第208話 惑星リラを救え!-夢の変身-

 皆の様子をみて俺はさすがに全力を控えたのだが、それでもプトレは驚いていた。


「だって、第二神だし」久々の大きな神力行使に十分な手ごたえを感じた俺は満足して言った。


「あっ、そうか。そうだよな。それもあるな」呆気に取られて思考停止していたプトレが、再起動して言った。

「けど、最後の四名を除いて、これなら一名だけでも十分軌道修正できるんじゃないかな?」


「あ? そうか? それほどか。うん、やっぱ過剰戦力だったか」


「ああ、さすがに一名だと無理かな。でも、慎重に計算すれば十分可能だろうね。もちろん君の場合は全然余裕だけど」

「やっぱりか。じゃ、後のみんなは見物してもらうか?」


 なんだか気が抜けた。簡単なミッションだったか?


「えっ? 違うんじゃないの? 今のリュウジは強くても、百五十年前のリュウジは普通じゃない?」


 余裕ぶってたらアリスから鋭い突っ込みが入った。

 それはそうか。タイムリープの鏡像現象で権限は持って行けても、過去の俺は第二神じゃない。そもそも上位神が違うから神力が細い。全力でやっても、今と同じ力が出せるかどうか微妙だ。


「確かに第二神の神力は使えないか。そりゃまずいな。それに、女神全員も昔はヘタレだったしな」


「ああ。そう言えば、そうね」とアリス。

「そのとおりね」とイリス様。

「うむ。そうであった」とウリス様。

「私は行けるかも」とエリス様。

 何を根拠に?


「つまり、いま測定しても意味ないってことですね」と女神カリスに突っ込まれる。


 プトレがっくり。


「すまん。百五十年前の俺達だと、たぶんセリスさんとかミューレベルだと思う」まぁ、俺はこの世界に顕現してたから、ちょっと訓練してたんだが。


「そうですか。それでも、全員参加すれば何とかなると思う。なるべく余裕をもって軌道計算することにしましょう。それと、タイムリープした後でもう一度確認することにします」


 こうなったら惑星リラで測定するしかない。行き当たりばったりだな。沢山集めといてよかった。まぁ、最初だしこんなもんだよな。


「悪いな、頼む」とプトレをねぎらう俺。


  *  *  *


 タイムリープでは何も持って行くことが出来ない。

 その意味は、物体を持って行けないという事だけではないことが、先日の実力のテストで判明した。自分の能力さえ持って行けないのだ。

 ただし、一部だが持って行ける能力もある。例えば、機能拡張である。これによって、過去の自分を強化することができるのだ。いとも簡単に。思えば凄いことだ。


「宇宙空間で自由に行動出来るように、飛翔スーツを仮想物質で再現してみました」とタイムリープ用の機能拡張を開発した女神カリスが言った。

「通常の飛翔スーツと同様に、姿勢制御や防御フィールドが使えます。また、外見もスーツらしい見た目になります」と女神カリス。


 宇宙船に標準装備している飛翔スーツは、宇宙空間で自在に飛び回れるし神力でも使える。だが、そのままでは過去に持って行くことはできない。そこで、女神カリスは飛翔スーツの機能を機能拡張で実現した。女神たちは仮想物質でできた衣装を生成できるが、この能力を使ってスーツを作ることにしたのだ。


「宇宙空間での振る舞いも殆ど同じです。感覚的には通常の飛翔スーツ以上に軽くて動き易いと思います」と胸を張る女神カリス。


 俺達はさっそく機能拡張をセットして試してみた。確かに楽に移動できるようだ。


「やった~っ!」とアリス。

「これよ。これを待っていたのよ!」とイリス様。

「これなのである。タブレットと同じなのである」とウリス様。

「ついに私もヒロインに! リュウジ怖い!」とエリス様。


 この女神カリス謹製タイムリープ用スーツ、女神たちに大好評だ。

 彼女たちが喜ぶのも仕方ない。目の前で使ってみて分かったが、要するにこれ完全に『変身』なんだよな~っ。通常の女神の衣装が消えてタイムリープ用スーツに入れ替わるのだ。いや、いいんだけどね。とりあえずBGMは流れません。


「これ、スーツのデザインは椎名美鈴だよな?」


 侍女隊や三従者隊のスーツに似てるので女神カリスに聞いてみた。


「はい。是非やりたいと言われたので。マズかったでしょうか?」と女神カリス。

「いや、大丈夫!」


 絶対シリーズものだ。これ止めたら俺がマズいことになる。一応、男版は男らしいし、いいことにしよう。


 しかし、タブレットで慣れてる女神隊はともかく、ミューゼスとプトレは微妙な……あれ? 何故か喜んでる?


「ちょっと! これ、いいんじゃない? 衣装が一旦光の粉になるのが素敵よね!」とミューゼス。気に入ったらしい。この無駄に長い変身シーンも美鈴監修なんだろうな。


「へぇ、機能拡張で衣装を生成するんですか! 動きも凝ってて面白いですね!」

 うん。まぁ、そんな必要無いけどね。気に入ったんならいいか。


 あっ、そうか。そういえば侍女隊とか三従者隊とかで見慣れてるのか、君たちも。とりあえず、全員この世界をよく見てる神たちということははっきりした。

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