中卒・金欠・天涯孤独の三拍子により、文字通り「置いて枯れて」しまった青年の視点で紡がれるは、世知辛い社会の一幕。
技術革新が進んだ近未来の世界においても変わらぬ現代人の苦悩が元に描かれた薄暗い主人公の内面描写には、思わず共感してしまう部分もあるかもしれません。哀愁漂う純文学的な文体に、心揺さぶられました。
(以下、冒頭数話を読了時点の感想です。)
自動運転技術が搭載された自動車がひた走る、近未来の世界にて、中卒・金欠・天涯孤独の三拍子により鬱屈とした日々に囚われていた主人公──そんなある日、ひとつの小さな命との邂逅により、彼の運命は思わぬ方向へ……。
もはや旧時代の産物と成り果ててしまった自転車を相棒に、〇ber eats的な生業によってその日暮らしの生計を立てている青年だが、作中の登場人物から「お兄さん」と呼ばれていたことからも、年齢・性別はある程度推測できるが、その容姿や人間関係などについては謎に包まれたまま。今後の展開には非常に期待が持てる一方で、物語が進行していく上で必要な背景事情以外は一切想像できないのが、何処か寂しさを感じます。
さらに一点、口惜しいのが、文章の読み辛さは否めないと感じました。インデント機能の活用、及び句読点、台詞部分を強調する鍵括弧を増やすことにより、読者への配慮を意識してくださると一層物語に引き込まれやすくなると思います。
どれだけ技術が進歩したとしても変わらない、HSPぎみにも感じられる主人公の人間らしく繊細な感情描写、文体の文学的な美しさは目を見張るものがあり、応援したくなります。今後の展開が楽しみな作品です。これからも完結まで、愛読させて頂きたいと思います。