第43話 そうだ!南国リゾートだ!
「そういえば、産休は皆どうするのじゃ?」談話室で話していたら、いきなり王様が言い出した。
「ええと、一応後宮として出産や保育用の施設は作る予定なんですけど、まだ未定です。最悪、この館で静かにしてようかと」
「ほう。ならば、うちの森林地帯の別荘を使ってもいいぞ。南のリゾート島もあるが、流石に何百キロも旅は出来んじゃろ」と王様。この世界の王族の別荘かぁ。ちょっと興味ある。特に南のリゾート島は面白そうだ。
「そうですね。疲れたりしたらダメですからね。あっ」
俺はちょっと思い出したことがあって、女神様に連絡してみた。
ー ねぇ、アリス。聞いてる?
ー はい、はーい。特効薬やったわね!
ー うん! 優秀な使徒のおかげだよ! これでいろいろ、いろいろ止まってたことが動き出す。
ー そうね。どうしても、優先順位下げちゃうことあるよね。で、何か聞きたいの?
ー あ、そうそう。神界からアリス達が来るときって、一瞬だよな? こっちから神界行くのもそうだけど。あれって、神界から王都へ行くのも一瞬だよな?
ー うん? そうよ。神界と地上界は距離があるわけじゃないからね。
ー やっぱり、そうだよな。そうすると、俺達が一回神界に行ってから、別のところに一瞬で転移できたりするのかな?
これは要するに転移だ。地上界で転移しようとしたんだけど、セシルの場合のような短距離はともかく長距離の転移は出来なかった。それで、いろいろ考えた結果がこの『神界経由の転移』だ。神界と地上界の距離がゼロなら出来るだろうと踏んだのだ。
ー あ~、結論から言うと、出来るわね。
ー 出来るんだ!
ー 使徒はもともと出来るわよ。
ー あ、そうか。
ー でも普通の人とか荷物も転移させたいってことよね?
ー うんそう。瞬間的に神界を経由させて貰えないかな?
ー うーん。どうかなぁ、許可取れるかなぁ? 瞬間的でも神界に連れて来ちゃうのよねぇ。
ー え~っと、リゾート島に女神ビーチとか女神湯とか作っちゃおうかなぁ、とか思ってるんだけど。
ー すぐに許可っ取って来るわね! 待ってて!
わ~お。
「どうかしたかの?」いきなり黙った俺を見て、王様が聞いてきた。談話室にいるみんなも聞いている。
「えっと。今、女神様と話したんですけど、もしかすると南の島に一瞬で転移出来るかも知れません」
「なんじゃと~っ」今までソファに持たれていた王様だが、がばっと起き上がった。
「し、ししょ~っ」ニーナも驚いている。
「リュウジまた~?」ミルルさん、またって何かな~?
「アリス様と話されたんですね」セシルは、そっちに食いつくんだ。
「流石リュウジ様ですわ。もうわたくし、驚くことはないと思ってましたのに」とセレーネ。
「私もです、姉さま」とアルテミス。
「流石じゃのぉ、リュウジ。わらわの期待を裏切らないのぉ」と楽しそうなリリー。お前は、いつも遊ぶ気満々だよな~。
ー 結論出たわよ!
早っ!
ー リゾート島の女神湯と女神ビーチの常時使用許可を条件に神界経由を許可するって!
ー マジか。ってか、そんなに来たかったのかよ。もっと早く言ってくれても良かったのに。
ー それは、神様にも面子ってものがあるのよ。
まぁ、地上界に顕現するのを問題視するくらいだからな。
ー そか。わかった。
ー えっ? ああ、リュウジ条件追加。あの『女神の姿見』も用意してね!
ー あ、はーい。それ、エリス様の希望ですよね~?
ー バレてるし。じゃ、よろしくね~。
「許可出ました」
「なんと!」と王様。
「あ、でも、女神湯と女神ビーチ作って、神様にフリーパス欲しいそうです」アリスの条件を満たすには、別荘所有者の王様の許可がいる。
「ええっ? 女神様が来るって?」とニーナが驚く。
「何人、いや、何神、いや何柱……?」とミルル。
「女神様と一緒なんて、夢のみたいです!」セシルだけちょっと違う世界に入ってるかも。
「なんですか、わたくし、ちょっとめまいが……」とセレーネ。
「姉さま、しっかり」アルテミスは、意外と余裕。
「女神様と遊ぶのじゃ」お前はマイペースだな。
「女神ビーチは島自体が王家の所有じゃから問題ないじゃろ。女神湯を作るのはどうかのぉ?」と俺を見る王様。
「それは、俺がボイラー持ってきます。湯船は神力で作れるので、水さえ豊富にあれば建屋を用意するくらいで出来るでしょう」
「婿殿が言うと簡単そうじゃのぉ。あの島は、水は豊富じゃから大丈夫じゃろう」そう言ってから、王様は何か考え深そうな顔をした。
「なにか?」
「うん? いや、本当に聖アリステリアス王国と言える日が来るとはなぁ」と王様。
「どういうことです?」
「『アリステリアス』とは、『アリス様の僕』って意味なのじゃよ」と王様。
「そうなんですか」なんだって~っ!
アリスって、俺が適当に決めた名前のハズなんだけど? 運命の神様がいたずらしてる? 流石に言えないんだけど、これ。ま、いっか。
「じゃ、とりあえず産休はリゾートで過ごせるように準備しましょう」
* * *
それから、俺と王様とで計画を練った。産休の嫁達も場合によっては新しい施設を使うかも知れないので、除菌など衛生的な設備にする必要がある。露天風呂は、うちのより大きくしよう。ビーチに隣接する綺麗なプールがあってもいいよな。砂浜の砂、一度殺菌しちゃおうか? さすがに、海の水を殺菌するのは無理だよな?
こうして、なんとか初夏の内に嫁達と世話係を別荘に送り届けた。あとは、アリスと約束した施設を順次建設していくだけだ。
別荘の島には、定住している住民もいるので食料は独自に調達出来るようだ。そりゃ、遠方の別荘地に大きな荷物を持っていけないからね。しかも島だし。まぁ、俺達は転移で行くので、いくらでも持てると言えば持てるのだが。
* * *
「青い空、白い雲。美しい嫁。まばゆい女神様! ああ、俺は幸せ者だな」南国のリゾート島、ルセ島に作ったプールからビーチを眺めつつ俺は言った。
「リュウジは何してるの?」アリスが、プールサイドに置いたテーブルでドリンクを飲みながら言った。
「アリス様、気にしないで。ああやって、考えたこと駄々洩れしながら露天風呂から景色を眺めるのがマイブームみたいです。温水プールだけど」一緒のテーブルにいるニーナが言う。
「大丈夫かしら?」セレーネが心配そうに言う。
「働き過ぎで、突然倒れるって言うわよね」ニーナがちょっとふざけて言う。
「まぁ。リュウジ様、いけませんわっ」セレーネは、そう言って俺のところへ。
「あ、セレーネ、行っちゃった」
「姉上は純じゃからのぉ」とリリー。
「そうですわね」アルテミスも同意。
「それにしても、この温水プールにはびっくりしました」セシルが言った。南国なので普通に水のプールもあるが、こっちは水着着用の女神湯だ。
「そうね。さすが異世界ししょ~。まだまだ、私たちの知らないもの知ってるよきっと」とニーナ。
「そだね~っ、神力フォンにはびっくりしたもん」とミルル。
「あれは、流石にビビったわ、私も」とニーナ。
「わたくしも。神託があったのかと思いました」とセシル。
「それは言いすぎでしょ」とニーナ。
「いいえ、だって見えない人と話すんですよ」
「あ、でも神界と繋がるから、あながち嘘でもないかも。電話で神託が出来るよ」とミルル。
「どうしましょう。教会の存在意義が!」セシルは本気で心配している。
「そこは大丈夫じゃない? 神託はしないって言ってたし」とニーナ。
「でも、確かに神の声のようだよね。誰もいないのに、声がするんだから」とミルル。
なるほど。いきなり高度な技術に接すると、こういう感想になるんだな。そう言えば、最初にテレビを見た人も、こういう反応だったらしい。
「作ってて最初に声が出たときは、自分で信じらんなかった」とミルル。
「ミルルでそれなら。みんなが驚いてもしょうがないわよね」とニーナ。
ちなみに完成した女神湯だが、「エリス様の姿見」と書かれたガラスの姿見を見てエリス様が固まっていた。
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