不法侵入?

 ふと母に、「退院の連絡もなくて来ない兄貴と、連絡をしない母親。どっちが薄情なんだろうね」と言ったんです。

 兄はよく、人のことを薄情だと言うので。


 そしたら……。

「先月辺りだったかな。朝の五時頃、階段でバッタリ会ったのよ」

「?」


 どういうこと?

 兄は結婚して家を出ているのに、階段で?


「荷物を置きに、朝早く」

「……連絡も無しに?」

「そう」

「不法侵入っていうんじゃないの? それ」


 どうも兄の中で、実家=自分の家。だから、勝手に入ってもいい。何をしてもいい。という認識らしいのです。


 私の中では、もう別の家という認識なのですが、違うのでしょうか。

 いくら実家でも、連絡も無しに、家人に知らせることなく家に入るのは、泥棒と同じことだと思うのですが、違うのでしょうか。

 大事なことなので、二度言います。


 これって、不法侵入ではないのでしょうか!


 あと、家にいないはずの人間が、朝突然現れただけでもホラーだと思いました。

 いくら頭が働かなくても……。


 兄は怒られると思ったのか、さっさと帰ったようです……。けれど、人の知らない所で、そんな恐ろしいことが起こっていたとは。


「なんで教えてくれなかったの!」

「あんたの転職でバタバタしていたから忘れてたんだよ!」


 心配をかけたのは分かるけど……。

 人が寝ている間に、兄が荷物を置きに勝手に家の中に入って来た、と思ったら気持ち悪いわ!


「何で常識がないんだろうね」

「ウチの身内は、そういうの沢山いるから」


 諦めろ、と言われました。

 その血が自分にも流れているのかと思うと、また気持ち悪いです。


 昔、全身の血を抜いて、別の血を入れたい、と思ったことがあります。

 つまり何が言いたいかというと、血の繋がりを否定したいんです。

 

 だって、憲法でも法律でも、縁を切れるものはないんですよ。

 調べてもなく。自伝小説でヒントを得ようとしても、見つかりませんでした。

 結局、双方の同意がなければ成り立たない、というもの。


 渋沢栄一の自伝小説に、「勘当させてください」と父親にいう場面があるんです。

 思わず母に「先駆者がいるよ!」と嬉々として言ったら、

「相手が同意していないし、結局その家から縁を切られていないじゃない」

 そうでした。

 大河でご覧になった方もいると思いますが、切られていませんよね。


 縁を結ぶ法律よりも、切れる法律を作って欲しいです。

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