第204話 女神ミューゼスの願い

 第一神様の思惑はともかく、俺はさっそく女神ミューゼスに連絡を取ってみた。


ぽっ ぽっ

「早速話してくれたのね第一神様。有り難いわ」


 女神ミューゼスは担当神リップを連れて、俺と女神カリスの待つ執務室へ現れた。

 担当神のリップは、女神としては成り立てらしく若々しい印象だ。まぁ、そうは言っても年齢は千年以上なんだろうけど。もしかすると若くして神になったのかも知れない。それなら、年老いた姿そのものがないからな。


「直接話してくれても良かったのに」昔の記憶が戻った俺は、気安く言った。

「そうね。でも、第二神間の依頼だから」

 ああ、なるほど。その辺は神界ルールだからな。すっかり忘れてたけど。


「そうだ。そっちの話を聞く前に、こっちの状況を話しておこう」俺はソファを勧めながら言った。

「ええ。お願い」

 せっかく来たのでラームやお茶も用意した。


「まず、タイムリープで飛ぶ目標の日時だけど、百二十年前なら、精度は恐らく一日程度だ」

「まぁ」と驚くミューゼス。

「凄い」一緒に来た担当神リップも驚いている。もしかすると、俺が苦労した話を聞いているのかも。


「それから、過去視を組み合わせることが可能になったから、現場にいる神や使徒を通して、あらかじめ状況を見ることができる」

「噂の過去視ね!」とミューゼス。

「私は、当時頻繁に見ていたんですけど、私で映像を取れますか?」とリップ。

「たぶん大丈夫だろう」

「よかった!」


 過去視については、開発の発表はしたが検証が十分ではないので、まだツールとしては一般公開していない。


  *  *  *


「では、使ってみましょう」


 女神カリスは、担当女神リップに過去視の機能拡張を導入し表示装置を接続した。未来視と過去視は改良され、外部のスクリーンに表示できるようになっている。これで、みんなで検討することがことが出来る訳だ。表示装置はもちろん女神キリス謹製である。


「おお。思ったよりくっきり見えるな。あっ」

 スクリーンには女神リップから得た過去の映像が綺麗に映し出された。そこには鏡に映った寝起きのリップが髪を梳かしている姿があった。ちょっとパジャマがはだけている。

「えっと、もうちょっと後でお願いします」

 そうは言っても、急にはずらせません。

「ちょっと、改良の余地がありますね」

 女神カリスも流石にまずいと思って映像を消した。


 でも、過去視はこういう意識がはっきりしていない時のほうが見えやすいのも確かだから仕方ない。多分、先に映像を確認する運用で誤魔化すしかないだろう。


「綺麗な鏡が作れるなんて、なかなか文明が進んでたんですね」


 などと無駄なフォローを入れる俺。よく見えてたって言ってるようなものだ。それにしても、女神リップは普通に惑星リラに顕現して生活してたんだな。そう言えば、入れ込んでたとか第一神様が言ってたが。


「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 いえいえ、眼福です。


ぽっ

「何が眼福なの?」

 アリスに突っ込まれた。


「あら、アリス、遅かったわね」

「お待たせ」

「えっ? 呼んでないけど?」

「何言ってんのよ。惑星リラって私の生まれた星じゃない。私が来なくてどうするのよ」

「なんだって~!」って聞いてないよ!


「知らなかったの?」とミューゼスが不思議そうな顔をする。

「知らないよ。ってか、あの星の名前いつ決まったんだよ」

「ああ、確かに私が担当してからだわね」とアリス。イリス様の後、あの世界はアリスが担当してたのか。

「リップが担当したのはアリスの後よ」とミューゼス。


 あれ?

「もしかして、ミューってアリスの元上位神?」

「そうよ」とミューゼス。

「そうなのよ」

「ってことは、俺の元上位神でもあるじゃん」

 召喚時の上位神ってことだが。


「そうね。見てたわよ。面白かった!」

 なんか、ちょっと大丈夫だったか? いろいろと。ちょっと慌てる俺。

「そんなことは、どうでもいいのよ」

 俺が混乱していると、ミューゼスは事も無げに言った。


  *  *  *


 その後、女神リップの過去視を調整して、問題のシーンが映し出された。小惑星が衝突した壮絶な瞬間だ。それは自然の驚異などという言葉からは想像もできない地獄絵だった。自然現象には手加減などと言うものはないからな。

 俺たちは息をのんで見守っていた。


「それで、どうかしら。力を貸してもらえるかしら?」静まり返っていた俺達に、女神ミューゼスが真剣な眼差しで言った。


 あの俺達の世界が、こんなことになってたのか!

「全力でやらせて貰います!」

「そうよ。当然よ!」アリスも息まいてる。


「良かった! リュウジにそう言って貰えて。これで大丈夫ね!」


 この世界は俺の第二の故郷のような星だ。まだ最近行ったばかりでもあり、俺の中に鮮明に残っている。


「私達にしか出来ないミッションよね!」とアリス。


ぽっ

「私も当然参加する」

 エリス様登場。


ぽっ

「我も、当然参加するのだ!」

 ウリス様も登場。


ぽっ

「わたしもね」

 当然、イリス様も登場。


 そりゃ、エリス様、ウリス様、イリス様も参加するよな! イリス様と仲良し四人組の出番だ!

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