第157話 緊急救助隊出動!

 アトラ大陸が沈んだ海をアトラ海というが、今回ここで災害が発生した。

 これを受けて大陸連絡評議会は救助隊を組織し支援物資を積み込んで現地に急行することになった。

 俺は高速移動が可能なマッハ神魔動飛行船を持っているので、もちろんこれを提供する。救助隊員は各国から警備隊や衛兵を出してもらうことになった。飛行船で現地に向かいながら各地で支援物資と共に乗り込む。時間との勝負なのですぐに提供できるもののみとした。


 メンバーは新しく大陸連絡評議会の代表になったナエル・シュゼール王が隊長となって組織した。


緊急救助隊のメンバー

 隊長 ナエル・シュゼール王 大陸連絡評議会代表

 副隊長 ヒスビス・パルス王 大陸連絡評議会副代表

 副隊長 リュウジ・アリステリアス王 大陸連絡評議会アドバイザー

 リュウジの補佐 女神アリス 担当神

 地震調査分析担当 女神カリス

 リュウジの補佐 女神ケリス ストーン神国復興担当

 リュウジの補佐 女神コリス ストーン神国復興担当

 リュウジの従者 ミリィ王女

 神聖アリス教国 警備 椎名美鈴と七人の侍女隊、三従者隊

 聖アリステリアス王国 近衛神魔動車隊

 シュゼール王国 警備隊

 パルス王国 警備隊


 最近はアリス達が女神だとバレているので普通にメンバーになっている。

 近衛神魔動車隊については王様が居ないが参加するとのこと。最近長距離飛行が可能になっているそうで「神魔動車隊」から逸脱しつつあるようだ。何になろうとしているのかは不明。


  *  *  *


 緊急救助隊は神聖アリス教国を立つと、まず聖アリステリアス王国、シュゼール王国に立ち寄って救助隊員と支援物資を乗せた。

 その後は南北大陸のパルス王国まで直行した。

 南北大陸のパルス王国は被災地の近隣ではあるが、あまり被害がなかったので支援国として動いてもらうからだ。ここでも救助隊員と支援物資を乗せた。


  *  *  *


 比較的被害の少ないステル王国とモニ王国はパルス王国からの別動隊に任せて、俺達は直ぐにナステル王国を目指して南大陸東岸を南下した。ここは海の近くまで山がせまる地域だ。海岸に沿って山脈が続いていて、人は住んでいない。


「あれは?」


 展望窓から岸を眺めていたナエル王が異常に気が付いた。海岸沿いに深い亀裂が走っている。


「地震の跡でしょうね。ここは、地震の影響が大きかったのかも」

「ここに人が住んでいたら、大変な事態になっていましたな」


 一部木々も倒れているし崖崩れも見える。この様子を見たナエル王が厳しい顔つきで言った。


「そうですね。考えただけで恐ろしい」


 ヒスビス王はいつになく渋い声で言った。ここが自分の国ならコーヒー農園を作っていただろう。そんな事を想像したのかも知れない。


  *  *  *


 ナステル王国に到着すると、支援物資を下し救助活動を展開した。とり残された人の救助もさることながら、多くは海に流されているとのことで海上の捜索が出来るメンバーを総動員することにした。

 七人の侍女隊、三従者隊に加え神魔動車隊が海へ飛び出した。

 海上を千里眼や神眼で探しつつ、指示した場所へピンポイントで直行出来るのが大きい。神魔動車がホバリングできるのにも驚いた。救助者を乗せられるので大活躍である。


 魔力波レーダーを積んだ神魔動飛行艇も威力を発揮した。

 神魔動飛行艇はレーダーで遭難者を見つけられる上に、海面に着水して救助活動ができる。さらに、水中へ探しに行くことも可能だ。その威力は絶大である。いや、作った自分でもびっくりだが、救助隊のために作られたような機体だった。


 さらに、治癒能力のあるメンバーが多数いたのも幸いして多くの遭難者を助けられた。もっとも、こんなメンバーがいつでも集められるわけではない。あとで魔法学院に治癒師の養成を依頼しようと思った。


 今後のことはともかく到着一日にしてかなりの成果が出せた。緊急救助隊だから、この一日が勝負なのだが、陸上海上ともに取り残された被災者は見当たらなくなった。


  *  *  *


「本当に、ありがとうございました。これほどの支援をいただけるとは思いませんでした」ナステル王国のホバンズ・ナステル国王が両手を握って感謝の気持ちを伝えてきた。


「早く来れたのが何より良かった。時間との勝負ですからな」成果を出せたナエル王が誇らしい表情で言った。

「我らにはアリス様がついてますからね」ヒスビス王も明るい表情でいう。


「それでも出来ることと言うのは限られますが」


 俺が言うと、びっくりしたような表情で言った。


「これ以上の援助など思い付きませんぞ。この度のこと、大変驚いております」


 まぁ、そうか。これ以上なんて想像できないか。


「リュウジ王は遥か上を目指してますからな」と、ナエル王。


 いえ、目指してません。むしろ人間を目指してます。遥か上はブラックなんで。


 それはともかく、予定していた救助活動は終了した。あとは失った物資などの支援になるだろう。大陸連絡評議会で検討する予定だ。

 そうなると、救助隊としての次の仕事は原因調査だ。


「カリスさん、どう思いますか?」


 神魔科学の神カリスの意見を聞いてみた。


「そうですね。地上の状況はある程度見ましたが、震源の海域も見る必要があると思います」


「なるほど。では、明日からは海底調査ということでどうでしょう?」


 俺は、隊長のナエル王に言った。


「わかりました」


 ナエル王は、あっさりと承諾した。もう慣れた感じだ。


「か、海底調査と言いますと?」


 ヒスビス王が驚いて聞いた。海底に潜った経験がないからな。


「マッハ神魔動飛行船は飛行艇だけでなく本体も海に潜れんですよ」


 ナエル王が物知り顔に言う。もう専門家だよな!


「ああ、そうでしたね。普通、飛行船は海に潜らないから忘れていました。あの驚異の映像を直接見れるわけですか」とヒスビス王。


 嬉しいような怖いような複雑な心境といったところかな。こういうのは、時間を置かずにとっとと経験してしまうのがいいだろう。


  *  *  *


 ヒスビス王の気持ちをよそに、俺達は翌朝早くに地震の調査を開始した。


 沿岸付近の海底を見たいという女神カリスの要請でナステル王国の首都ミゼルを出てすぐに潜航した。

 海岸付近の海は本来は南国の魚の楽園なのだが、砂が巻き上がって何も見えなかった。それでも、旧アトラ大陸の方向に少し進むと、海底に亀裂が見え始めた。

 南北大陸の岸に沿って亀裂が走っていたのだ。


「震源はこのあたりでしょうか」しばらく進んだ後、深い亀裂を発見して、女神カリスが言った。

「これは、断層ですか?」

「そうですね。それも、かなり規模の大きなものです」


 つまり、ここは今後も大きな地震が発生するということだ。これを防ごうとするのは無理だ。出来るとすれば地震予知だが、さすがに今のこの世界では望むべくもない。

 そう考えると、未来視がどれだけ凄い技術なのか改めて思いあたった。なにしろ、実際に起こる災害を事前に知ることが出来るんだからな! 予想ではない。予知でもない。検知なのだ!

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