第14話 スキル『封印』
目のまえに例の説明ウインドウが表示された。
半透明の青白い画面には、白い文字でハッキリとこう記されていた。
——≪封印≫スキルを取れ、と。
その言葉の意味がなにを示すのか、いまの状況とスキルの名前からなんとなく察しがついた。
問題は、どうやって神様が言う≪スキルリスト≫とやらを開けばいいのか。ステータスと同じ要領なら、それを意識すれば出てくるのかな?
ものは試しと念じてみる。
すると、僕の想像どおりに新たなウインドウが出現した。ステータスと同じくらいの大きさを誇る正方形のウインドウ。そこには、ずらりと多種多様なスキルの名前が並んでいた。
「お、おぉ…………」
あまりの壮大さに思わず言葉を失った。同時に、この中から特定のスキルを探すのは骨が折れそうだとも思った。
一画面だけにスキルが収まってるならともかく、新たに現れたスキルウインドウの右側に不自然な横棒と上下の印が見える。これはあれだ……パソコンとか携帯の画面に出てくるスクロールのアレ。
正式名称は覚えていないが、要するにまだまだスキル画面には続きがあるってことだよね?
せめて検索機能くらいは付けてくれよ……。内心でそう愚痴りながら、ひとつずつスキルを探そうと視線を上へ伸ばす。その瞬間。
「————!?」
突然、勢いよくスキルリストの画面が下へスクロールされた。
ぎゅんぎゅんと白い文字が下から上へと消えていき、やがてぴたりと止まる。次いで、やや右下のほうで緑色の線が見えた。
まさか、と思いつつそちらを確認する。やはりというかなんというか、着色されていたのは——≪封印≫のスキル名。
ある意味で検索機能はあったらしい。もしくは、今回は教えてあげたから特別なのか。
どちらにせよ、時間と手間が省けたことを喜ぶ。
急いでスキルを取得した。
『封印スキルを獲得しました。SPを4消費します。続けて、封印スキルのレベルを上げますか?』
「スキルのレベル……?」
そんなもの……ああ、たしかにあったな。
思い出してみると、僕のスキルの横にも≪Lv≫という表記があった。だが、間違ってなければその表記に数字なんて書いてなかったような……。
気になったのでステータス画面を開く。
スキル欄を確認すると、僕の記憶どおりそこにはスキルレベルなんてものは書いてなかった。これは0なのか上限なのか。それもついでに教えてください神様。
『スキルレベル≪Lv-≫とは、個体名マーリンに与えられた転生特典のひとつ。上限を示す数値と同じ』
「……なるほど。ありがとう」
迅速な回答に感謝する。
やっぱり僕の初期スキルはすべてレベルMaxだった。であれば、ひとまず封印のスキルも最大まで上げておくか。
これが僕のステータスを下げる類のものなら、上げておいて損はないだろう。
ただひたすら心の中で「MaxMaxMax」と念じる。
『SPを消費してスキル≪封印≫のレベルを5にしました』
お。どうやら問題なかったようだ。
しかし、封印のスキルレベルは5が上限か。それともすべてのスキルがそうなのか。またスキルを取る機会があったら検証してみたいな。
——それはそうと、早速。僕は封印のスキルを発動させてみる。
スキルを覚えたおかげで、どうやって使えばいいのか即座に理解した。自らの体に触れてその名を唱える。
「——封印」
薄っすらと紫色に発光する鎖が、僕の右手から伸びて全身を縛りあげる。
痛みはない。すぅっと体内に鎖が沈んでいき、遅れてわずかに体が重くなったような気がする。
形容しがたい状態だ。明確になにかが違うとは言えないが、なにかしら変化があったことだけはわかる。
ちらりと開きっぱなしのステータス画面を覗くと、そこには衝撃的な数値が表示されていた。
———————————————————————
名前:マーリン
性別:男性
種族:ヒューマン
年齢:20歳
Lv:5000
HP:250000
MP:150000
STR:15000
VIT:15000
AGI:15000
INT:25000
LUK:20000
スキル SP:49960
≪異世界言語Lv-≫≪鑑定Lv-≫≪インベントリLv-≫
≪女神の加護Lv-≫≪封印Lv5≫
———————————————————————
「……半分も下がってる!」
10000だったレベルが5000まで落ちて、各種ステータスが同じように半減した。
これなら先ほどより多少はマシになるか? 五十歩百歩な気もするが……というより。
「もう一度使えないのかな? ————≪封印≫!」
体に触れたままそう叫んでみる。すると。
——じゃらじゃらじゃら!
再び紫色のオーラを纏った鎖が現れ、まったく同じように全身を縛った。
吸い込まれていく鎖を見送ってステータスを調べる。
———————————————————————
名前:マーリン
性別:男性
種族:ヒューマン
年齢:20歳
Lv:3000
HP:150000
MP:90000
STR:9000
VIT:9000
AGI:9000
INT:15000
LUK:12000
スキル SP:49960
≪異世界言語Lv-≫≪鑑定Lv-≫≪インベントリLv-≫
≪女神の加護Lv-≫≪封印Lv5≫
———————————————————————
……どうやら、重ね掛けは可能らしい。
降って湧いた光明に僕はしがみ付く。
にやりと笑って、限界まで自分のステータスを落とし始めるのだった。
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