ファーゼストの悪魔が太っといアレを入れられて、色々とヌいちゃうようです。

 とある辺境の地に、その大悪魔は封印されていた。


 神代の時代に起きた神魔の争いの末、大悪魔は神々の手によって地の底に封印され、その存在が小さくなるまで、永劫の時を過ごす事を余儀なくされていたのだ。


 だが、大悪魔はある時、一人の人間と契約を成す事に成功する。

 悪魔は、その人間の繁栄に手を貸し、人間は悪魔に多くの負の念を捧げるように尽力するという契約だ。


 契約は、その人間の子孫にまで及び、何代もの世代を重ねた末、大悪魔はとうとう現世に分身を顕現させるまでに至ったのである。


 分身は、本体よりも力が小さいため、封印の外へと自由に出る事ができ、また、大悪魔の権能を利用して様々な世界へと行き来する事ができた。


 世界の壁を越える事は容易ではなかったが、不可能ではない。


 大悪魔の分身であるはしらちゃんは、今、夢にまで見た異世界の、とある都市の中を歩いていた。









 人、人、人。

 文字通り道は人で溢れ返っており、また、周りを見渡せば、わらわが所属する世界では考えられないほど大きな建物ばかり。


 進んだ文明を目の当たりし、目眩に似た感覚を覚える。


 わらわが、この世界に降り立つにあたり、一つの制約が課せられていた。

 それは、体の組成等がこの世界の人間のそれと全く同じ物になると言う物じゃ。

 なので、今のわらわは、ただの人間の六歳児程度の能力しかないし、物の感じ方も人のそれと全く同じである。


 なので、圧倒的な文明度の違いを感じれば、目眩もしようと言う物。


 当然ながら、魔力で強化を行う事も、魔術を行使する事もできず、危険に対しては無力と言わざるを得ない。

 じゃが、抜け道が無い訳でもなく、また、何事かがあったとしても、分身が消えた程度では、本体には痛痒も無いため、それほど心配する必要はないのじゃ。


 それにしても、生で感じる異世界は興味深い。

 道は人で溢れていると言うのに、色んな人達がいるのじゃ。


 ある者は早足で道を歩き、またある者は商売のために声を上げている。

 老若男女が、それぞれ思い思いに道を歩き、足を止めて話し込んだりしている姿も見られる。


 少し目をやれば、何処かの店の客引きらしき男が、年頃の女性の二人組に声をかけていた。


「……ちょっと今、時間あるかな?ここの二階にあるんだけど、寄ってかない?」


 これが噂のナンパというヤツか!?

 いや、男の格好は客引きのそれ。

 女性に声を掛けている事から推測するに、そこはホストクラブと言うヤツなのかもしれない。


「ね?暇なら一回どう?」


 男は慣れているのか、上手い事女性達の懐に入ったようで、にこやかに会話を交わしている。


「え~、でも私初めてだし、ちょっと怖いかな~」


「大丈夫、大丈夫!ウチのスタッフは皆ベテランだから、安心していいよ」


 女が冗談半分で言うと、男も笑いながら心配ない事を伝える。


「お菓子も飲み物も沢山あるし、全部無料だよ?」


 何!お菓子が無料じゃと!!


 そうじゃ、そう言えば何かで聞いた事がある。

 異世界のとある喫茶店では、何故か女性に限り、飲食が無料になるというのだ。

 きっと、この男はそんな喫茶店の客引きに違いない。

 でなければ、食べ物も飲み物も無料になるなど、商売が成り立つ訳が無いのだ。


「ほら、人を助けると思って、ね?」


「じゃぁ、試しに行ってみようかな~」


 男との会話に乗せられたのか、軽いノリで階段を上っていく女性達。


 おまわりさん、この人です!と言いたいのをぐっと堪えて、わらわは女性達の後を追った。


 お菓子に釣られた訳ではない。

 お金が無くてもお菓子が食べ放題という部分に惹かれた訳では、決してないのじゃ。

 そう、これは情報収集なのじゃ、

 もし、ここがわらわの思った通りの場所なら、人間の負の念が渦巻いているはず。

 この世界の人間からも負の念が回収できるかもしれないチャンスなのじゃ!


 わらわは、女性達の後に続いて、その建物の扉を潜った。


 建物の中は、明るく清潔であり、思っていたほど怪しい雰囲気は無い。

 思った以上の数の男女が部屋の中にはおり、それぞれが思い思いに寛ぎながら、お菓子を食べたり、飲み物を飲んだりしている。


 先に部屋に入った女性達は、既に受付を行っており、急いで後を追ったが、どのように受付をすればいいか分からず、スタッフの女性に声を掛ける事にする。


「どうすれば、お菓子が食べられるのじゃ?」


「えっ?えっと、お嬢ちゃんは、また大人になってからにしようね」


 なん、じゃと!?


 想定外である。

 だが、よくよく考えれば不思議な話ではない。

 もし、ここが店なら、わらわのような幼女がの対象になるのは、さすがにまずいのじゃろう。

 いや、中には「幼女が良い!」と言うような者もいるのじゃろうが、一般的にはアウトである。

 少なくとも、ここでは駄目のようじゃ。


 だがしかし、わらわに『諦める』という選択肢はない!

 永きを生きた、大悪魔としての話術を以て押し通るのじゃ!!


「大人って、どこからが大人なのじゃ?」


 必殺、屁理屈!!


 ふふふ、こちらが子供だと思って甘く見たな?

 それがお主の敗因よ。

 こちとら、永き時を歩んだ大悪魔じゃ、この程度をやり込めずして、何とする。


『大人』とは何か。


 二十歳を越えれば大人?

 お酒が飲めれば大人?

 儀式を行えば大人?

 結婚すれば大人?


 そうだとも言えるだろうし、そうでないとも言えるじゃろう。

 答えは年齢、地域、人種、考え方などによって千差万別。

 人の数だけ答えがあると言っても過言ではない。


 くっくっく、果たしてこの哲学的な問いに、お主は答えられるかな?


「十六歳からよ」


 な、に、!?

 さらっと切り返されたじゃと!?


 それも、あたかも当然の事かのように答えられたのじゃ。


 コヤツ、できる!!


 だが、このまま押し切られてしまえば、お菓子は……いや、この世界の情報は収集できない。


 まだ終わらん、まだ終わらせんぞぉぉぉ!!


「そんなの誰が決めたのじゃ?」


 この者の『大人』の基準が十六歳なだけであって、他の者に言わせれば違うはずじゃ!

 もしもここが、お店であるならば、客の年齢など関係ないはず。

 それなのに、たかがスタッフの一存で決めて良いはずがない!

 需要があるなら、それには応えるべきである!!


「法律でそう決まってるの」


 …………ちーん。


 おおふ、それなら無理じゃ。

 仕方がない、この世界の法律で決まっているなら、これ以上は言っても無駄であろう。

 お菓子が……いや、貴重な情報が得られる機会ではあったが、泣く泣く諦める事に………………するわけがなかろう!!


 メーデー、メーデー!

 こちら、はしらちゃん。

 本体よ、聞こえますか?


 ――――


 不測の事態により、能力の限定的な解除を申請します!


 ――――


 なに?めんどくさい?

 ええい、この引きこもり悪魔め、お菓子食べ放題じゃぞ!

 クッキーに、飴ちゃんに、チョコレートじゃぞ!!


 ――――


 うむ、そうじゃ、お菓子じゃ!

 お土産は任されよ、期待して待っているがよいぞ!!


 ――――


 了解なのじゃ!!


 そう言って通信を切り、物陰に隠れて少し待っていると、本体から『力』が送られてきた。

 そして、この世界とは異なることわりを用いて、体の組成を作り替え、子供の身体から大人の身体へと変貌を遂げる。


 これで大丈夫じゃ!

 どこからどう見ても大人の女性なのじゃ。


 そうして物陰から出て、スタッフの女性に再度声を掛ける。

 すると、今度は止められる事もなく受付を行う事ができた。

 色々と良く分からない事も聞かれたが、まだ身体に残っていた因果を司る大悪魔の権能を駆使して、スタッフの認識を誤魔化しながら受付を済ましていく。


「はしらさん、今日は全ケツで良いですか?」


 なぬ、全ケツとな!?

 一体、わらわのお尻に何をする気じゃ?

 言葉の響きから推測するに、お尻に何かを全部入れてしまうのじゃろうか。

 むむむ、なんという場所じゃ、お尻に全部じゃなんて…………


 だがしかし、ここまで来ておきながら、今更帰るだなんて言えるはずがない。

 本体にもお土産を持って帰ると言った手前、ここで引き下がる訳にはいかないのじゃ。


「……わらわ、初めてじゃから、は、半ケツでも良いか?」


 全部はさすがに怖いので、半分ぐらいで許してもらえないじゃろうか。


「ぶっ!…………半分ですね、かしこまりました」


 なんか笑われた、恥ずかしい……


 耳をすましてみると、他のスタッフも「半ケツって……」と小さく呟きながら、笑いを堪えているのが聞こえてくる。


 やはり、全ケツが一般的なのじゃろうか……

 いや、でも、いきなり全部は、色々と早すぎると思うのじゃ。

 うむ、やはり半ケツぐらいで勘弁してもらうのじゃ。


「それでは、はしらさん、準備が整いましたのでこちらへどうぞ」


 受付を済ました後、しばらく待っていると、別のスタッフが声を掛けてきた。

 見るからに玄人といった雰囲気を持つ、ベテランスタッフだ。


 そして、案内されるがままに奥の部屋に入って行くと、見るからに高価そうなリクライニングチェアが鎮座しているのが見えた。

 なんと、テレビ付きだ。


「飲み物は何にしますか?」


 椅子の座り心地を確かめていると、注文を聞かれる。

 ウェルカムドリンクだろうか。


「じゃ、じゃぁ、お任せするのじゃ」


 何があるのか分からないので、スタッフに任せる事にした。

 少し待っていると、紙コップに入った飲み物がやってきたので、それに口を付ける。


 味は分からない。


 何故なら、これから行われるであろう行為を想像し、気が気ではなかったからだ。


「それでは始めますね」


 一体これから何を始めるのじゃろうか。

 き、きっと、ナニをするのじゃな。

「半ケツで」とは言ったものの、大丈夫じゃろうか?

 いや、お菓子のためじゃ、我慢じゃ、我慢。


「まず足を上げますね」


 言うが早いか、スタッフは手元のボタンを操作して、わらわが座っている椅子を動かし、足が上になるように仕向ける。


 ま、待つのじゃ!まだ心の準備が!!


 だが、心の叫びは届く事はなく、わらわは腕をゴムバンドで縛り上げられ、無慈悲にも固定させられてしまう。


「少しヒヤッとするかもしれませんが、我慢して下さい」


 そう言うが早いか、スタッフは馴れた手付きで、患部に薬を塗っていく。

 これから行われる行為の前準備だ。


 本番はこれから。


 スタッフは薬を塗って、問題が無い事を確認すると、遂にソレを取り出した。

 あまりにも凶悪な形をしたそれに、思わず唾を飲み込む。


 ごくり。


「すごく……大きいです…………」


「専用の物だからね。太くて驚いた?」


 想像を絶する太さをした器具がそこにはあった。

 通常の物の数倍はあるであろう突起に、思わず目が釘付けになり、これから行われるであろう行為の壮絶さに、今更ながら気が付く。

 だが、もう遅い。


「貴女みたいな、若くて綺麗な子が来てくれて、嬉しいですね」


 スタッフは流れるような手付きで、それをわらわの身体に挿し込もうとする。


 いやいやいやいや、待て、待つのじゃ!

 そんなの無理じゃ、そんな大きなモノが入る訳無いじゃろ!!

 嫌じゃ、痛いのは嫌じゃ!!

 そんなのをれられたら絶対に、絶対に…………





 ………………痛く、ない、じゃと!?





 想像を超えた凶器に対し、訪れた痛みは驚く程小さかった。

 上手く挿れられずに、途中で抜いてしまったのかとも思ったが、局部を見ると、そこには極太のそれが挿入されていた。


「は、入っちゃった…………」


 半分だと言っておいたのにも関わらず、器具は根元まで入れられてしまい、更に、抜けてこないようにしっかりと固定までされている。

 良く見れば、器具からは血が流れ出ており、思わず気が遠くなってきた。


「初めてだった?……気分が悪くなったら言ってね?」


 スタッフは、優しく声を掛けてくるが、この行為を止めようとする様子は見られない。


「い、いつまで続くのじゃ?」


 この時間があとどれだけ続くのか分からず、心細くなってきたため、思わず問いかける。


「だいたい、五分くらいかな」


 五分か。

 それなら天井のシミでも数えていれば終わるのじゃ……


 そうして、自身に行われている行為から目を背け、時間が過ぎるのを待つ。


 痛みは無い。

 だが、あんな物が挿し込まれているにも関わらず、痛みが無い事が逆に恐ろしい。

 椅子に備え付けられているテレビの映像が、どこか遠くに感じられ、そのまま心を無にしていると声が掛けられた。


「それじゃぁ、あとは飲み物を飲んで、休憩していってね」


 そう言って、スタッフは行為の後処理を素早く終えると、にこやかにわらわを見送ってくれる。

 わらわは、まだ血のにじむ局部を押さえ、余韻のように残る倦怠感を感じながら、部屋を出た。


 お菓子の山と飲み放題の自販機を前にして、一人黄昏たそがれる。

 チョコレートの包みを一つ手に取り、封を開けて口に運んだ。


 甘い。

 そして、少しだけほろ苦い。


『大人になってしまった……』


 不意にそんな想いが心を横切った。

 お煎餅を口に入れ、そして、ジュースで全部を押し流すように飲み下す。


「えぇい、くよくよしていても始まらぬ!お菓子を食べまくるのじゃ!!」


 わらわは、永き時を生きた大悪魔じゃぞ、過ぎた事にいつまでも拘っていては、大悪魔の名が泣くという物じゃ!

 わらわの身体をもてあそんだ報いを受けるがよい!!


 そう心に決めるが早いか、わらわは、心のままにお菓子を貪り喰い、ジュースも浴びるがごとく飲み散らかす。

 散々好き勝手し、ポケットの中に幾つかのを忍ばせ、気が済んだ所で、ようやく帰る事にする。


 初めての異世界旅行は、酷い目には遭ったが、お腹一杯にお菓子を食べられた事と合わせて考えれば、良かった物だと言えよう。

 この世界のお金を稼ぐ手段が無い今、むしろ今後も利用するべきかもしれない。


 ぽっこりと膨らんだお腹をさすりながら、出口へと向かう。


 こうしてわらわの異世界旅行は、受付の女性に見送られながら幕を閉じるのであった。




















「献血の御協力、ありがとうございました」





 ……………………なぬ!?

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