第202話 フォトスの氷月
海の水が減って水位が下がったので陸地は大きく広がった。完全に四大陸にはなっていないが十分だろう。
ただ、このままでは塩害であまり使えない土地になってしまう。まだ塩が固まっていないうちなら比較的簡単に塩分を抜けるので、同時に抜いておくことにした。
「で、私達の仕事なのね~」
「やっぱり、呼ばれると思った!」
もちろん、女神ケリス&コリスである。
「いや、大地を作るって、思いっきり神様らしい仕事が出来て良いじゃん」
「あ、そう言えばそうですね。神話になりそう」とケリス。
「そうか! 二人の女神が降臨して大地よ豊かになれ~ってやるわけね!」とコリス。妙に乗ってる。
「うん。そういうことだ」
「でも、誰も見てないんだけど? 誰が神話にしてくれるの?」
「そ、それは。やっぱり、あとで顕現してこっそり教えてやればいいんじゃないか?」
「なるほど。ちょっと微妙な神話だね」
「何を言う! 神様が教えるんだから、これ以上信憑性のある神話はないぞ! むしろこうあるべきだ」
「もう、『創造記』とか記録文書残してあげようか」とケリス。
「ケリスが作ると、教科書になりそう」とコリス。
「年表くらいにしとけ」
「けど、結構な作業量あると思うけど、大丈夫かなぁ?」とコリス。
ケリスの場合は分身を作れるからいいが、コリスは無理だからな。
「誰か、使徒とか用意するって言ってなかったか?」
「うん、そうなんだけど召喚はダメって言われたし、H&Hズに期待してたんだけど三従者隊になっちゃうし」
「あれ? そう言えば三従者隊の仕事って、まだ無いんだよな。エリス様の手伝いくらいだし。ちょっと呼んでみるか?」
「えっ? ほんと~っ?」
ぽっぽっぽっ
三従者隊登場。
「マスター、お呼びですか?」とヒスイ。
「うふふ。こういう登場の仕方は新鮮~」とヒラク。
「やって参りました!」とスサ。
「おお、来たか。実は、二人に頼みたいことがある。女神コリスとケリスの仕事を手伝って欲しいんだ」
「はい。分かりました。惑星フォトス関係のビデオ作品は一通り出来ましたし、大丈夫です」とヒスイ。
「良かった~。みんなよろしくね!」とコリス。
「よろしく頼む」
「「「はい、お任せください」」」
「でも、コリスは休むなよ」
「わ、わかってるってばっ」
「あ、女神ビーチは作り直しだからよろしくね」
「「あ~っ」」と女神ケリスとコリス。
海水面が下がったので、当然そうなるよな?
* * *
その日の、惑星フォトスの女神湯。
ぽちょんっ
「やっぱり、考えることがリュウジよね~っ」
アリスが顕現して来て、ちょっと呆れた顔をする。
「いや、これ前から言ってなかったっけ? 海水が多いから減らすって」
「言ってたけど。ホントにやるとは思わなかったわ」
そう言うと、アリスは広いフォトス王城の女神湯に体を投げ出した。ゆったり浸かりながら夜空を見上げれば、そこには白く輝く氷の月が浮かんでいる。
「でも、綺麗でいいだろ?」
「そうね。水が欲しくなったら、あそこに取りに行くのね?」
「まぁ、まず必要ないだろうけどな。むしろもっと大きくするかも」
小さめの月だが、衛星軌道が低めなので普通の地球で見る月程度には見える。色も白なので本当に月っぽい。ま、地球の感覚でだけど。
「土地がまた無くなったら、大きくするの?」
「えっ? あぁ、まぁ可能性としてはかなり低いだろうな」
「そうなんだ。あんまり変えたら混乱するしね?」
「そうだよな」
「青い月と小さい白い月が宝石みたいで、綺麗だし。変えないほうがいいね」
「うん」
「あれって落ちてこないよね?」
ふと、アリスが出来たばかりの氷の月を見て言う。
「うん? 心配? プトレに軌道計算して貰ったから大丈夫だよ」
「そう。なら安心ね」
俺の信用ゼロだな。ま、俺も同意見だけど。
「ふふ。綺麗だけど、いままで無かったものだから慣れるまでは違和感あるわよね」
「まぁ、そうだな」
「ちょっと、夜が明るくなった気もするし」
確かに、氷なので太陽の光を強く反射する。ただ、小さいので言うほど明るいわけでは無い。まぁ、この惑星フォトスにしても惑星モトスにしても光害が無いので星が良く見えるのだが、氷の月が明るく輝いていると星が見にくくなるのは確かだ。双子星もあるから月が二つになったしな。
「そういえば、名前はどうするの?」
「そうだなぁ。氷の月だから氷月、水月、冷月、寒月とかかな?」
「風流ね」
「レジャーランドにしてもいいかも」
「風流、台無しね」
とりあえず
ちなみに、氷月は惑星フォトスの衛星なので、惑星モトスからはほとんど見えない。小さ過ぎるのだ。つまり、この青と白の二つの月を見るには惑星フォトスに来る必要がある。
湯船から見上げながら、この白い月が惑星フォトスの魅力になる日が来るのかも知れないなと思った。
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