第199話 神格化率測定機
ついうっかり隔離措置の無い場所で話した「神格化率測定器」だが、さっそく開発依頼が殺到したとアリスから報告を受けた。ごめんアリス。
いや、そもそも神にはスキャン能力があるのだ。だから測定器がなくても神格化率は分かるのだ。まぁ、1割から10割と言った程度だが。だからそれほど気にしないと思っていたのだがそうでは無かった。
てか、みんな神格化率百パーセントじゃないの?
「うん、それはそうなんだけど違うのよ。殆ど百パーセントなんだけど、だからこそ精密に測定して、いつ頃子作りが可能になるかを知りたいってことみたい」とアリス。
もちろん、そんなことを気にするのは神化リングを付けている神様だけだ。
「ああ、なるほど。定期的に測定すれば予測できるもんな」
「そうなのよ。それが分かれば、安心できる」
「そうか、びくびくしないで、安心して神力が使えるってことか」
「そういうことね」
「う~んっ。そうすると、不干渉主義の今の神界じゃ、結構早い時間で子作り可能になるかもな」特に、神力をあまり使わない担当神なら効果は直ぐに出そうだ。
「ああ、そうね」
「そう言えば、以前の敵対グループから熱烈な開発依頼が来てたわね」
「不干渉主義のグループか? なんか、ちょっと複雑な心境だな」
「そこは、喜ぶべきなんじゃない?」
さすがにアリスも、微妙な顔をしている。
「そうだな。とにかく、神化リングを広めちゃってる以上、神格化率測定器は作るべきだろうな」
「そうね」
「そうなると、神力の使い方とか研究されたりしてな」
「ああ、神格化に影響しやすい神の能力は何かとか?」
「そうだな。そういう研究ってやってるのかな?」
「ううん、どうなんだろ?」
ぽっ
いきなり女神カリス登場。
「それ凄いです! 是非やりたいです」といつも以上に乗る気の女神カリス。
「や、やりますか? 結構大変な研究になりそうですけど?」
「そうですね。多分、気長に統計を取る必要がありそうです」
大変そうなのに、嬉しそうなのは流石に神様だな。
「あれ? そう言えば、使った神力って詳しく測定できるのかな? 測定機とかあったっけ?」
ぽっ
すかさず神魔道具の女神キリス登場。
「それ、面白いね! 神力測定機、作ってみたい!」
おお、神魔道具の専門家が興味を持ってくれたようだ。
「神魔道具で計測できるんですか?」
「うん、出来るよ。ただ、神が持ち歩くような測定機は無いけどね」
「万歩計みたいな?」
「まんぽけい?」
「携帯する道具です。えっと神だとやっぱり指輪とか腕輪を付けることになるのかな?」
「そうだね」
「そうか。それがあれば、ますます神格化率の測定に意味が出てくる」
「それ、私のところにも問合せ来てるよ」と女神キリス。
「あ、やっぱり。ごめん、ちょっと不用意だった」
「大丈夫、大丈夫」
「でも、神力測定機はいいけど、神格化率測定器のほうは簡単じゃないかもね」と女神キリスは難しそうな顔をした。
「そうなんだ」
「ええと、要するに体全体を詳しく調べる訳だけど、まず神の体を扱うのが難しい。そこは専門外だしね」
「ほう」
「あと、使うのは神の能力『透視』だと思うけど、神道具として組み込んだことはないんだよね。だから、どんな物にすべきかイメージが湧かない」
「なるほど」
「それでは、『透視』の部分は私が担当しましょう。恐らく機能拡張が必要でしょうから」
神格化を測定するスキャナー部分を女神カリスが担当してくれるようだ。
「ああ、カリスさん。お願いできます?」
女神カリスの申し出に女神キリスも安堵したようだ。
「はい。お任せください。ただ、体の扱いに関する部分はどうしましょうか?」と女神カリス。
ぽっ
そこで治癒師の女神オリス登場。
「そこは、私に任せて! 装置を操る側も、検査される側も体に無理の無いようにしなくちゃね!」
「よかった~。オリスさんに見て貰えれば安心です!」
「そうですね。助かります」と女神カリス。女神キリスも頷いている。
「素晴らしい。この三名が居れば大丈夫ですね」
「そうですね。ですが、なにぶん前例のない物なのでどんな形に仕上げたらいいか、ちょっと悩みます」と女神カリス。
「前例がないか。ええと、体を詳細に検査する装置と言ったら」
「検査する装置と言ったら?」
「CTスキャンとかかなぁ。断層撮影する装置です」俺は地球のことを思い出して言ってみた。
「それはどんなものでしょうか?」
俺は、一般的な知識だけでなんとか説明してみた。
「ああ、なるほど。確かにそうした装置がありますね。それでいきますか」と女神オリス。
そりゃ、知ってるよね? 神格化率の測定器じゃないけど。
「その方式なら神格化率の測定も出来ますし、部位によって神格化が違うような場合も測定できますね。面白いです」
治癒師のオリスも興味が出てきたようだ。なるほど。確かに、神格化の進行具合とか詳しく分かりそうだ。
「それに、病気の発見にも使えますね。まさに、私たち治癒師に必須のアイテムです。是非、実現したいと思います」
治癒の神様ならば多分スキャンできるんだろうけど、使徒でも使えるのは大きいだろう。少なくとも神様の負担を軽減することは確かだな。
「ベッドに寝て、ゆっくりスキャンするのも面白いね」
女神キリスは魔道具としての面白さに注目しているようだ。
「平面のスキャンを移動で立体にする訳ですね。なるほど。これなら実現しやすいでしょう。精密検査も可能でしょうし」
スキャナ部分を担当する女神カリスにも好評のようだ。
「なんとか、なりそうですか?」
「「「お任せください」」」
頼もしい回答、いただきました。
こうして、神格化率測定装置の開発が女神様三名の協力の下、スタートした。そして、
具体的なイメージが出来たこともあり、開発は順調に進んでいった。
装置の検査内容が極度にプライベートな事柄なので、開発や設置は惑星フォトス情報管理局の付属施設内で行うことにした。ただ、医療機器としても利用したいとの声もあり、別途病院にも設置される予定だ。
* * *
「すごい機械を作ってしまったわね。っていうか、これCTスキャンよね?」
出来上がった神格化率測定機の画像を見た美鈴が言った。
「いわゆるCTじゃないよ。あれはX線だから。こっちは神力波と魔力波だし」
「よく分からないけど」
「まぁ、俺も詳細は知らない」
「見た目はCTスキャンよね」
「まぁね」
「映像もね」
「まあね」
「まんまじゃん」
「お前、CTとMRIを区別してないだろ」
「してるよ」
「ほんとかよ」
「MRIは時間が長い」
「そう来たか」
それはともかく、神格化率測定機が完成した。そして、めでたく連日満員御礼であった。やっぱりかよ。いや、期待以上で嬉しいよ。
遅れて神力測定器も完成した。これは腕輪型の測定器でいつでも携行することが出来る。つまり、神力を使う現場で測定できるのだ。これは予想通り不干渉主義者から絶賛された。もしかして俺って、不干渉主義者?
また、当然のように惑星フォトスに新設された神様専用住宅は全て埋まってしまった。このため、同時に増築が決定されることになった。
そりゃ、そうなるよな。
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