愛してるを君へ
そしてまた少し季節は過ぎた。
とたとたとたっ、てってってって。
こらっ、待って危ないよっ。
水飲み皿をひっくり返し、跳ねた水が掛かってさらに暴れまわる。
ああ、もうほんとやんちゃなんだから。ええ、次はかつお節欲しいの?ほんと忙しいねしろくろさんは。分かった分かったあげるから爪立てないで。服もうボロボロだよー。太腿も傷だらけなんだよー。でもちょっとだけだからね。食べ過ぎは良くないんだよ。あー慌てて食べないの!また戻しちゃうでしょー。
そんなしろくろさんを思い出して泣きそうになるほど、今は力無くか細い。とぼとぼ、とやっと水飲み場まで移動する。ちろちろと水を飲む姿にも少しも勢いは無かった。
ご飯は何にする?しろくろさんの好きなの何でも良いよ!
有るだけの種類のキャットフード並べる、しかし食欲は無い様だった。
膝の上に乗りたがった君を抱き上げて一緒にソファーに座った。毛並みが悪くなって、少し脂っぽくゴワついた体を優しく撫でながら眠った。
目を覚ます。
感覚的に夜十時頃だろうか。しろくろさんはまだ僕の膝の上で眠っていた。無意識に撫で続けていたのであろう僕の両手はしろくろさんを包むようにしていた。
んー。
力無くやっとの思いで君は起き上がろうとする。
無理しなくて良いよ。ご飯かな?おトイレかな?
君の前脚の付け根に手を入れようとした。
んー。
、、、ああ、待って、待って、、、待ってよ、待って。
君の瞳が曇っていた。何時間か前まで透き通っていたはずなのに、白く淀んでいた。
しろくろさん!大丈夫だよ!お兄ちゃんここに居るからね!しろくろさん!しろくろさん!
んー。んー。
ああ、待ってくれそんなっそんな事って。
しろくろさん!しろくろさん!
ああ、やだよお願いだよ!神様どうか、、、
しろくろさん!しろくろさん!
んー。んー、、、
なあに?お兄ちゃんずっとここに居るからね!だから大丈夫だよ!
んー、、、
お兄ちゃん大好きだからねしろくろさんの事が!
、、、んー、、、
本当に本当に大好き!そうだ猫缶だってなんだって好きなだけ食べて良いんだよ!かつお節だって好きなだけ、、、あっ後、嫌いなブラッシングだって無理にしたりしないよ、、、だから、ねぇしろくろさん、、、しろくろさん。
ああ嘘だ。嘘って言ってくれ。お願いします、嘘だって、、、。
ああ、本当に大好きだよ。
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