第175話 神聖アリス教国-三周年建国祭-
三月になって神聖アリス教国の建国祭が始まった。
今年の建国祭最大の目玉は、惑星フォトス開発を発表したことだ。惑星フォトス開発の先陣を切って神聖アリス教国がリゾート開発を開始すると発表した。まずは神聖アリス教国が神界対応のリゾートを建設するという訳だ。続いて各国も開発に参加し、これは一般人向けリゾートとして開放されるようになるだろうと発表した。ただし、その境界はゆるく共存することになる。
建国祭に集まった各国代表も気合が入っている。神聖アリス教国建国祭で恒例の各国のブースでは、早くも自分たちのリゾートプランが披露されていた。おかげでお祭りは更にヒートアップすることになった。
「私達の国が女神様や神様を接待するんですって! 信じられない!」
「ねぇ、神様が近くに来るんでしょう? お肌が綺麗になるかしら?」
「女神様が、海辺でくつろぐ姿を見れるのよね。ちょっとワクワクするわね!」
「私、アリス様の専属メイドになるの!」
「もう、教会あげて参加しましょう。というか、教会を惑星フォトスに移しましょう!」
うん、ちょっと落ち着こう。てか、シスターたちかい。
ルセ島と同様に、神界用リゾートとして島一つが使われるが、この島はルセ島の二十倍ほどの大きさがある。リゾート施設の規模をやや控えめにしてあるのは、なるべく自給自足できるようにするためだ。
そして開発計画の発表と同時に、建設中のリゾート・アイランドの映像を流したところ、さらに大きな反響を呼んだ。
「まさに女神様のリゾートね!」
「さすが神聖アリス教国の仕事ね! あの眩いばかりの建物はどう?」
「おい見たか? 従業員宿舎が本当に王城のようだったぞ」
「俺やっぱり応募しよう。もう俺の人生の目標にする!」
「ああ、なんて美しい星なんでしょう」
「なんだか、おとぎの国のようね!」
男神のことも、忘れないでほしい。
* * *
建国祭の舞踏会でも話題はリゾート・アイランドのことで持ちきりである。
さすがに嫁達七人は、静かに座って見ているだけだったが、周りの取り巻き達の話題の中心はリゾート・アイランドである。まぁ、でも神聖アリス教国が運営する施設は、基本神様用なので、あまり一般人は入れない。まぁ、だからこそ話題なのかも知れないが。
神聖アリス教国も一般人用のリゾートを作るべきか?
「この度の取り計らい、感謝しています」と初めて会う神様に挨拶された。この舞踏会には、チラホラ知らない神様も来てたりする。
「オープンまでは、今しばらく掛かると思います。その折には、是非おいでください」
「はい、必ず」
この世界一般の流行りとは違うが、優美な服装のカップルだった。手には、第一神様経由の神化リングが光っていた。
他にも何組か来ていた。そういえば、カップル成立した場合、どこに住むんだろ?
ー どこに住むんだろなんて暢気なこと言ってる場合じゃないわよ。
アリスから神力リンクで突っ込みが入った。
ー うん? どうした?
ー 早速、住処について相談されたわ。
ー えっ。もうかよ。リゾートの次は愛の巣か?
ー そうなのよ。けど、やらない訳にはいかないわよね。
ー うう。そうだろうなぁ。俺たちが煽ってるようなものだしな。
ー そうそう。諦めが肝心よ。
ー 神様って、もっと暢気なもんじゃなかったのかよ。
ー バカねぇ。暢気じゃないわよ。忙しいでしょ?
ー 俺はそうだけど、恋の合間に昼寝くらいしてもいいだろ。
ー いいけど、昼寝アイランド作るの?
ー 愛の巣でいいか。ん?
ー どうしたの?
ー 神様ってさぁ。下界に顕現して何したいんだと思う?
ー だから、デートしたいんでしょ?
ー それはそうなんだけど、それって人間だった頃のようにしたいんじゃ?
ー ああ、それはそうよね。そうじゃなかったら、神界に居ればいいもんね。
ー そう。別に人間にかしずいてほしいって訳じゃ無いよね?
ー そうね。
ー 神界専用のリゾート作ろうかと思ってたけど、区別する必要無いのかもな。
ー ああ、なるほど。限りなく人間のようにしたいなら、共用でいいってことね。
ー うん。じゃ、基本人間用の施設にして追加で神様サポートがあればいいか?
ー そうね。とりあえず、それで始めればいいんじゃない?
ということで、ルセ島には無かった宿泊施設の建設が決定した。ただし、神界ゲートなど神様専用の施設は別として基本は人間と共用にすることになった。当然、長期滞在用のものも用意する。
リゾートではあるが自給自足を前提に住民の居る街にしたのは正解だったな。神様と共存する街。あれ? 今も結構近いか? 王城でやってるよな?
* * *
恒例の大陸連絡評議会は、今までとはちょっと違う雰囲気だった。今までは建国祝いの挨拶あるいは新規参加する国の紹介と挨拶などがメインだったからだ。
「われわれは今、何に立ち会っているのでしょう?」興奮気味にワレスト・ナミア国王が言った。やや困惑気味な顔である。
「ワレスト王の気持ちはよく分かりますぞ。われわれも、少々戸惑っております」ノミナス・アイデス国王だ。まぁ、確かに惑星フォトス探検でいっぱいいっぱいだったもんな。更にリゾート開発とか考える余裕はないのかも。
かといって「神界が恋の季節になりました」とは言えない。いや、そもそもそんなことは普通起きないんだ。ああ、もうどうしてくれようか。さすがに説明に困った。
「はっはっは。ワレスト王、ノミナス王、そんなときこそパルス王国秘伝のアレを使う時ですぞ」当然のように、しかも高らかな笑いと共にナエル王が宣言した。
「フィスラーの鉄則です」
「おおっ」
「やはり、それしかないですな」
「むろんです」
いやいや、そんなおおっぴらに言われても。っていうか、ヒスビス国王が恐縮してるんだが。パルス王国の話を聞くのが怖い。
「すみません。ちょっと込み入った事情があってのこと。こちらとしても急展開なのは重々承知しています。各国には、ゆっくり慎重に検討して頂ければ、それで結構です」と俺は、なるべく落ち着かせようと言った。ワレスト王やノミナス王は頷きながら聞いてくれた。
「そうじゃ。気に病む必要はないのじゃ。婿殿に任せておけば間違いはないじゃろ。気が向いたら、参加すればいいだけのことじゃ」ヒュペリオン王がフォローしてくれた。有り難い。
「はい。それで結構です。当面は、珍しい旅行先が増えたと考えて貰えばいいかと」それを聞いて、ボーフェン翁は髭を撫でつつ頷いている。
「素晴らしい、ぜひ私も参加したいものです」
王妃二人の出産で惑星フォトス調査隊に参加出来なかったヒスビス国王だが、若いだけあって二人の王妃を連れて惑星フォトスに行ってみたいようだ。もともと、マレイン妃は旅行好きだしな。
「なるほど。われわれもその観光に参加できるというわけですな?」ワレスト王、ちょっと気を取り直したようだ。
「はい。もちろんです。観光だけで全く構いません。全ては、ご覧になってからということで宜しいのでは?」
「うむ。なるほど。そうですな。まずは、この眼で見ませんとな!」
「そうですね」ノミナス王も、旅行なら歓迎らしい。
他の国も、戸惑いながらも、単に天空のリゾートを訪れるだけなら問題無いようだ。というか、参加したいようだ。ただ眺めるしかなかった月が、今や訪れることの出来る憩いの場になろうとしているのだ。関心のない者は少ないだろう。
しかし、うちの王城の神輝石だけでも驚いてたけど、今度のリゾートアイランドは、新輝石だらけになりそうだし、さらに驚くことになるのか? さすがに慣れたか?
まぁ、さらに海は輝いてるし、周りには眩い神様だらけだし、まるで神界にいるような体験になるだろうな。まぁ、近いと言えば近い。あっちは雲だらけだけど、こっちは神輝石だらけだ。
ってことで、惑星フォトス見学会が開催されることに決まった。俺、ツアコン?
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