第209話 惑星リラを救え!-いざ出動-
神聖アリス教国の建国祭まで後ひと月となったが、今は浮かれる気持ちは無かった。惑星リラ救助隊出動の日がやって来たからだ。
俺達は惑星フォトスの王城の一角にある情報管理局に集結した。ここが惑星リラ救助隊の拠点となる。ここにタイムリープ室とバックアップ隊の部屋を用意したのだ。
ただ、タイムリープ室と言えば聞こえはいいが、今はまだベッドがずらっと並んだ部屋でしかない。タイムリープ中は特に世話の必要は無いのだが、バックアップ隊が監視する手筈にはなっている。
また、タイムリープで何が起こるか分からないため、全員分身体で参加することにした。もちろん、タイムリープ先でも分身を作るのだが、タイムリープ開始も分身体で実行することにした。これなら、何かあっても分身を消すだけで済む。まぁ、肉体を保持してるのは俺だけだが、女神様たちも神化リングを付けている本体は問題あるだろうという訳だ。
「なんか、ベッドがずらっと並ぶと異様よね?」アリスが不満そうに言う。
「そうだな。まぁ、タイプリープ中も傍目には寝てるだけだし微妙。過去からのメッセージ誘導を受信して頭は結構活動的なんだけど」
「長い夢を見てる感じなんでしょ?」とアリス。
「そう。まぁ、本人は過去にいるつもりだと思う」つまり、過去と現在で一体化する感じになる予定だ。これこそ、一心同体と言うべきか?
「それって、起きてたらダメなの?」
「それはちょっと難しいですね」と女神カリスが説明してくれた。
「過去からの情報が飛び込んでくるので、起きてると混乱すると思います」
「そうでしょうね」
「もちろん軽い睡眠状態ですので、緊急時は解除して起きることが出来ます」と女神カリス。
「そうなんだ。それなら大丈夫かな」とアリス。
うん? アリスは、ちょっと周りが気になるのか? 分身体なので、あまり気を使わなくてもいいと思うが。
「ああ、気になるなら、もう一つ別の分身体を置いておくか?」
「ああ、そうね。そうする」
自分で自分の世話をするって女神様ならではかも。監視装置とかあったほうが良かったか? 将来的には作る予定だが、まだ何を監視すべきか分かっていない。
「それでは、ベッドに横になってください。あ、エリスさん、スーツはまだ必要ありません」と女神カリス。
エリス様は、もうスーツに変身していた。あ~、でもこれでいいかも。
「それでもいいかもよ。やっぱり、周りが気になるんじゃないか?」
「なるほど、そうですね。でしたら、全員スーツ姿でタイムリープしますか?」と女神カリス。
「なんか、それもシュールだな」
「むしろ当然じゃない?」とアリス。
見るとアリスもスーツ姿になり、さっき作った分身体を消していた。このスーツになると防御フィールドを自動展開するから安心感がある。
結局、俺達は全員スーツ姿になってタイムリープすることにした。
「じゃ、始めるぞ。全員タイムリープ!」俺はタイムリープ開始の号令をかけた。
そして、俺達タイムリープ隊十名は時間の流れに飛び込んでいった。
* * *
気が付くと、俺はセルー島にいた。ミリィの祖先と何か話しているようだ。
その様子を俺の分身体が透明になって眺めていた。新しい分身を作るときに透明化しているのだ。
なんだか幽体離脱のようで微妙なので、俺は直ぐに惑星リラへと転移した。
* * *
俺が惑星リラに到着した時には、既に何名も到着していた。タイムリープは、個々に可能なタイミングが違うので同時に到着するとは限らない。
ここは惑星リラの王族の別荘だ。この別荘は、深い森の中にあって人に見られる危険性が低いとのこと。女神リップが顕現して使っていた場所である。
俺は、昔のエリス様のアトリエを思い出していた。
「あの近くよ」アリスが教えてくれた。
「じゃぁ、あの湖もあるのか?」
「そうね。今もあるはず」
そうか。ぜんぶ終わったら、ちょっと行ってみるか。
それから、数分して全員が集合した。
「今のところ順調ですね」
メンバーを見渡しても問題なさそうだ。機能拡張を作った女神カリスも一安心といったところだ。
「それでは、まずパワーの確認を済ませてしまいましょう」と天文学神プトレ。まずは、最初のジョブだ。懸案のパワー測定である。
俺達はあらかじめ選定しておいた荒野へと移動した。
* * *
「では、あの岩で試しましょう。アリスさんから反発フィールドで飛ばしてください」惑星フォトスと同様にテストを開始した。もう慣れたもんだ。
「はい!」アリスも元気よく答えて、両手を岩に向かって掲げて狙いを定めた。
バーン
おっ? 大きな岩は、勢いよく飛びあがった。
「ええっと。アリスさんは以前からこんなに強力だったんですね?」とプトレ。
「さぁ?」とアリス。
「じゃ、イリスさんお願いします」プトレは、アリスが飛ばした岩を戻して言った。
「はい」とイリス様。イリス様は片腕をすっと上げて念じた。
ボーン
「うっ!」プトレ、やっぱり驚く。
「ウリスやるよ」ウリス様は人差し指を突き出して狙いを付けた。
ボーン
「エリスいくよ」エリス様は何故か筆を持っている。
ボーン
「俺もいっとくか」
バゴーーーン
あれ? 思ったより強い? とりあえず、未来で試したものとあまり変わらない。
「ああ、最近訓練したのでノウハウが初期記憶に残っているのかも知れませんね」
見ていた女神カリスが、そう分析した。体で覚えてるってことか? 体で覚えたものは早い反応が出来る。つまり、初期記憶に含まれているんだろうな。まぁ、神なので魂に刻まれるとかか? とりあえず、上手く行っているので問題はない。
「やっぱり過剰戦力ですね」とプトレ。
「やっぱり見物するか?」
「やるんだったら、目いっぱいやるよ」とアリス。ノリノリだし。
「だよな」
小惑星、跡形も無くなるかも。
* * *
そして、いよいよ作戦実行の時が来た。
プトレの誘導で、俺達は宇宙空間を進む小惑星と並行して飛んでいた。
小惑星と一口に言っても、今回の場合は直径数キロメートルもある特別なものだ。近くで見ると、一層そのヤバさが分かった。こんなものが、超高速で衝突するのだ。ひとたまりもない。
「まずリュウジ。進行方向に平行な面で二つに分断してくれ。その直後に反発フィールドで分離する。分離の合図は『展開』です」
「ちょっと待て。そこは『て~』とかじゃないか?」
「ああ、確かにそのほうがタイミング合うね。分かった。じゃ反発フィールドを撃つタイミングは『て~」で」
「了解! じゃ、いくぞ。極大エナジービーム」
ビーーーーーーーーーーーッ
小惑星は大量の蒸気を噴出しながらも、赤熱して二つに分かれた。蒸気の力で既に離れようとしている。
今だ!
「て~~~!」
「えーいっ」
「はっ」
「おりゃ」
「怖い!」
「おい!」
掛け声決めた意味なかったかも。
ズバーーーーーーーーーーン。
ちなみに、カリス、セリス、オリス、ミューゼス、プトレは見学モードです。
分割した小惑星はあっという間に離れていった。
「どうだ!」
「はぁ。いや、もう全然大丈夫」とプトレ。
「ほんとうか? 追いかけなくていいか?」
「いや、もう、これ以上やると、何処かの星を破壊するかも」
「そうか、そりゃマズいな。じゃ、大人しく帰るか」
「そうしてくれ」
小惑星が見えなくなったので、俺達は惑星リラの別荘へと戻っていった。
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