幻の大陸アトラ編

第137話 ストーン砂漠の復興と歴史1

 今年の春にストーン砂漠を神界向けレジャーランドにするって話をしたけれど、その後あまり進展がない。

 まぁ、他国も誘えばそれぞれの国の活性化にも役に立つかもなんて思ってたんだけど、どうも簡単にはいきそうもない。そもそも既に大陸間貿易で各国は活性化しているので、これ以上刺激する必要もない。そうなると神界のリゾートを抱える聖アリステリアス王国と神聖アリス教国の課題でしかなくなってしまうのだ。


 ちなみに女神ケリス&コリスはそれなりに頑張ってくれたようだ。俺の指示がいまいちだったようで、砂漠の緑化は地域によってまちまちで乾燥したままの場所もあれば湿地帯になってしまった場所もあった。地下の状態を把握していたわけじゃないから、これが正解なのかどうなのか判別がつかない。


 やっぱり、専門家がいないとダメなんだろう。大河が戻れば元に戻るだろうという甘い考えではダメだということだ。そもそも、元の状態を知らないし。


 ということで、ここはじっくり考えることにする。まずは、繁栄していた頃のこの地域の情報を集めよう。その状態がまずスタート地点だろう。まぁ、戻せたとしてだが。

 さっそく、女神ケリス&コリスに情報収集を依頼したのだが。


「分からないって、どゆこと? 前の担当神だろ?」

「そうなんだけど、引継ぎ情報には普通に砂漠だと書かれてるだけなんだよね。なんか、開発放棄地とかになってた」と女神コリス。


「開発放棄地? 開発しようとしてたってこと? 誰が?」

「それが、分からないのよ」

「前の神様に聞けばいいんじゃないの?」

「それがねぇ。前の神様がいないのよ」


 なんだか怪しい話になって来た。


「いないって、旅行にでも行ってるのか?」

「当たらずとも遠からず、どうも左遷されたらしい」

「左遷? 左遷って?」

「降格されて、どこかの星で謹慎してるみたい」それ、幽閉って言うんじゃ?


「なんだよそれ。何やらかしたんだ? しょうがないなぁ」神界でも、そんなことあるんだな。

「ほんとよね」コリスにまで言われてるし。


「千年前の火山の噴火から砂漠化したのは分かってるけど。そうなると、後は遺跡を発掘するしかないのかな? 何か文書が残ってれば、どんな国だったのかぐらい分かりそうだけど」

「そだね。じゃ、遺跡発掘隊を組織しよう」

「そういうの得意な神様いないかなぁ? 発掘の神様?」


ぽっ


「待ってました~っ!」メガネっ娘神様登場。


 待ってた? なんで?

 

「チェンジしていい?」

「ちょっと~っ。失礼しちゃう! やめてよねっ!」誰だこいつ?

「どちらさまで?」

「えっへんっ! 歴史を知るシリスちゃんとは私の事よっ」何だろう、このノリは?

「別に、語呂合わせしなくていいです」てか、自分で名前決めてるし。

「シリスちゃん! かわいいっ!」何故かコリスに受けてる。

「おお、久しぶり!」とケリス。


「ケリス、知り合い?」

「ああ、教育関係だからね。考古学といえば彼女だもの」


 言われて見れば発掘隊みたいな恰好してる。


「そうなの? 考古学の女神様? なんかミスマッチ感バリバリなんだけど?」


 そんな偉い女神様に見えなんだよなぁ。ケリスの「教育」も怪しくなって来た。


「なんだろう~っ? なんで私、信用ないんだろう~っ?」


 たぶん、ケリスの友達だから? っていうか、登場の仕方が似てるし。


「リュウジは、明るいおちゃめな子は好きじゃないのよ」とコリス。


 そういう誤解を招くようなことは……ん? もしかして、コリスって自分をおちゃめとか思ってる?


「あっ、なるほど。そうなんだぁ~?」

「うん、とりあえず一発殴らせろ」

「キャ~っ、野蛮人がいる~」

「神だけどな」

「野蛮神がいる~っ」

「それ、同音異義語なのか? あと、寒いギャグとか言わなくていいからな」


「わかったわよ。もう、プンプン」


 こいつ、絶対タブレット見てるだろ! ネタでやってるよな! ってことは、アリスの友達かよ。アリスも友達選ぼうよ。


「あ~、動画見て狙ってるんなら、それ全然うまくいってないから」

「えっ、そうなの? なんだ。じゃぁ、普通に話すね」

「それがいい。初めからそうしてくれ」


 やっぱ、あのタブレットは没収したほうがいいな。神界の女神様が可笑しくなってる。っていうか、何で受け狙いしてくるんだ? 俺のせい? そうなのか?


「で、なんだっけ?」と女神シリス。

「もう、忘れたよ。え~っと、あ、そうそう。二千年前のストーン砂漠の状態を知りたいんだよ」


「状態って?」

「今、ストーン遺跡を復興しようとしてるんだけど、そもそも昔の状態を知らない。それで調べてるんだ。」


「昔の状態が分かっても、そこへ戻る保証はないと思うけど」

「まぁな。全く同じに戻せるとは思ってない。ただ、基準にはなるだろ?」

「そうだね。そうすると情報源としたら当時の行政機関の記録かな。どこまで管理していたかによるけど。うまく残ってればいいね!」とシリス。


 神様の特別な能力とかで調べられないかな?


「そこだな。二千年前だから普通は無理だよなぁ」

「発掘調査員としては、ケリスとコリスも参加してくれるの?」

「うんいいよ。砂を掘る事くらい出来るはず」

「「えっ~?」」いや、当然でしょ?


「シリスは、地上界で何か出来るの?」

「もちろん出来るよ。現場で何もできない担当神じゃないのよ。発掘はお手の物よ」


 担当神って神界では無能扱いなのか? もしかして、初心者扱い?


「あ、そしたら、ラームドリンクと神化リングも渡しておこう」

「あっ。これね! 見てた! 細かい作業にはラーム、大仕事には神化リングでしょ?」

「おっ。優秀だな! ってか、この世界を見てたのか! 面白いのか?」


「面白いに決まってるでしょ! 今の神界で、ここを見てない神様なんていないよ。好き嫌いを別にしてもね!」


 まぁ、嫌いなら見ないと思うけど。


「ヤバい奴も見てるのか」

「もう、第二神になったからヤバくないでしょ?」とシリス。ホントに詳しいな。

「そうかな?」


「そうそう。おまけに神化リングとか造っちゃうし、ラームとか発見しちゃうし。第二神の中でも最強じゃない! どうなってんの?」


 は? 言われてみれば、確かにパワーは最強かも。そんなパワー使う事ないけどな。っていうか、俺って体力系なの?


「知らないよ。てか、シリスだって自分で発掘して大発見とかしたらいい」

「そうね! 頑張るよ!」とシリス。

「おう、期待してるよ」

「……」

「なに?」


「あれ? キスは?」変なしぐさしてると思ったら、それかよ!

「何言ってんの? 女神様にキスとかするわけないじゃん。じゃ、眷属にしていいんだな?」

「うん、よろしく」


 女神様をキスで眷属にしたことなんてないのに。変な噂まで広まってるのかも。ん? 広めてる奴がいる?

 ってことで、考古学の女神シリスが眷属になった。女神隊もいつの間にか十二人。あ、十二神だよ。次は十六神か?


 その後、この件について俺はこの三人に任せたままにしてしまった。新型ビデオ館だの、ビデオ作品が山のように出てきて大騒ぎしたり、魔法学園や文芸学園の建設やらで忙しかったのだ。


 経済的には、神魔動貨物船が普及しだして大陸間の交易も始まったために、またもや景気が急上昇中。絶賛発展中だ。もう、周り中で大騒ぎしてるわけだ。砂漠の復興どころじゃない。もう、誰もいない砂漠なんて放っとけよって言われそうで、優先順位がかなり低くなっていた。


 そんな年末の押し迫った頃。女神シリスから途中経過の報告が入ったのだった。

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