第78話 リュウジ魔王になる2
俺は、神界にいた。
ここには何度も来たことがある。二度も神界評議会に出席したからな!
さて、神界に来たはいいが、どこへ行ったらいいか分からない。思えば俺って、神界の事を全く知らない。使徒なのに、これって変だと思う。まぁ、今はそんなことを気にしている場合ではない。とりあえず、この神界の全体像を把握するのが先決か。
そういえば千里眼って神界でも使えるんだろうか? 試してみたら、使えなかった。使徒の能力だから制限されてるのか。
でも、辛うじて「検索」は動いていた。たぶん、最低限の機能なんだろう。セコい奴らだ。
「神界評議会」で検索したら一覧表が出て来た。
「これは、神界評議会に出席している神様一覧か?」
それぞれの名前の横に「評議会」と表示されている。
これ、今どこにいるかってことだろう。欠席している神様もいるようだから評議会のメンバー一覧らしい。
当然アリス達の所在は「地上界 神聖アリス教国」になっていた。こりゃ、顕現したらバレるわけだ。流石に、「女神湯」という表示にはならないようだけど。出てきたら、コピーライト貰うところだ。
しかし、いきなり何も知らずに、敵ばかりが集まった場所へ殴り込むのも、どうかと思う。作戦を考えてる
何処か高い所から眺められないか?
「高所」で検索すると、「
なんだこれ? 台なんだか原っぱなんだか分からない。まあいい、転移できるようなのでちょっと移動してみよう。
神界に来るときの転移は大変だが神界内の転移は、検索結果の場所を指定するだけで楽だった。
* * *
転移先の「高原台」という場所は神界特有の雲だらけの場所だった。
そこには石造りの祭壇のような大きくて立派な台座が置いてあった。台座には寝ている神様の像があるだけで何もない。なんだこれ、公園か? 仏様の涅槃は関係ないよな? 何かの記念碑か?
まぁ、いい。台座に登って回りを眺めてみたが何も見えない。雲で覆われたままだからだ。どっちを向いても雲しか見えない。
「お主、そこで黙って見てても何も見えぬぞ」好々爺っぽい爺さんが現れた。
「そうなんですか。神界全体を見たかったんですが」と言うと、いきなり周りの雲が消えて、神界が見えるようになった。
何これ? 希望を言ったからか? 音声認識なのか?
「うわっ。いきなり見えた。こんなんなってたんか、途方も無く広いな」
「お主、初めて見るのかの?」と爺さん神様。
「はい。初めてです」
「ま、初めてじゃ仕方ないのぉ。これは、ごく一部じゃ。スクロールしてみぃ」
「スクロール?」
「手で全体を動かすつもりで手を振るのじゃ」爺さんは身振りで教えてくれた。ああ、スワイプでいいのかな。全体を動かすつもりになって手を振ってみた。
「おおっ。凄い」
「ほう、うまいもんじゃ」
「もしかして、フリックも出来る?」
ひゅっと手を振ると神界の景色が高速でスクロールした。
「な、なんじゃ、それは!」爺さん神様、驚く。
「えっ? あのフリックしてみたんですけど」
「わ、わし、そんな操作方法知らんぞ!」何故か焦る爺さん神様。
「もしかして、ピンチとか出来たりして」俺は調子に乗って両手でピンチしてズームしてみた。出来る。スマホかよ。
「なんじゃ~これは。いつの間にこんなことになったんじゃ?」爺さん神様、驚愕。
「あれ? 知りませんでした?」
「ああ、わしが寝る前はスクロールだけじゃったな」
これ、俺のスマホを見た人がやったんじゃ?
「どんだけ寝てたんですか!」
「いや、ちょっと百年ほど昼寝しとったんじゃ」
事も無げに言う爺さん神様。ちょっと百年って何? さすが神界だな。てか、百年前にスクロールあったのかよ。あ、スクロールって、巻物ってことだから、そりゃ古くからあるか。ん? 昼寝?
「それ、昼終わってないですか? とてつもない回数、昼終わってますよ」
「何言っとる。神界に夜なぞないからな、いつでも昼寝じゃわい」と面白そうに言う爺さん神様。
「なるほど。じゃ、朝寝の楽しみがないんですね?」と俺が言うと、爺さん神様は妙な顔をした。
「それは、確かに残念じゃのぉ」残念なんだ。
「朝湯もないんですね?」調子に乗って聞いてみた。
「いや、湯そのものがないからのぉ」
「あ~、それで、みんな女神湯にくるんだ」そう言うことか。
「ほう、それは女神が入る風呂のことか?」
「ええ、露天風呂って言って、周りの景色を見ながら入る風呂です」
「ほう、それは気持ち良さそうじゃ」
「ええ、入ったあとはぐっすり寝られます」
女神様もぐっすりです。神界に夜がないから女神様ったらウチに来て楽しそうに寝るんだな。
「ほう、女神どもが楽しそうに寝るのか?」と爺さん神様。
なんで、俺の考えが聞こえちゃってるんだろう? アリスの系統なのか?
「はい。良く、朝方とか添い寝されます」
「ほ~、そりゃ珍しい事もあるもんじゃな。普通、女神はそういう遊びをしないもんじゃが」
「そうなんですか? うちの女神様が特別なのかな?」
「お主が生んだ女神か?」
「いや、俺、男なんで産めません」
「わっはははは。いや、久しぶりに神界で冗談を聞いたわい」
よく分からないが、爺さん神様に受けた。冗談じゃないんだけど。てか、神界って冗談言っちゃいけないのかな?
「そういう訳でもないが、最近言う者が減ったな」やっぱり、全部聞かれてる。
「それ、つまんなくないですか?」
「つまらんのぉ」
「え~っ、神様がつまらなかったら世界がつまらなくなっちゃいますよ」
「そうじゃの。お主、なかなかいい事言うではないか」
「はい、俺、面白くない世界は無駄だと思ってますんで」
「うむ。その通りだな。いくら続いてもつまらない世界は無駄じゃな」
「もちろん絶滅するのも嫌ですけど」
「うむ。絶滅はいかんな。もちろんじゃ」
「あ、でも、俺の世界がリセットされそうになってるんだった。こうしちゃいられない」
「何? お主の世界、神界リセットになりそうなのか?」爺さん神様、真剣な顔で聞いて来た。
「いえ、惑星リセットのほうです」
「なんじゃと? 惑星リセット? 今時そんな根性ある決定を下せる神がいるとは思えんが」と怪訝そうに言う爺さん神様。
「なんか、よく分からないんですけど、それを阻止しようとしたら使徒の能力を剥奪されて、嫁を人質にとられそうなので殴り込みに来たんです」
「お前、使徒なのか? いや、使徒のハズはないぞ。使徒はここには来れないからな。お前は神のハズじゃ」
「へ? そんなこと言われても。あ、今の俺は魔法ドリンクで魔王化してるんだった」
「うむ、確かに神力ではない力を感じるな。じゃが、その力の事ではない。どんな魔王の力があっても、ここには来れないのじゃよ」
「じゃぁ、誰ならこれるんですか?」
「担当神以上じゃな」
「あちゃ~っ。じゃ俺、これも神界ルール破ってるのか。やばいなぁ。また処罰されるのか」
「いやいや、ルール違反だとしても、来れるシステムが悪いのじゃ。お主は来たいと思っただけじゃろ?」
「はい」
「なら、それはシステムの問題じゃ」
この爺さん神様、神界批判しちゃってるけど大丈夫かな?
「けど、魔石で神力が何倍にも使える方法見つけたら、敵視されて処罰されそうなんです。おまけに神力削られました。単に法則見つけただけなのに」
「なに? それは、本当か? いや、そちの神力を削ったのも変だが、魔石で神力が何倍も使えるというのは本当か?」
「はい、どうも俺が発見したみたいなんで知らなくて当然なんですが。あ、使ってみますか? このリングを付ければ、神力の効果が何倍にもなります」
「どれ。どこに付けてもいいのじゃな?」
「薬指は勘弁してください」
「冗談じゃよ。ほほ~、おおおおおおおおお」
いきなり、高原台の回りが物凄い勢いでズームアウトして、この世界の果ての外周までもが見えて来た。
「な、なんじゃこりゃ~っ!」思わず俺は叫んでいた。
「はっはっは。これが、この言語圏の神界じゃな。これが全体像じゃ」
「言語圏の神界?」
「そうじゃ、霊界神界は言語ごとになっておる。霊界や神界に語学塾がある筈なかろう?」
「確かに」
てか、塾に通う神様って見てみたいけど。
「霊界に来た魂が、いきなりすべての言葉を喋れたりするわけなかろう? 霊界で能力は増えないのじゃからな。能力は地上界でこそ備わるものじゃ」
「そうなんですか? 死んだあと呪いをかける話とかおとぎ話であったりしますけど」思わず俺の常識で言ってしまった。
「そんな力があるなら生きてるうちに使える筈じゃ。ま、所詮は子供に言うことを聞かせるための戯言よ」
「それで、召喚されても言葉が通じたんだ」
今更だけど、やっと納得出来たよ。
「ん? お主、召喚者か?」
「はい、女神様に呼ばれました」
「ほぉ。お主、面白い奴じゃのぉ。なのに、なぜか今は神になっておる」爺さん神様、不思議そうに言う。
「魔王のハズなんですけど」
「わっはっは。暢気な魔王じゃのぉ。まぁ、いい。して、このリングはわしが使ってもいいのか?」
「はい。いろいろ教えて貰ったので、お持ちください」
「そうか、それは有り難い」
「あ、でもそれ使ってた女神様が神界評議会からダメ出しされて、今、俺の世界で謹慎してます。そのリングは問題みたいなんで評議会から処罰されるかも」
「なに? そうか。では神界評議会に行くとするかの」
「へ?」
なんか、ヤバそうな展開なんだけど?
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