第195話 秘密の花園って

 神魔科学の女神カリスと神魔道具女神キリスさんにお願いしていた、神力リンクの暗号化が完了した。


 やった! これで俺の部屋に女神様鈴生り状態で打ち合わせしなくて済むわけだ!


「あら、不満だったの?」とアリス。あ、これヤバい?

「いえ、滅相もない」

「そうよね。両手どころか、美女に埋もれてるなんて幸運の極致よね?」

「そうですね」

「願っても無い幸運よね」

「はい、もちろんです」

「じゃぁ、ときどきなら来てあげるわ。ねぇ、みんな?」

「「「「「「「「「「「「「「は~いっ」」」」」」」」」」」」」」

 当分、続くかも。


 それはともかく。俺のグループ限定の神化リングには、暗号化回路が組み込まれた。同時に、女神カリスさん提供の俺のグループ限定機能拡張も配った。この二つで、神力リンク、つまり系統内での自由な会話が秘匿される。まぁ、VPNみたいなもんだ。


「もちろん、接続相手は通常の神力リンクと同じように何名でも自由に決められます」

「これは凄いな。有難い」

「ふふ。リュウジは、女神の心を感じるのが苦手だもんね」とアリス。

 神力リンクは、接続した相手の気持ちが伝わるから、細かく制御する必要がある。

「うん、これはいい」


 俺は早速、全員の神化リングを修正したリングに置き換えた。


=アリス ピポッ

=アリス どう?

=リュウジ ふむ。誰の発言か分かりやすいな。

=カリス メンバーを追加することもできます。

=リュウジ おお、なるほど。

=リュウジ だれの発言かは神化リングで判定してるの?

=カリス いえ、神力カラーで判定しています。だから、なりすましは出来ません。

=リュウジ すばらしい。


 チャットみたいだな。これはいける。


 まぁ、神力リンクの暗号化が本当に必要なのかは分からない。こういうのは気持ちの問題ってことが多いからな。会話くらい安心して出来ないとダメだろう。


  *  *  *


=エリス ピポッ

=エリス リュウジ~っ。

=リュウジ はい、なんでしょう?

=エリス ちょっと繋いでみただけ~。

=エリス プチッ


 おい! 初めてスマホを買ってもらった小学生かよ!

 女神カリスさんにお願いして、接続せずに拒否する機能を追加してもらった。


=エリス ピポッ

=リュウジ プチッ

=エリス ピポッ

=リュウジ プチッ


ぽっ

「なんで、切るの~っ?」

「いや、イタ電かと思って」

「私って分かってるじゃない!」

「エリス様、用は無いんでしょ?」

「そうだけど。ちょっと声聞きたいときもあるじゃない?」

「別に、ありません」

「もうっ。昔、一緒に風呂に入った時は素直だったのに~っ」

「えっ? そんなことありましたか?」

「うう。忘れて無いくせに!」

「エリス様は今のほうが可愛いからいいんです」

「えっ?」

ふっ

 あ、消えた。


 そういえば、神様って成人くらいまでは若返るけど、それ以上って無理なのかな? あ~、でも変える気になれば変えられるって言ってたよな。

 てか、ふたりで話すなら来ちゃえばいいじゃん!


=アリス ピポッ

=アリス ふふふっ。

=リュウジ どした?

=アリス これって久々の感覚!

=リュウジ うん?

=アリス 私とリュウジしか聞いてないから。

=リュウジ ああ、そう言うことね。まぁ、あの頃の俺は覗かれっぱなしって感じてたけど。

=アリス ああ、対等って意味では初めてね。ちょっと新鮮。


 これはこれでいいのだが。ちょっとピポッピポッ五月蠅い。音は消して、問題があるとき以外は接続も自由に戻すことにした。拒否する必要のある時以外は自由でいいだろう。誰が接続してるかは分かるしね。


  *  *  *


=リュウジ じゃぁ、この暗号化した神力リンクの名前を何にするか決めたいと思います。案をだしてください。

=アリス 暗号化リンク

=イリス 秘密の縁結び

=ウリス 運命のリンク

=エリス 赤い糸

=リュウジ おい

=オリス 神の絆

=カリス ヴァーチャルリンク

=キリス 暗号通信

=クリス 緊急リンク

=ケリス 秘匿通信

=コリス 内緒話

=サリス 酒の上での通信

=シリス 未来リンク

=スリス グループ通信

=セリス 井戸端会議

=ミリィ 秘密の花園


 ちょっと勘違いしてる奴もいるが。で、投票の結果、全部一票となった。これ決定できないじゃん。もう、どうでもいい気がしてきた。むしろ、正式名称が無いほうがセキュリティ上は正しいかも。ってことで、単に神力リンクでいいことにした。俺達のグループでは暗号化されてるってだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る