第189話 怪しい女?

 過去から帰還した後、宮廷内で話題にはなったがそれも落ち着きを取り戻していった。

そんなある日の俺の部屋。夕食後の女神様達と女神湯に浸かった後、自室に戻りゆったりとしていた。


「ところで私たち、神界の中で注目を浴び過ぎていると思うの」とアリスが話し出した。何故か小声で。

「確かに、ちょっとわずらわしささえ感じますわね」とイリス様。

「アリスの言う通りなのである」とウリス様も同じ意見らしい。

「うん、そう」もちろん、エリス様もか。


「ほう」神界に行っていない俺にはピンと来ないが。

「だって、これじゃ、私たちのプライバシーは皆無よ」と不満そうに言うアリス。


「神様のプライバシー? もともと、無いようなものだろ?」と突っ込む俺。

「違うのよ。普通、神界にいる場合は、あまり見られないのよ」

「そうなのか?」

「そうよ。でも、今話題の世界に顕現してるから見られっぱなしになっちゃうのよ」

 確かに、沢山の神様が「見てる」と言ってるものな。


「なるほど。確かにエンタメっぽいしな。てか、芸能人? スター?」

「そうなのだ」とウリス様。

「うん。でも、女神だって秘めた恋をしたい!」とエリス様。

「えっ? したいのか?」

「そう言うもんよ。気持ちの問題よ」とアリス。

「そういや、エリス様が最初に恋の可能性に気付いたんだっけ?」

「そうそう」とアリス。

「そうよね」とイリス様。

「そうである。さすがである」とウリス様。

「わたし怖い!」

「恐怖のエリス!」

「喧嘩売ってるの?」

「ごめんなさい。でも、どうしようもないよな?」


 そんな俺を見て不敵な笑みを浮かべるアリス。

「ふっふっふ。そこで、地下組織を作ろうと思うのよ」

「なんだそれ?」

「だから、秘密結社女神隊よ」

「何それ。てか、俺は入らないのかよ」

「じゃ、特別メンバーよ」

「いや、隊長とか言ってほしかった」

「隊長になりたいの?」

「知らんけど」


「あれ? 嫁たち使徒は関係ないのか?」。

「あ、そうね。じゃぁ、秘密結社竜神よ」簡単に名前を変えるアリス。

「それ、秘密にしたいのかしたくないのか微妙な名前だな。誰がやってるかバレバレなんだけど?」

「内容が秘密ならいいのよ」とアリス。

「いいのか? でも、どうやるんだ?」

「そこは、美鈴お願い!」

 何故か呼ばれて来ていた美鈴。どうも、美鈴の発案だったらしい。

「分かりました」

 美鈴は、そういうと皆を手招きして呼び、ひそひそ話をするしぐさをした。


「私は、以前神界から隠れていました」と美鈴。

 おお。そう言えばそうだった。確かに、神界から隠れて潜んでいたな。

「魔法共生菌を使うやつだな?」

「そうです。魔法共生菌でぐるりと周囲を囲ってしまえば、神界から見えなくなります」

「そうだったわね」とイリス様。

「うむ。忍者のようなのだ」とウリス様。

「くノ一美鈴」とエリス様。


 美鈴は、突っ込もうともせずに流して続けた。

「実は、この部屋は暫定的に魔法共生菌で隔離措置してあります」

「おお、まじか」得意そうなアリス。

「だから今は、神界から見えていない筈です」と美鈴。

「いきなり、現実的になって来たな」

「信用して無かったの?」アリス、そういう突っ込みは要らないから。


「以前の私は、魔法共生菌を集めるのに苦労していましたが、今の私達なら、いくらでも用意できます。生産しているんですから!」

「おお。確かに! 売る程な。ってか売ってるし」


 美鈴は、まず俺の自室を神界から隔離することにした。

 こんな話をするには隠れる必要があるからな。そうした上で、それを恒常的に実施したらどうかと提案している訳だ。具体的には、天井と床の四隅に魔法共生菌のボトルを配置すれば完了だとのこと。やることは、思ったより簡単だ。


「いきなり完全に見えなくすると怪しいし、転移できなくなるのも困るので、この程度でいいと思う」

「なるほど。見えそうで見えないってやつだな」

「それ、別の意味で怪しいんだけど」

「ごめん」

「この措置ならノイズが乗って、実質見えない状態になるの。特に言葉は聞き取り難くなる」と美鈴。それで小声で話してるのか。


「なるほど。隠れることに関しては美鈴の右に出る奴はいないな」

「その言い方だと、怪しい奴に聞こえるんだけど?」と美鈴。

「怪しい女なのね!」とアリス。

「ちょっと怪しい危ない女ね」とイリス様。

「危ない女なのである」とウリス様。

「リュウジ危ない」

「気を付けよう」

「やめて!」


 まぁ、俺達は人間の部分もあるのでプライバシーを確保してもいいよな?

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