、あとはこっちでなんとかするわ。コイツの能力はお前のスキルで制限してるんだろ?」
「はい。今の状態ならたとえ暴れだしてもディランさんが勝ちますよ」
「了解了解。じゃまあ、痛々しい手段は俺に任せておけ。お前、実は拷問とか慣れてないだろ?」
そう言ってディランが魔族たちをまとめて担ぎあげる。
もうひとりのリーダー格の男と女も一緒だ。全員運んでくれるらしい。
ズカズカと高笑いをしながら、ディランは謁見の間から消える。
たぶん冒険者ギルドに行ったのかな?
残されたのは僕ひとり。
カッコつけた手前、秒で話が終わって気まずかった。
誰もいなくてよかったね……。
「さて……一応、問題は解決したし、僕も一度屋敷に戻るか」
本当はアウリエルと離れたくはないが、屋敷に残したソフィアたちのことも気になる。
レベル3000の状態で探知スキルを使ったかぎり、屋敷にいる四人は無事っぽいけど。
きょろきょろと周囲を一瞥したあと、静寂に包まれた謁見の間から外へ出る。
最悪、アウリエルが死んでも蘇生できる。
あとは近衛兵に任せた。
帰路に着く。
▼△▼
王宮を出て屋敷に帰ってくる。
すると、入り口をくぐった先のホールに四人が集まっていた。
僕の姿を見るなり慌ててこちらにやってくる。
「マーリン様! ご無事でしたか!」
開口一番にエアリーが口を開く。
「ただいま、エアリー、ソフィア、ノイズ、カメリア。待たせてごめんね?」
「ぜんぜん待ってませんよ。むしろ、もう王都は大丈夫なんですか? 外から聞こえていた爆発音も消えましたし……」
「それについてはリビングにでも行って話すよ。ちょっと喉が渇いたから飲み物をいいかな?」
一緒に近付いてきたメイドに飲み物を注文する。
彼女は一礼するとすぐにキッチンのほうへと向かった。
それを見送って僕たちもリビングへ行く。
それぞれがソファに腰を下ろし、僕の話に耳を傾けた。
「…………とまあ、そういう事あったんだ」
「テロリストの襲撃……ですか」
「外ではそんな大規模な騒動が……それに、また魔族……」
「マーリン様がいなかったら大変でしたね。国王陛下も死んでいたでしょうし」
ソフィア、ノイズ、エアリーの順番に感想を口にした。
実際、国王陛下は一度死んだ。
僕がいなかったら、本当にこの国は終わっていた可能性がある。
「その魔族の話、私はぜんぜん知りませんけど……え? マーリンさんってドラゴンにも勝っちゃうんですか?」
「そう言えばカメリアにはまだ伝えてなかったね。ドラゴンくらいならなんとかなるよ」
「普通、なんとかなるような相手じゃないと思いますが……」
「マーリンさんは最強なのです!」
ノイズが過剰に僕を褒めてくれた。
その隣でソフィアとエアリー姉妹が、「うんうん」と言いながら首を縦に振っている。
最強はどうかは置いといて、まあ相手もレベル3000くらいのドラゴンだったしね。
「——あ、そうでした。アウリエル殿下も無事ですか?」
「アウリエルかい? 無事だよ、ソフィア。彼女の場合は傷ひとつ負わなかった」
「よかったです……いえ、国王陛下が一度は死んだのですから、殿下の内心を察するべきですね」
「ソフィアがそれを言うのかい? ソフィアだってこの前危ない目に遭ったんだ、決して他人事じゃないよ」
「私は……不死身スキルがあるので」
「それでも傷つくのは見過ごせない。絶対に僕は守る」
もう二度とあんな苦しみは抱きたくない。
もちろん僕ひとりができることには限りがある。
常時彼女たちを守ってあげられるわけではない。
だが、そういう覚悟で臨む。
それに、今の僕には死者を蘇らせるスキルもある。
最悪の事態はほとんど回避できるだろう。
「はいはい! 私もマーリン様に守ってほしいです!」
「ノイズは守り守られたいです!」
「私は……えへへ。守られたいですね、やっぱり」
エアリーとノイズ、カメリアまでもが話に乗ってきて、リビングはみんなの喧騒で満たされる。
それを見ていると、全部終わったんだなって思った。
———————————
あとがき。
新作
『原作最強のラスボスが主人公の仲間になったら?』
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