Code7「ルシファー」
漂流する中で思考を続けているうちに私の陶道に何かが張り付く感覚がする。
それがついた場所から何かが吸引されるような感覚が走り出す。
「あっ……あがっ……ぐっはっ……」
苦しみとも喘ぎ声とも聴こえる自分の声が肉の中で響く。
その時、私の脳裏に現れた「想い」。
そうだった、私はコトネと一緒にずっといたいんだという願い、想いが強く浮かび上がる。
走馬燈のように私の脳裏にコトネとの思い出が流れ出す。
「あぁっ……はっ……、もう……どうでもいい……、他のやつなんて……あっ……あ。全部殺してやる……全部壊してやる」
吸引するコードを逆流させる。
すると、周りの私が一同に喘ぐ。
誰の私よりこの私が1番強い想いを持っているんだから。
ボロボロの緋天使は、フラフラと立ち上がり再び大剣をフユに向ける。
クスクスと笑うフユは、大剣を高く振り上げ、緋天使に向け振り下ろしたその時だった。
肉壁が爆散した。
それに驚いていると、ユキがフユの顔面に向けて飛び出す。
フユは、2本の巨大な大剣で防御するが、ユキの拳は一瞬にして大剣を砕き、フユの顔面を殴り飛ばす。
ユキは、14倍ほどの巨体を奥の壁まで飛ばした。
「何故、どうやって?」
フユは、ユキに問う。
「私は、コトネを幸せにしなきゃいけない」
私は、首に下げたネックレスを手のひらに乗せる。
ネックレスは、チェーンだけのものに2つの指輪が吊るされている。
「あなたは、そんなたった1人の為に戦うというの? 母親である私に歯向かうというの? 理解できない!!」
ユキは、目を細めて言う。
「あなたなんて知らないわ」
グシャラボラスがユキの腕に現れる。
「ど、どうしてぇ? どうしてここで力が使えるのよ!!」
「簡単なことだよ。クローンってつまりはコピー。あなたの作った
「くっっっそぉぉおおおぉぉおおお!!!」
私が振りかぶった腕は、涙していたフユを無視して首をはねた。
「やっと、見つけた。あんたのことを殺す為にどれだけこの地下世界を彷徨ったことか」
「知らないよ。そんなこと。私は、今、地上に帰ってコトネに会えればそれでいい」
「そんなことさせる訳ないじゃない」
「じゃあ、死んで? それとも殺してあげるが合ってるかしら?」
ボロボロの緋天使は、私に憎しみの顔を向け飛びかかってくる。
私は、もちろん容赦も躊躇もなくメイスを振り下ろす。
「やめなさい!」
その声が横から飛ぶと、目の前から緋天使が消える。
空振ったメイスは、地面に突き刺さる。
「ちっ」
蒼い光が天井を突き破って消えていった。
突き破られた天井から擬似日光が地下空間を照らす。
私は再びフユの身体に振り向く。
近くに首を蹴り飛ばして上を向く。
「こんな息苦しい場所に篭ってるから老けるのがはえぇんだよ。クッッッソババァが」
そう言って、高く飛んだ。
医務室でウルは、仰向けで寝そべる。
衛生兵が部屋を後にしてミカが部屋に入ってきた。
するとウルは、拳を衛生器具が乗った台車に乗せ、振り上げ、そのまま振り下ろす。
衛生器具が飛散する。
「私は、アイツを殺せた」
ミカは、落ちたメスを手に取る。
「きっと無理だったわ」
その言葉にウルは、上体を立てる。
「なんで私を信じてくれないんだ?」
「信じてるからこそあなたさえも見殺しにはできなかった」
「それは信じてないのと同じじゃないのか?」
その間に沈黙が流れる。
「そうね。はっきり言ってウルの今回の出撃と戦闘に勝利は見出せなかった」
ウルは、俯く。
「だってそうでしょ? ウルってばいつも考えなしに感情的に戦って傷だらけで帰ってくる。彼女には、感情なんかじゃ勝てないのよ。それはきっとあなたも見たんじゃない? あの空間で自分の14倍もの相手を一撃で沈めるんですから彼女は、相当な感情を持っていて更に腕もあるのよ」
「分かったよ」
「作戦を立てて戦えば、きっと私たちにも勝利の女神が力を貸してくれるわ」
「そう……だな」
「そういえば彼女、愛する人がいるとか言ってたわよね?」
「コトネって言ってた」
「じゃあ、そいつを殺してやりましょう。そしたらきっと、私たちに勝利が近づくわ」
そう言って、ウルの肩にミカは手を乗せる。
扉を合言葉のようにノックすると、コトネが飛び出てくる。
私は、抱き止める。
「ただいま」
「おかえ……りって、服は?!」
「あぁ〜、燃えた」
「じゃあ、早く帰って来なさいよ」
そう言って、私を玄関で止めて奥に入っていく。
奥から「エイグルさん玄関には、絶対に行かないでください」と聴こえる。
しばらくすると、タオルと服を持ってコトネが戻ってくる。
私は風呂場に押し込まれると、コトネもその場で服を脱ぐ。
下着まで脱ぎ終えると、扉を閉めてシャワーを出すと、コトネは私を壁に押し付け、上目遣いで首に手を回す。
「嫌だよ? 私以外の人がユキのあられのない姿を見るなんて。この姿は、私だけに見せて」
コトネの手が私の後頭部をグッと引き、私たちは更に接近する。
唇と唇が触れ合う。
コトネのつま先が少し辛そうで触れ合うことしかできない。
とても煩わしい距離感だ。
私は、コトネの肩に手を置いてつま先立ちをやめさせて、湯船の端に座って両腕を広げる。
コトネは、私の上に座って再び両腕を首から回す。
私もコトネの脇下から腕を回して少し力をこめる。
今度こそ、2人は深く接吻をした。
しばらくして2人息を落ち着かせた頃、ネックレスにかけていた1対のリングを手に取り、コトネの左手を私の左手で握る。
「私は、あなたを一生、死んでも
そう言って、コトネの左薬指にリングを通した。
リングには、幸せの涙に耀かしい未来への光が反射していた。
私達は、しばらくシャワーで楽しんでからコーヒーを片手、談話室のソファに腰掛ける。
テレビを付けると、オオワシの兵士たちが奮闘している姿が映される。
コトネがチャンネルをコロコロと変える。
きっと戦争のニュースを変えたいのだろう。
しかし、私はその手を止めさせた。
それは、とある場所から異様な存在が姿を現していたからだ。
全身真っ白な全裸の女だ。
比喩ではない女はそれほどに白い。
私はその女の顔を見て思い出した。
「この女、私を連れ出した女だ」
「え?! それって……」
コトネは、両手で口を覆う。
「ソロ……」
女は、兵士をみつけると、話しかけているようだ。
しかしおかしい。
20mは離れているのに会話が全て拾われている。
「すみません。そこの兵隊さん」
「は、はい。どうされましたか?」
「ユキという女の子を知りませんか?」
その問いをするソロを兵士は、上から下、下から上と舐め回すように見る。
「聞いてます?」
「ユキ? 知らなってか、それよりあっちで少し休みませんか?」
ソロは少し考える。
「いいわ」
そう言って、2人はそのカメラから離れる。
すると、勝手にカメラが切り替わる。
まるでソロを追尾するようだ。
先にソロが兵士にわざとらしくぶつかり、壁と挟む。
兵士の武器を持つ手を解き、マスクを取り除き、直接目と目を合わせる。
すると、兵士は何か言って、ソロに抱きつく。
ソロは、兵士をグッと抱き締めると、捕食した。
そして、カメラに向き近づいてくる。
ちょうどカメラの真下に立つと、ソロは言った。
「すぐにみつけるから。待っててね」
そう言った瞬間、コトネはテレビの電源を切った。
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