第159話 復活
倒れた国王陛下に触れる。
国王陛下からは命の流れを感じなかった。
確実に死んでいる。
だからこそ、僕は小さくその名前を呟いた。唱える。
「——死者蘇生」
おおよそ、この手の命に干渉するスキルはどの世界でも禁忌とされる。
理由は、命は尊いものだから。
僕にはその価値観はわからない。
死者が蘇ることで生まれる不利益を知らない。
今はただ、大切な人の大切な人を助けたいと思った。
あとあと発生する不利益は無視する。
全身から膨大な魔力が抜け落ちた。
手のひらが黄金色に輝く。
「こ、この光は……」
光はさらに強さを増していき、わずかに視界を覆った。
すると今度は、光が白い羽に変わる。
天使の羽を彷彿とさせるそれは、周囲に飛び散り空間を埋め尽くす。
まるで祝福されているかのような光景が広がり、徐々に光は小さくなって集束する。
手のひらサイズの光が国王陛下の体の中に入った。
心臓部分とぴったり重なり……ドクンッ!
なぜか僕にその鼓動が聞こえた。
ドクドク……ドクドク。
間違いない。国王陛下の心臓が動き出している。
しばらく時間を置いて国王陛下を見守っていると、やがて陛下の瞼がゆっくりと開いた。
おぼろげながらもこちらを見る。
「……お、まえ……たち……?」
ぎこちない声だ。
復活したばかりで意識が朦朧としてる。
しかし、国王陛下はたしかに復活を果たした。
それを見たアウリエルが、ぽろぽろと涙をこぼす。
「お父、様……! お父様!」
がばっと彼女は父親に抱きつく。
いまだ状況を正しく理解できていない国王は、大泣きを始めたアウリエルに困惑していた。
だが、父親らしく彼女を抱きしめてあげる。
広間にはしばらく、アウリエルの泣き声だけが響く。
僕もディランも、それを見てただ笑顔を浮かべた。
よかったね……アウリエル。
▼
国王陛下が復活して三十分後。
涙を枯らしたアウリエルの懐で、国王陛下は眠りについた。
恐らく死者蘇生による影響だろう。
さっきまで死んでいたことを踏まえると、気絶するように眠った陛下の反応は正常に見える。
だから陛下の心配もほどほどに、僕はその場を立ち上がった。
「ひとまずこれで陛下は大丈夫そうだね。アウリエルは陛下を部屋へ連れていくといい。護衛の騎士はまだ残ってるかな?」
探知スキルを使って王宮内部の様子を探る。
数名、魔力を持った人間の反応が見つかった。遅れて広間のほうへ何人もの騎士がやってくる。
「タイミングばっちりだね。彼らと一緒に陛下を部屋へ。探知したかぎり、近くに怪しい人はいないと思うから」
「マーリン様、ありがとうございます。この恩は必ず……!」
「気にしないで。僕はただ、アウリエルの笑顔を守りたかっただけだから」
にこりと笑ってアウリエルを見送る。
彼女は陛下をお姫様抱っこして広間を出て行った。
今後、陛下をからかうネタが見つかったね。別に何もしないけど。
「さて……ディランさん、まだ動けますか?」
「ん? おうとも。俺はこのとおり元気だぜ? アウリエル殿下に傷を治してもらったからな」
アウリエルがいなくなったことで魔族から情報を仕入れることができる。
さすがに尋問や拷問してる様子を彼女に見せるのは忍びない。
その点、慣れていそうなディランに協力を求める。
「でしたら魔族から情報を取ります。僕のスキルで魔族を事前に弱体化させるので、念のため反撃に注意してくださいね」
「了解了解。俺も聞きたいことがあるからな。一緒に頑張ろうや」
パンッとディランが拳を鳴らし、僕たちは同時に倒れた魔族を見る。
最初に封印スキルを使って魔族を弱体化させると、頬を何度かビンタして無理やり起こす。
何度か殴っていると、魔族は目を覚ました。
「————ッ!? こ、ここは……」
「あ、起きましたね。おはよう、魔族。状況わかる?」
「お前は! クソッ!」
僕の顔を見た途端、魔族の男は暴れようとする。
しかし、起きる前に鎖で体を縛っておいたのでまともに動けない。
封印スキルの影響で、今のコイツはディランさんより弱いからな。
「なんだ? どうしてこんな鎖ごときを……!?」
「千切れないのが不思議か? お前みたいな奴をそのまま放置できるわけないだろ。僕のスキルで能力を制限してる。今のお前はディランさんでも片手で捻れるくらい弱いんだよ」
「能力を制限してるだと!? 貴様……封印スキルの持ち主か!」
「おや? 僕のスキルをよく知ってるね。正解。じゃあ今度は僕たちの質問に答えてもらおうか? お互いに平等でいこう」
膝を突いて相手に目線を合わせる。
手にはディランに借りたひと振りの剣が。それを魔族の体に当てて訊ねた。
「それじゃあ最初の質問ね。お前はどうして王族を襲おうとしたんだ? 実は僕、前にも魔族と戦ったことがあってね。そいつもアウリエル……王女を殺そうとしたんだ。あるんだろ? 王族を殺したい理由がお前らには」
———————————
あとがき。
新作
『原作最強のラスボスが主人公の仲間になったら?』
現在かなりいい調子でございます!応援してくれた人、ありがとうございます!!
よかったらまだの人も応援してね⭐︎
作者のモチベーションに繋がりやす!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます