第196話 使徒ネム

 なんとか俺達は地上界で神の内緒話を実現した。

 だがこの要求、なにも俺達のグループに限ったことでは無かった。そう、俺達同様にこの世界に顕現する神達、つまりリゾートに現れる神たちは神界から注目され易いのだ。これは非常に都合が悪かった。


「プライバシーを確保する方法はないでしょうか?」


 惑星フォトスに住み始めた神達が俺の執務室に顕現して来て要請するようになった。それも、何組も。そりゃそうだよな。


「お気持ちは十分わかりました。ただ、これは神の能力に制限を掛ける内容なので第一神様とも相談して回答したいと思います」

「そうですね。おっしゃる通りです。では、よろしくお願いします」


 ほんとに、ストーカー多すぎだよ神様。やっぱ、娯楽が少な過ぎるのか? 暇なのか忙しいのかよく分からんぞ。


  *  *  *


 ということで、第一神様にお伺いを立てたら、珍しく執務室に顕現してきた。


「ふむ。なる程のぉ。それは当然そうなるだろうのぉ。無制限に許可はできんが、こと子作りに関しては推奨されるべきじゃろう。神界の新たな希望でもあるしの。お主の、惑星フォトスか? この星でやる分には問題無いじゃろう」

「分かりました。では、惑星フォトスでは神界からの隔離措置をさせてもらいます。それと、グループの会合も顕現して行うので、隔離措置をしたいと思います」

「うむ。それも、問題無いじゃろ。寧ろ、いままで見せすぎていたな。見ててハラハラものじゃったぞ」

「ええ~っ、そうだったんですか! 言ってくださいよ~っ」

「わはは。お主が試行錯誤すると面白いことになるからの。見ておった」

 あ~、やっぱりいろいろバレてますよねぇ。

「恐れ入ります。では、いろいろ進めたいと思います」

「うむ。いろいろ期待しておるぞ。ではの」

 そう言ったかと思うと、第一神様はふっと消えた。今日は分身を作る余裕があったのかな?


 それはそうと、俺の隔離措置はこれで公認されたわけだ。秘密結社が公的機関になってしまった。まぁ、明確に示されたわけでは無いから、黙認に近いのかもな。けど、第一神様の黙認だからな。強力だ。


 こうして、神界隔離措置が表舞台に出て来たのだが、これどうしよう? 当然、この神界からの隔離措置は管理する必要があるだろう。これを誰に担当してもらうかだが責任重大だよなぁ。

 いや、俺が全部やってもいいんだが、まだ分身体を作れてないからちょっと面倒なんだよね。で、俺の仲間で言うと、椎名美鈴が良さそうなんだが今は無理だし他の嫁達も同様だ。あと、侍女隊はちょっと違う気がする。


 さらに、魔法共生菌を使うことも考えるとネムくらいしか思い浮かばない。恐らく彼女が最適のように思う。だが、ネムは人間なので惑星フォトスへ行ったり来たりするのは大変だ。

 そう言えばネムって使徒になりたがってなかったか? とりあえず呼んでみた。


  *  *  *


「とういう訳だ。魔法共生菌を使って神界からの隔離措置をする必要があるんだが、これを管理する者が必要になる。これは重要な仕事だし場合によっては危険もあるかもしれない。恐らく、情報管理局のような仕事になるだろう。これをネムに任せたいと思っているんだが、やってくれるか?」

「はい! 是非やらせてください!」

 即答かよ。っていうか、身を乗り出してるし。


「でな、そうなると惑星フォトスへも頻繁に行かなくちゃならないわけだ」

「そうですね!」

「というか、もしかすると本拠地は惑星フォトスになるかもしれない」

「はい。分かります」

「でな。使徒だと転移が出来るので惑星フォトスに簡単に飛べるんだけど」

「使徒にしてくれるんですか?」

「えっ? いいの?」

「はい! 待ってました!」

 待ってたんかい。


 あ、そういえば、神化リングが出来てから、使徒になると子作りできないって制約は無くなったんだよな。そうすると、いい事ばかりか?


「一応、寿命が無くなっていつまでも奉仕しちゃうことになるんだけど、大丈夫かな? 途中で止めることは、もちろん可能だ」

「はい。問題ありません!」

「一応、言っとくけど、嫁じゃないよ?」

「はい。結構です。寿命が無いなら、急ぐ必要ありませんし」

 ん? ここ突っ込むとこ? いや、突っ込むと地雷?

「分かった。じゃ、使徒として情報管理局主任に任命する」

「了解しました」

 俺はネムを使徒にして神化リングを渡した。

 で、渡してから気づいたけど、俺よりアリスの使徒のほうが良かったのか?


「おめでと~。ネム。これで神界仲間だね!」

 肩にいたミリィが祝福する。神界仲間って。ま、いいか。

「ミリィ、ありがとう!」


=ニーナ おめでとう!

「きゃっ。これって?」

「いきなりだと驚くよな。俺のグループ内の会話はこんな風に出来るんだ」

「まぁ、これが噂の神力リンクなんですね! 頭の中に神魔フォンが入ってるみたいです!」

 噂してたんだ。まぁ、ネムなら知ってるか。

「ああ、まぁ、そんな感じだ。少しずつ慣れるといい。チャットもありだし」

「ああ、誰だか分かるんですね!」


=セシル おめでとう、ネム! 妃隊のみんなからも「おめでとう」だって! 最初だから全員は繋がないけどね!

=ネム セシル! うん、ありがとう! みんなも、ありがとう!

=ミゼール 侍女隊のみんなからも「おめでとう」!

=ネム はい。ありがとうございます。嬉しいです!


ぽっ

アリス登場。

「私も、女神隊を代表して歓迎します」

「まぁ、アリス様、わざわざありがとうございます。夢のようです!」

「ふふ。念願の使徒ね」

「はい。信じられません!」

「いや、喜んでもらえて、こっちこそ嬉しい。っていうか、負担を強いるんだから断られても当然なんだが」

「いいえ。私はずっとアリス様やリュウジ様のお役に立ちたかったので満足です」

 もう十分役に立ってるが、この娘はずっとそうだったな。寧ろ、使徒にするのが遅かったのか?

「ふふ。そうね。それだけで選ぶと使徒ばかりになっちゃうけど、ネムは有能だからもっと早くても良かったわね」

「うん。そうだな」

「とんでもないです」

「でも、神化リングの効果が証明された後だから、このタイミングが一番いいんじゃないか?」

「それもそうね。欠点が無くなったものね」とアリス。

「ああ。ありがとうございます」とネム。


 こうして、情報管理局主任ネムが誕生した。無害化魔法共生菌配布プロジェクトのほうは後輩に任せればいいだろう。

 それと、使徒になったのだから王城に部屋を用意した。王城に着いたネムを最初に迎えたのはバトンやマリナさんを始めとした王城のスタッフ達だった。旧領主館の頃からの仲間だ。かつての自分たちの仲間が使徒になったと大騒ぎだった。


  *  *  *


 それからネムによって、魔法共生菌を使った隔離措置を始め、グループ内の情報管理が実施されるようになった。

 早速、惑星フォトス内の施設の多くは女神ビーチや温水プール、女神湯などを除いて、閉じられた空間には完全な隔離措置が講じられた。流石にネムは有能である。


 また、これによって、さらに惑星フォトスに住みたがる神様が殺到することになったのは言うまでもない。

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