第156話 南北大陸の危機

 後宮西宮の増築などで忙しくしていたら、さらに追い打ちをかけるような情報が飛び込んできた。しかも二つ。


「リュウジ、ストーン神国復興隊から連絡が入ってるわよ!」


 神界グループ内の連絡が全部俺に上がると俺が何もできなくなるので、アリスが神界グループの渉外担当という事になった。神力リンクなので近くに居る必要はない。


「なんだ、その復興隊って?」

「三従者隊に対抗してるんじゃない?」

「なんじゃそりゃ。対抗するなら、女神隊だろ?」

「さぁ?」

「いいけど。でも、復興事業はケリスとコリスに任せたって言ったろ~? もう、あいつ等に任せたんだから俺は知らないぞ~っ」


「あら、そうなの? ふぅん。じゃ、そう言っとくわね」


 何か含むような言い方だな。


「リュウジ様、大陸評議会からも緊急連絡が入りました」


 これはセレーネだ。彼女は神聖アリス教国や大陸連絡評議会の渉外担当だ。


「ああセレーネ、大陸連絡評議会も主要メンバーから外れてアドバイザーになったんだからそんなに……って、緊急?」

「はい。緊急連絡だそうです。急ぎ、緊急評議会に参加して頂きたいとのこと」


「そうか。緊急じゃしょうがないな。なんの話だろ?」

「詳しくは聞いていません」

「わかった。出てみる」


 俺はアトラ大陸の海底探検が終わった後、大陸連絡評議会からも退こうとした。世界の滅亡は免れたし、色々やり過ぎてるからな。でも、せめてアドバイザーで残ってくれと懇願されて残っている。まぁ、半分辞めたようなものだ。評議会の発起人ではあるが基本は国の主権を握っている者同士が協議する場だからな。


  *  *  *


 臨時大陸連絡評議会に出席するため、執務室で会議専用神力フォンを接続した。

 最近は、マルチスクリーンになって各国代表が一面に映し出され、誰が出席しているのか一目瞭然で分かるようにアップグレードしている。


「アドバイザーのリュウジ、参加します」ログオン時のメロディに続けて言った。

「おお、リュウジ殿。お待ちしておりました」現在の評議会代表、ナエル・シュゼール王が応じた。

「どうかしましたか?」俺は、とりあえず事情を聞くことにした。


「ヒスビス王、すみませんがもう一度報告を」パルス王国のヒスビス王も評議会副代表に選ばれている。

「分かりました。実は、南北大陸に大津波が押し寄せまして、大陸東岸の各国から緊急支援要請が届いています」


 ヒスビス王のパルス王国は南北大陸中央の西岸にある。そんな位置関係もあって、南北大陸ではまとめ役のような立ち位置になっていた。今回の話は東岸の出来事なのでパルス王国には直接的被害は無かったようだが、友好国のモニ国が被災しているので他人事でもないようだ。声に、緊張感が漂っている。


「大津波? 大地震でもあったのか?」

「おお、さすがリュウジ殿。やはり関係あるのですね」


 ヒスビス王は身を乗り出して言った。


「大津波の少し前に大きな地震がありました。幸い地震による被害は大きくはありませんでしたが、その後の津波で沿岸の家屋が多く流されたとのことです」


 なるほど。そういうことか。


「何処が被害が大きいか分かりますか?」

「ナステル王国が最も大きな被害を受けたようです。かの地は陸の孤島ですので支援も困難が予想されます。大陸中央のステル王国南岸にも被害が出ています」


「モニ国はどうでしょう?」


 同じ大陸中央なので津波が来ている筈だ。


「はい、モニ国にも津波は押し寄せましたが、城壁で守られていたために事なきを得たようです」


 なるほど。都市国家ならではだな。以前訪れた時のしっかりした城壁を思い出した。それでも、城壁外の農地などには被害が出ている筈だ。


「支援はどうなってる?」

「各国から支援物資提供の申し出を受けています」

「そうか。ありがたいな。後は、物資をどう運ぶかと、現地で救助活動をする救助隊を編成できるかどうかだな。支援される側も、受け入れ態勢が必要だ」


「おおなるほど。救助隊ですか」

「確かに受け入れる側の体制も必要ですな」とナエル王。


 彼らの反応を見るに、国家間の支援というものに慣れていないようだ。それはそうか。最近まで、やっと生きながらえていた国々だしな。


「緊急に支援が必要な人たちと、ゆっくり支援すべき人たちがいます」


 俺は、地球での記憶を探りながら言った。


「ゆっくりした支援は国主体で後から決めて貰えばいいが、まずは被災地での被害者救出を優先すべきでしょう」


 俺は専門家じゃないからこの程度の事しか言えないが。


「緊急に支援の必要な人たちですか?」

「ええ、災害時にまず必要な仕事です。瓦礫の中から被害者を助け出したり、けが人の治療をする人たちです。災害では被害者の人数が多いので地域の衛兵や治癒師では足りなくなります」


「おお、なるほど。確かに足りませんな」とナエル王。

「ということは、救助隊をどう派遣するかですな」

「そうですね」


 話は、大陸連絡評議会が緊急救助隊を組織して支援することになった。もちろん状況次第で、その後の支援もあるのだが、まずは緊急救助隊だ。


「その緊急救助隊、これを機に大陸間救助体制を築くべきでしょうな?」


 支援内容がほぼ決まったところで、ナエル王が言った。


「それがいいでしょう。少なくとも、支援体制を作っておけば、評議会を開催せずとも救助隊が独自に行動出来ます」

「おお、それは素晴らしい」


 国際的な救助隊の概念がないから仕方ないよな。それでも、魔法共生菌防衛体制の合意が出来ている国なので必要性は理解してもらえるようだ。


「なるほど、さすがです。では、リュウジ殿、よろしくお願いします」


 あれ? これって国際救助隊?

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