第158話 新たなスキル

 魔族が呼び出した謎のドラゴンは討伐した。


 急いでぶっ飛ばした魔族のもとへと向かう。


 探知魔法のおかげで、魔族がどこにいるかはすぐにわかった。


 レベル5000もの脚力で反応があったほうへ走ると、地面に倒れた魔族の姿を発見する。


「——お、いたいた。どうやら傷が再生する前に終わらせちゃったらしいね」


 魔族は、まさか僕が戻ってくるとは思ってもいなかったのだろう。


 こちらを見上げるなり驚愕を浮かべる。


「き、貴様……ど、どうやって俺のドラゴンを!?」


「普通に体をぶち抜いてスキルでドパンッ! だったけど」


 あれくらいの敵なら別にそんな苦戦はしない。


 強さの基準で言うなら前に戦った魔族より少し強いかも? くらいだ。


「ば、化け物め……! なんなんだお前は! 本当に神の使徒とでも言うのか!?」


「いやいや。僕自身はそれ認めてないし、信者が勝手に騒いでるだけさ。僕はただの一般人。たまたま力を持っただけのね」


 厳密には転生者だけど。


「ふざけるな! 貴様のような一般人がいるかぁ——!」


 魔族はある程度傷が回復したのか、勢いよく爪を尖らせて僕を襲う。


 最初から勝てないとわかっているだろうに。


 その攻撃をかわして背中を殴りつける。


 今の僕の攻撃を受ければ、ドラゴンより弱い魔族はたったの一撃で意識を失う。


 辛うじて即死を免れた魔族は、体をぴくぴく震わせながら白目を剥いていた。


 魔族を担いでさっさと王宮のほうへと戻る。


 僕にはまだやらなきゃいけないことがあった。




 ▼




 魔族を担いだまま走って王宮に戻る。


 すでに残った賊はディランにやられていた。


 魔族さえいなければ、ディランひとりでも十分だったらしい。


 前に互角だったという話を聞いたから不安はあったが、ディランの成長速度は相手をはるかに上回っていたようだ。


 アウリエルに治療してもらったのか、ディランの傷は塞がっていた。


 僕が戻るなり手を振って話しかけてくる。


「お! 戻ったかマーリン。しっかりと魔族も殺したようだな」


「殺してませんよ。気絶させただけです。コイツには後で聞きたいことがあるので」


「訊きたいこと?」


「はい。なんで王都を襲ったのか。なんで王族を殺さなきゃいけないのか。訊きたいことは山のようにあります。ディランさんもそうでしょう?」


「ううむ……俺はそういうのは苦手でな。普段は副ギルドマスターに任せている」


「なら後でその人を呼んできてください。……それはともかく」


 魔族を地面に降ろして、国王陛下のもとへ行く。


 そばにはアウリエルの姿があった。


「遅くなってごめん、アウリエル」


「マーリン、様……よくぞご無事で……」


 彼女の目元は真っ赤に腫れ上がっていた。


 僕が魔族やドラゴンと戦っている間に大泣きしたのがわかる。


 彼女のそばまでいって膝を突く。


「ああ……こんなに泣いて。かわいい顔が台無しだよ」


「す、すみません……さすがに、わたくしも気が動転して……」


「謝らないで。アウリエルは何も悪くない。悪いのは全部アイツら魔族だ。そして相応の報いを与えると約束しよう。その上で、ここからは僕の出番だ」


 にこりとアウリエルに微笑みかけてから、僕は『スキルリスト』を開く。


 これを開くのは割りと久しぶりな気がするね。


 僕は常に最強クラスだから、あんまりスキルを取ったりしていない。


 素手でドラゴンだって魔族だって殺せるから。


 しかし、そんな僕でも解決できないことがある。




 ——死者蘇生。




 それだけはレベルが10000あっても不可能だ。


 スキルを頼らざるを得ない。


 だから神に願う。


 死者を蘇らせるためのスキルを。




 しかし……。


 いつもなら僕がスキルを願うだけで、そのスキルを神が選んでくれた。


 本当に神かどうかは知らないが、今回もそれに期待していた。


 だが、スキルリストは動かない。


 まるでそんなスキルはないと言わんばかりに。




 ——ふざけるな。そんなこと僕は許さない。




 レベル10000もわざわざ与えてくれたのはなんだ? 俺に幸せな人生を送ってくれってことだろ?


 だったら協力しろ。手伝ってくれ。人をひとり、ただ助けるだけなんだ。


 一度でもいい。制限があってもいい。僕の寿命を分けたっていいから、さっさとスキルを寄越せ!!


 吠えるように内心で叫んだ。


 怒りを撒き散らすように願った。




 すると、スキルリストが小さく光る。


 ゆっくりと画面をスクロールさせていき、ひとつのスキルが生まれた。


 これまでとは違う。なぜかスキルの文字が輝いていた。


 ——死者蘇生スキル。


 恐らく新たに何者かが作ってくれたと思われるスキルの名前が、そこには表示されていた。


 クリックする。そして習得。


 最初からわかっていたかのように、死者蘇生スキルの効果を僕は知る。


 必要なのは大量の魔力。そして馬鹿高いINTのステータス。


 両方僕は持っている。


 だから、神に感謝しながらその名前を呟いた。唱える。




「——死者蘇生リザレクション




———————————

あとがき。


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