第174話 惑星フォトス・リゾート開発2
惑星フォトス・リゾート開発に先だって、まず俺は海水排出システムの建設を進めた。このシステムが正常に稼働してくれないと、落ち着いてリゾート開発に専念できないからだ。
このシステムは同じものが惑星モトスにも必要なので、一号機は惑星モトスに作ることにした。設置場所は神聖アリス教国の北の極地に決めた。
建設にあたっては、もちろんランティスとスペルズ兄弟に参加して貰った。設計には宇宙神魔科学の女神セリスも参加して貰っている。軌道計算が必要だからだ。
「こんな、山のような氷の柱を空高く打ち上げるなんて、さすがに意味分かりませんでした」とランティス。まぁ、普通はこんなものは作らないからな。考えた俺もどうかと思う。
「私も、こんなものは初めて見ました」と女神セリス。
「でも、面白かった! 真空膜フィールドで作った型に海水を流し込んで凍らせるとか普通考えませんよ。おかげで作るのは簡単でしたけどね!」とランティス。まぁ、ほとんどマッハ神魔動飛行船の外周エンジンそのものだからなだ。飛行船の代わりに氷の塊を加速する訳だ。ただ、当然エンジンは外部に置く必要があるので、ここはちょっと工夫が必要な筈だ。
「えっ? アイデア出したら直ぐに完成して俺のほうがびびったぞ」
「そりゃだって、外周エンジンと殆ど同じですからね!」そうか? いや、結構違うと思うぞ。
海水排出システムの機構としては、外周エンジンがそのまま使えた。氷の柱の発射も外周エンジンの加速装置で問題なかったらしい。ただ、脱出速度に到達するまで氷が溶けないようにするのが、ちょっと大変だったとのこと。そりゃそうだろう。
「じゃ、実験開始します!」ランティスが宣言した。既に、真空膜フィールドに溜めた海水はキンキンに凍結されている。やや丸みを帯びた巨大なアイスバーのようだ。
「発射!」
ランティスの合図と同時に、真空膜フィールドに包まれた氷塊が、周りの空気を震わせて超加速されたロケットのように急上昇していった。
「あれで、本当に太陽まで届くんですか?」とスペルズは信じていないようだ。
「ふふふ。大丈夫です」と女神セリス。
「まぁ、実際には太陽に到達する前に溶けるんだけどな!」
「えっ? ああ、なるほど。そうですよね?」とスペルズ。
ん? 太陽がアイスバーを食べるような絵でも想像してたのか? ちょっと面白いな。
* * *
惑星フォトスのリゾート開発については大陸連絡評議会に諮ったが、まず開発は神聖アリス教国と神界で進めるということになった。
神界リゾートとして安定してから各国が参入するという流れだ。まぁ、人間が直接神界と折衝なんて出来ないし、各国もストーン神国の件で手一杯だろうから、ゆっくり参加すればいいだろう。
それで、神界側は俺が面倒みるとして神聖アリス教国分は元老院に任せることにした。これを受けて元老院は惑星フォトス開発局の新設を決定した。
神界側の担当は女神ケリス&コリスだが、どうしていいか分からないと泣きが入ったので、ルセ島の拡大コピー作らせることにした。ルセ島の施設は使いまくっているので、作り方さえ教えれば問題ない。
まぁ、施設の作り方は結局は俺が教えることになったんだが。
「おお、ほいほい作れる~っ」女神ケリスが楽に作業してる。
「もう、まっかせて~っ」女神コリスも、いつの間にか調子が出て来たようだ。
すぐに女神コリスと女神ケリスはルセ島と同じ施設を作れるようになった。神化リングにも慣れてラームジュースも飲んでるから細かい作業もお手のものだ。
材料は砂浜の白い砂だ。やってみて分かったが、ここの砂も俺達が固めると神輝石になった。どうも、あの光る微生物が白い砂になるらしく、材料は大量にあったので使うことにした。
ということで、神輝石で出来た巨大な女神湯や温水プールが出来てしまった。なんとも贅沢だが、神界向けリゾートだし寧ろいいかも。ついでなので、王城の拡大コピーも作って貰った。どうせ必要になる。
で、建物はいいとして、次に必要なものは綺麗な水だ。海水は大量にあるが、残念ながら地下水はあまり無い。しかし、魔法共生菌の故郷なのでエナジープラントが楽に稼働する。この豊富な魔力を使って海水から真水を作ることにした。これで女神湯と温泉プールの水も賄う。完全に近代的な水道システムが出来上がった。
ということで、あっという間にルセ島の十倍規模のリゾートが誕生した。
ただ、施設が完成しても、すぐにリゾートとして使えるわけでは無い。もうすぐ神聖アリス教国の建国祭で忙しくなるし、従業員募集や教育だけでも時間が掛かる。オープンはもう少し先になる予定だ。
* * *
惑星フォトスのリゾート施設が完成したので、初期投入する人員を募集することになった。これは神聖アリス教国の担当だが……物凄い数の応募が集まってしまったらしい。
つまり、こういうことらしい。惑星フォトスは、まだリゾート施設も開発中でツアーも開始していない。ツアーが組めたとしても、当然旅費は高額になるだろう。そこに来てのリゾートの従業員募集だ。タダで惑星フォトスに行ける上に休みを利用すれば観光も可能というわけだ。そりゃ、参加するか。
「これは、早急にストーン神国の宇宙港を稼働させないといけませんな」とマレス。
神聖アリス教国の惑星フォトス開発局で従業員を募集したわけだが、予想以上の人気に元老院議長のマレスも驚いている。とりあえず、この人気を受けてマレスも対応を迫られている訳だ。
当然従業員だけでは話は終わらない。宇宙船建造計画も急ピッチで進める必要があるし、当然宇宙港の建造も急がれる。現地の従業員宿舎の整備も必要だ。つまり、出来たばかりの惑星フォトス開発局であるが、いきなり大所帯になりつつあるのだった。
「おい聞いたか?」
「聞いてねぇよ!」
「何も言ってねぇよ」
「何だよ早く言えよ」
「惑星フォトス開発局が従業員を募集するんだとよ?」
「従業員? お役所の役員か?」
「そんな訳あるかよ。惑星フォトス・リゾートの従業員だってよっ」
「ほ~っ、そりゃすげぇな。タダで惑星フォトスにいけるんか?」
「ああ、そうだ。おまけに高給ときた。なんでも、従業員になったら城を持てるらしい」
「そんな訳ねぇだろ」
「いや、城と言えるような家に住めるんだってよ」
「なんだって~。絶対申し込む! で、何すんだ?」
「なんでも、女神様にご奉仕するらしいぜっ」
「おお、さいこ~だっ」
「男神もいるがな」
「あ、無理っ」
おいっ。
こんな噂の真偽はともかく、実際に大きな話題になっている。ただ、王族接客以上の神様接客係なので簡単に決められないのも悩ましいところだ。当然、教育が必要だろう。教師はたぶんルセ島の従業員だな。
ちなみに、島の砂で従業員宿舎も作ったら神輝石になってしまったので、城と言うのもあながち間違いでもない。まぁ、神輝石だらけなんだが。
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