第7話 新しい関係と更なるデート

 翌日の月曜日、僕たちはまた待ち合わせをして登校をしていた。


「はあ、今日からまた学校かー。ずっと昨日みたいに遊んでいたいよ」

「気持ちは分かるけど諦めなさい。……デートだったらいつでも行ってあげるから」

「本当!? じゃあさっそく次の休みにどうかな」

「良いけど何処行くの? この近辺には遊ぶ所なんてあまり無いわよね。イ○ンぐらいかしら」

「そのイ○ンに行くのはどうでしょう。冬服、選んでくれるんだよね」

「そういえばそんなこと言った気がするわね。じゃあ行きましょうか」


 週末にまた真希とのデートが決まった。

本当はもっと早く行きたいけど、僕たち平日は部活があるからなあ。

 終わるのが18時頃だからもうその時間は辺り一面真っ暗だもんね。

 そこからまた出掛けるのはあまり良くないかな。


 そういう訳で仕方ないけど次の土曜日か日曜日に行くとしよう。



 駐輪場について、今日も手を繋いで教室まで向かう。あの日以降、クラスメイト達は特段大騒ぎすることも無くなり、そういうものだと受け入れている。

 皆適応力が高いというか、これも前々から僕達が付き合っていると思い込んできたおかげなのか。


 ともあれ手を繋いでいてももう僕たちに対して驚きはないようだ。



 だから今日もいつも通り教室に入る。

 近くにいた友達に挨拶をしつつ、自分の席へと向かう。



「「「繋ぎ方変わってる!!!!!!」」」


 そうしたらまたクラス中が沸いた。

 なんでだよ。

 もう今更驚く事なんて無いよね。


 と思ったけど、言われて気が付いた。

 そう言えば昨日からただ手を握るんじゃなくて、恋人繋ぎにしているんだった。



「何々!? 2人に進展でもあったのか!」


 またクラスメイト達に囲まれる。

 物凄く既視感を覚えるな。

 今度はなんて言おう。


 なんとなく? とかで良いかな。



「実は私たち、昨日はじめてしたの」

「え?」


 真希が誤解を生みそうなとんでも発言をかましてきた。


「「「「「ええええぇぇえええええ!?!?!?!?!?!?」」」」」


 案の定クラスメイト達が揃って声を上げる。

 皆してそんなに大声を出したら先生に怒られるよ。


 って今はそうじゃなくて!


「あのう、真希さん?」

「何よ。私間違ったこと言ったかしら」

「嘘は、言ってないね。……主語が無いだけで」


 確かに僕たちは昨日初めてしたけどさ。

 キスだからね、したの。

 いやキスでも初めてするのは衝撃だったけど!


「なら良いじゃない。嘘でも間違いでも無ければ問題なし! ほら、席行くわよ」

「また誤解されるんじゃないの」

「今更誤解もなにも無いわよ」

「まあそうかもしれないけどさ」


 小声で尋ねると、真希は何でも無いように答える。


 確かにただでさえ今僕達は“付き合っている振り”をしているわけだけど。

そこにさらに誤解を加えなくても良いんじゃないかな。


 いやいつかはそういうこともしたいなー、なんていう願望が無いわけじゃ無いけど。

でもそれとこれとは別というか。


「誤解が嫌なら、誤解じゃ無くしてみる?」

「え……」


 真希は何を……?

 それってつまり……。


「ふふ、冗談よ。隼人のエッチ」

「真希から言ってきたんだよね!?」


 思わず大きな声が出てしまう。

 幸いにもクラスは先程の喧噪がまだ続いているみたいで、僕の声はかき消されていた。


 というかまだ騒いでいるんだ。

 適応力何処に行ったんですか。



 そうして今日も1日終わり、部活にて朝の噂が入ってさらにまた一悶着あったのは別のお話。



「今日は疲れたわ」

「僕も疲れたよ。なんで朝誤解を生む言い方なんてしたのさ」

「特に意味は無いわ。なんて言おうかなって考えて、咄嗟に出てきた言葉があれだっただけよ」

「そ、そっか」

「言ってしまったものは仕方ないんだから隼人も気にしないの。いいわね」

「わかったよ」



 周りからそう思われたりするのはもう仕方ないけど、それとは別にどうしても真希のことは意識してしまう。

 カップル証明に必要だからとキスしてきた人だからなあ。


 気の迷いか気分でも、そういう雰囲気になったらどうなるんだろう。



「どうしたの隼人。顔、赤いわよ」

「へ? いやあ別に気のせいだと思うよ」

「そう? 明日も学校なんだから今日は早く寝るのよ」

「うん」



 今はそこまで気にしないようにしよう。

 いつか真希と深い関係になりたいけれど、それは本当の恋人になれてからの話だ。




 そうして1週間があっという間に終わり、また次の日曜日となった。

 今日は待ちに待った真希との買い物デート。


 以前友達の誕生日プレゼントを一緒に選びに来たのとは違う、正真正銘のデートだ。

 大事なことなので2回言いました。



 11月に入り、世間は早くもクリスマスモードが漂い始めた今日この頃。

 僕たちは新しい冬服を買いにイ〇ンに行く。

 もちろんそれ以外にも買いたいものが出来たら買う予定。


 今は待ち合わせ場所の最寄り駅で真希を待っている。


 ちなみに予算あるのか? 

 今日のことを親に言ったら『ついに隼人がお洒落に目覚めた』なんて喜ばれて諭吉さん何枚か預かりました。

 つい先日も数着買ったばかりなのにいいのかな。

 あとでレシートとともにお返しします。


 あ、女の子と行くとは言ってないから僕に彼女(仮)がいることはバレていないはず。

 別にバレても問題はなさそうだけど今日はお祝いだ、とか言って赤飯は炊きそう。

 そして真希のことを根掘り葉掘り聞かれそうだ。


 やっぱり隠しておこう。



「お待たせ。今日は隼人の方が早いわね。来たの遅かったかしら」

「やあ真希。まだ5分前だから全然だよ。あ、今日もかわいいね」

「そういうこと流し気味に言わないでよ。……うれしいけど」

「ならいいじゃん」

「なんだか最近隼人に口説かれ始めているのかしら」

「付き合っているのに? まあそれはそれとして彼女が可愛いならそれは褒めろ、と教えられたので」

「誰からよ?」

「ネットの方々」


 彼女出来た、デート とかで色々検索したら取り敢えず容姿を褒めろと書いてあった。

 実際可愛いから言おうと思いました。


 真希にも僕のことを好きになってもらいたいし、本当の恋人っぽく振舞えるようにこれまでより頑張ろう。



「まったく何を調べているのかしらね。でもまあ嫌な気はしないからもっと褒めてくれてもいいんだけど?」

「え、じゃあ」


 その後今日着ている清楚な服装に、編み込んだ髪等気付いた分だけ褒めてみた。


「もういいわ。後でたくさん服着るからその時にね」

「うん、良いよ」



 電車ももう来る頃だし、そろそろホームへと向かうとしようか。


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