第197話 使徒三従者隊

 情報管理局をネムが担当したことにより、三従者隊はちょっと焦っていた。


「最近、私たちの存在感が希薄になっていると思うの!」ヒラクが手に持ったラームを見ながら言った。

「そうかしらっ?」とヒスイ。ヒスイは、ラームを咀嚼している。

「そうなんでふ?」とスサ。スサは、クッキーを頬張っている。

「もう、ヒスイもスサも緊張感無いんだから!」

「でも、惑星フォトスに連れて行って貰ったりしてるし」とヒスイ。

「そう。……とっても楽しいよ」スサは、お茶を一口飲んで言った。

「そうじゃないの! 乙女の時間は有限なの!」ちょっと声を荒げるヒラク。

「ああ、確かにそうね! ヒラクの言う通りね!」調子を合わせるヒスイ。

「はぁ」スサはいまいち実感が無いようだ。


「そこで、私たちもネムさん方式を採用しようと思うの!」とヒラク。

「ネムさん方式?」とヒスイ。

「はい?」スサ。

「分かってないわね。つまりね、ネムさんはマスターの使徒になったでしょ?」とヒラク。

「そうね」とヒスイ。

「はい」とスサ。

「それで、寿命が永遠になったのよ! つまり、いつまでも若々しくいられるってこと! しかも、神化リングを貰えるのでいつまでも子作りできるのよ。永遠の乙女よ! これってもの凄いアドバンテージなのよ」とヒラク。右手に持ったラームを掲げて言い切った。

「ああ、確かに!」とヒスイ。

「???」とスサ。

「いつまでも妃候補でいられるってことよ! だってそうでしょ? 乙女の時間が永遠になるんだから!」とヒラク。

「ああっ。そうね! 素晴らしいことね!」とヒスイ。

「わぁ~っ。なるほど、乙女の夢ですね?」とスサ。


「ふっふっふ。そう言うことなのよ! だから、使徒で頑張ってれば、いつかは私たちもお嫁さんにして貰えるんじゃないかな?」とヒラク。

「うん、なるほど。そうだね!」とヒスイ。

「そうですね!」とスサ。

 いや、それはどうかな?


「多分、ネムさんも同じ気持ちだと思うの」とヒラク。

「それって、私たちと合わせて四天王になるってことなのかな?」とヒスイ。

「へっ?」とヒラク。

「してんのお?」とスサ。

「いえ、流石にそこまでは考えて無かったけど。でも、面白いかも!」とヒラク。

 いや、そんな思い付きの四天王じゃダメだろ。


  *  *  *


 とりあえず、三人が執務室に現れた時点で俺は分かっていた。ネムを使徒にした後、嫁達からも三従者隊の使徒への話は出ていたのだ。ただ、嫁候補として居るので言い辛かったのだ。でも、自分たちの意思として使徒を希望してくれたわけだから問題無いよな? 俺は躊躇なく彼女たちを使徒にした。


 使徒化して神化リングをそれぞれに渡すと、神化リングを指にはめて喜んでくれた。


「やり~っ!」

「やった~っ」

「やりました!」

「あれ? そう言えば、スサは魔法学園に来ただけなんじゃ?」


ぽっ

「ばかね~っ」

ぽっ

「おばかさんね」

ぽっ

「ばかなのだ!」

ぽっ

「リュウジのばかぁ~」

なにそれ。


「三従者隊のみなさん、おめでとう!」

 アリスが祝福した。

「「「ありがとうございます」」」

「よかったわね!」とイリス様。

「よかったのである!」とウリス様。

「リュウジ、いい!」とエリス様。

「おまえな~っ」


=ニーナ おめでとう! みんな!

=ヒスイ ありがとうございます!

=ヒラク ありがとう!

=スサ わたしも、いいんでしょうか?

=ニーナ 三人とも、問題無しよ!

 ま、嫁じゃないからいいか。


 三従者隊は元から王城に住んでたが、新しく住み始めたネムとも仲良くなっているらしい。


「私、旧領主館の頃から居たけど、自分が世話してもらう立場になってみると、なんだか変な感じ。景色が一変するのよね」とネム。

「へぇ~。そんなものなんですね」

 ヒスイはピンと来ないらしい。もともと王女様だからな。

「あ、でも立場が変わると違って見えるってあるよね? 侍女隊も凄く近い感じになったし」とヒラク。侍女隊への憧れが強かったようだ。

「そうですね!」とスサ。


「そうね! そういう意味では女神様に一層近づけて、本当に嬉しい。だって、直接女神様が声を掛けてくれるのよ!もう、おかしくなりそう!」とネム。

 まぁ、セシルもそうだったけど、ネムも同類だからな。

「そうなんですよね。一応知ってはいましたが、実際に神界の話を聞いてみると、こんなに神の国だったんだって、改めて驚きます」とヒスイがしみじみと言う。


「そう言えば私、頭の中で声が聞こえた時は、さすがにびっくりしちゃいました。やっぱり世界が違ってたんだねっ。でも、その神様に使徒にしてくれって言っちゃったんだよね~っ、私たち」とヒラク。まぁ、ヒラクは俺と普通に話してたしな。

「ほんとに。人間の王様におねだりするだけでも凄いのに、さらに上の上ですもんね」とヒスイ。

「そうなのよ。しかも、ご主人様は神界でも偉いらしいし。私、神界関係の仕事を仰せ付かってしまったんだけど、ちょっと不安」とネム。

「ネムさんは、しっかりしているし、実績ありますからいいですよ~っ。私たちこそ、使徒にして貰ったはいいけど、何も出来ないとか言われたら泣きそう」とヒラク。

「そうよね! ここはやっぱり三従者隊の特徴を磨かないと!」ヒスイが提案する。

「三従者隊の特徴って?」とヒラク。

「そうね。例えば、若さ?」とヒスイ。

「それは、侍女隊と同じだし、使徒に若さは意味が無いんじゃ?」とヒラク。

「そうか。じゃ、可愛らしさ?」とヒスイ。

「それは、否定したくないけど、それも侍女隊のみんなに勝てるかなぁ?」とヒラク。

「ううん。ヒラクも考えて!」とヒスイ。

「そうねぇ、スサはどう思う?」とヒラク。

「ええと。一番人間に近い?」とスサ。

「ああ、確かにね。私も三人と同じだけど。ってことは」

 ネムも使徒になったばかりだからな。

「「「「子供が出来やすい!」」」」


 それ使徒の仕事じゃないし。

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