第210話 惑星リラを救え!-帰還-

 俺達は、惑星リラの別荘へと帰還した。

 小惑星の処理が完全に終わったし、これでもうこの星が滅亡することは無くなった。自分の故郷を救えたのだという達成感がじわじわとやって来た。


「問題ありません。以上で、作戦は終了です!」小惑星の軌道や、小さな隕石などを詳しく調べたあと、宇宙神プトレが宣言した。


「「「「「やった~っ!」」」」」


 もちろん、イリス様と仲良し四人組の喜びは格別だ。


「やったね!」

「おめでとう!」

「みんな、ありがとう!」依頼者のミューゼスも、こぼれるような笑顔で言った。

「いや、凄かったね! 全然私の出る幕が無かったよ」とプトレ。


 あれ? プトレ、何か準備してたのか? 自分の出番用意してたのか?それは、知らなかったな。もしかすると宇宙神の隠された技を見損なったか?


「いやいや、このメンバーをあそこまで連れて行った時点でプトレの手柄だよ」小惑星の軌道を予測して、俺たちを連れて行ってくれたからな。

「そうかな。うん、そうだよね」

「そうそう。大成功!」とミューゼス。

「それじゃ、この星のおいしい酒でお祝いしましょう!」とアリス。


「「「「「「「「お~っ」」」」」」」」


 あ、バックアップ隊の女神サリスにも後で教えてあげよう。これからは、いつでも飲めるからな。未来ならもっとうまい酒になってるかも?


  *  *  *


 酒が入っても、タイムリープの話題は尽きない。


「やはぁり、初期記憶で能力ぅが引き継がれていたのが大っきいでぇすね~」女神カリスも満足そうに言った。酒で、ちょっと活舌が変だが。酔うのか?

「うん。これは意外な収穫だったな」

「またまた驚ろかされたよ」とプトレ。

「これで、タイムリープを試す神様も増えるだろうな」

「そうよね。思った以上にやれるもんね。なんか、過去の自分が変身した感じ」とアリス。

「実際、スーツで変身してるしな」

「そうよね!」アリス、かなり嬉しそう。


「直前の訓練に効果があるって分かったから隊員を集めやすくなったな。思ったより人数増やせるかも。訓練すればいけるってことだからな」

「そうね。むしろ直前のほうがいいのかもね?」

「うん、タイムラグ無いからな」

「それにしても、これでタイムリープが十分使えるってことが証明されちゃったわね」アリスも手応え十分のようだ。

「確かにな!」

「そうそう」

「まぁ、ちょっと様子見が必要だと思うけどな」

「そうですね」と女神カリス。ちょっと慎重な顔だ。まだ、完全に影響が分かった訳ではない。


 何はともあれ、最高の結果になったのだから、みんなの気持ちは軽い。


「ふふ。やっぱりここのお酒おいしいな」とアリス。

「明日は、ちょっと湖畔まで遊びに行くか?」

「いいわね」

「いいね」

「いいのだ」

「リュウジいい!」

「おいっ!」


 こうして、人知れず救われた惑星リラの夜は更けていった。


  *  *  *


 翌朝、俺達は湖畔に遊びに行った。そして、見付けた。魔法共生菌を。


「惑星フォトスとほぼ同じだね。微生物と共生してる。こっちの魔法共生菌は無害で安心した」と女神オリス。


 彼女の分析によると、惑星フォトスと殆ど同じで無害らしい。


「それはセルー島とかと一緒ってこと?」

「うん、妖精族が持っていたものと同じだよ」

「同じか」


 つまり、魔法共生菌は惑星モトスと惑星フォトスだけのものじゃないってことだ。


「やっぱり、宇宙から来たんだろうな」

「たぶんね」


 宇宙神魔科学の女神セリスを見たが微妙な表情をしている。どうも専門外らしい。こういうことに詳しい神様っているのかな? 宇宙を渡る生物って宇宙生物学?


「念のため散布用の無害化魔法共生菌を作るから、ちょっと待ってて!」と女神オリス。


 やはり女神オリスさんに来てもらってよかった。魔法が使えると聞いた時点で、こうなる可能性があるとは思っていた。俺たちが使っているものと同じ、悪性にならない処置を施したものに交換しておくことにした。


「分かった。よろしく」


 遺伝子情報を書き換えてから神力で急速培養するが、それでも時間はかかる。


  *  *  *


「ねぇ、いつかみたいにピクニックしない? お弁当持って!」

「は? 何言ってんの? オリスさん仕事してるのに!」

「えっ? だめなの?」エリス様、もう卵とお酢と油を入れた籠を持っているし。

「始めてて! 私もすぐに参加するから!」と女神オリス。参加したいんだ。じゃ、いいか。


「分かった、じゃみんなでピクニックしよう」


 まぁ、いいんだけどね。久々に、というか約二千年ぶりのピクニックだ。


「そういえば、ここって、二千年前とあまり変わってないな? 水は綺麗だし、相変わらず冷たいし」

「ふふ。そりゃそうよ。ここは保護区なの」とアリス。

「保護区? 何を保護してるの?」


 国立公園みたいなもん? ふと見ると、何か看板のようなものが立ててあった。


「竜神の湖……って、何?」

「だから、竜神が現れた湖よ」

「現れたのか?」

「現れたじゃない」

「……って、俺かよ」


「他にいないわよ。あ、ちなみにこの森も保護区よ」

「ほう。そういや、この森の名前は?」

「エリスの森」

「うっ」エリス様がマヨネーズを作りながらフリーズした。


「どゆこと? ねぇ、どゆこと?」ボウルを持って詰め寄るエリス様。

「しょうがないじゃない。みんながそう呼ぶんだもん」とアリス。

「これは、竜神の呪いに違いない」とエリス様。意味不明。


「わはは。やはりな。日ごろの行いが出るのである」とウリス様。そう言うこと言うと……。

「そうね。そのサンドイッチはウリスサンドって言われてるけどね」とアリスが卵サンドを指さして言った。

「なに? 何故なのだ? 我は作っていないのだ!」


 確かに竜神サンドとか言ってた筈だよな?


「一番食べてたじゃない!」と鋭い指摘をするアリス。そういやそうだった。

「ああああ~~~っ」


 よく分からないウリス様の叫びが、湖畔に轟くのだった。

 名づけ親は絶対アリスだな。


  *  *  *


 その後、出来上がった無害化魔法共生菌を散布して俺達は惑星リラを後にした。と言うか分身を消した。


 ちなみに、王族の別荘にいて俺達の世話をしてくれていた人たちが帰り際に手を胸に当て膝まづいて見送ってくれた。確かに正体はバラしてるんだけど、どうも彼らは俺達の子孫らしかった。

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